血祭り

「血祭り」は, 血祭りに上げる, などと物騒な言い回しをする。多くは,例えば, 「昔中国で,出陣のさいいけにえを殺し,その地を以て軍神に祀ったことから」 を由来とし, 戦場に臨む際に,縁起のため,間諜または敵方の者などを殺すこと,また戦場で,最初に敵を討ち取ること」 といった意味を載せる(『広辞苑第5版』)。あるいは, 「(昔、中国で、出陣に際し、い…

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ちまた

「ちまた」は, 巷, 岐, 衢, と当てる。 「道 (ち) 股 (また) 」の意, らしい。どうやら, 道の分かれるところ(「八十の巷に立ちならし」), ↓ (物事の分かれ目(「生死の巷をさまよう」)) ↓ 町の中の道路,街路(「南北に大きなる一つの巷あり」), ↓ 人が大ぜい集まっているにぎやかな通り,町中 (まちなか)(「紅灯の巷」), ↓…

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みどり

「みどり」は, 緑, 翠, 碧, と当てる。 (みどり https://dictionary.goo.ne.jp/jn/212665/meaning/m0u/より) 「緑」(漢音リョク,呉音ロク)の字は, 「会意兼形声。右側の字(ロク・ハク)は竹や木の皮をはいで,皮が点々と散るさま。緑はそれを音符とし,糸を加えた字で,皮をはいだ青竹のようなみどり色に染め…

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みどりご

「みどりご」は, 嬰児, 緑児, と当てる。 三歳くらいまでの幼児(『広辞苑第5版』), 四五歳くらいまでの幼児にもいう(『岩波古語辞典』) の意とあるが, 生まれたばかりの子供, あかんぼう, ちのみご, とある方が近いのかもしれない(『大辞林』)。 「近世初期まではミドリコ。新芽のように若々しい児の意」 とある(『広辞苑第5版』)の…

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ちび

「ちび」は, 身体のちいさい, 意だが, 幼い, 意でも, 軽んずる, 意にも, 親しみをこめる, 意でも使う。 ちびっちょ, ちびっこ, ちび助, 等々ともいう。 禿び, と当てて, ちびたもの,すりへったもの, の意で, 多く他の語に付いて, ちび下駄, ちび鉛筆, 等々と用いられ…

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つぶら

「つぶら」は, 円ら, と当てる。 まるい, 意である。 つぶらな瞳, という言い方をする。そのさまを, つぶらか, とも言ったらしいが,今日あまり使わない。 『岩波古語辞典』には, 「ツブ(粒)と同根」 とあるが, 『大言海』は, 「水觸(みずぶれ)の略轉。楫(かじ)に觸れて圓(まろ)きこと。水の鳴る音より云ふか…

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やおら

「やお(を)ら」は, そろそろ, おもむろに, やわら, しずかに, といった意味で, やおら立ち上がる, とか, 御硯をやをら引き寄せて, 等々といった使い方をする。文化庁が発表した「国語に関する世論調査」で「彼はやおら立ち上がった」を,「ゆっくりと」と「急に,いきなり」のどちらの意味だと思うかを尋ねたところ次のような結果が出た, 【平成18年度調査…

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ずんぐりむっくり

「ずんぐりむっくり」は, ずんぐりして肉が盛り上がっているさま, の意(『広辞苑第5版』)だが,人の体格を言い表わすのに使う。「ずんぐりむっくり」は, 「ずんぐり」を強めていう語, ともある(『大辞林』)。「ずんぐり」が, 太くて短いさま, というか, 太って背の低い人, を意味するので,それに「むっくり」を加えて, 横巾の広い筋骨の逞し…

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ゆらぐ

「ゆらぐ」は, 揺らぐ, と当てる。「揺(搖)」(ヨウ)の字は, 「形声。䍃は『肉+缶(ほとぎ)』の会意文字で,肉をこねる器。ここでは音をあらわす。搖は,ゆらゆらと固定せず動くこと。游(ユウ ゆらゆら)と非常に近い。」 とある。 「ゆらぐ」は,上代, ゆらく, と清音だったらしい。 ゆれる, ぐらつく, という意味だが, 玉などが…

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ゆるがせ

「ゆるがせ」は, 忽せ, と当てる。 心をゆるめるさま, おろそかにするさま, いいかげんなこと, なおざり, といった意で, ゆるがせにしない, と否定形で使うことが多い。室町末期の『日葡辞典』に, 一字一句ユルカセにしない, と載る。 室町時代まで清音, で, イルカセの轉, とある(『広辞苑第5版』)。 …

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ゆるむ

「ゆるむ」は, 緩む, 弛む, と当てる。「緩」(漢音カン,呉音ガン)は, 「会意兼形声。『糸+音符爰(エン 間に仲介をはさむ,ゆとりをおく)』で,結び目の間にゆとりをあけること」 で,ゆるい,時間的空間的精神的にゆとりのある,意である。「弛」(シ,チ)の字は, 「会意兼形声。也は,平らに長く伸びたさそりを描いた象形文字。弛は『弓+音符也』で,ぴんと張った弓が…

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「峠」は,和製の会意文字である 「山+上+下」 「裃」が,同じく, 「衣+上+下」 の和製会意文字なのと同じである。和製漢字(https://kanji.jitenon.jp/cat/kokuji.html)は, 桁, 榊, 糀, 等々,結構ある。「峠」は, 「タムケ(手向け)の轉。通行者が道祖神に手向けをするからいう」 とある。『岩波古語…

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さか

「さか」は, 坂, 阪, と当てる。「坂」(阪)(バン,漢音ハン・ベン,呉音バン)の字は, 「会意兼形声。反はそりかえって弓型に傾斜する意を含む。坂は『土+反(そりかえる,傾斜する)』」 で,さか,あるいは,⌒型にそりかえった丘,傾斜した山道,の意である。 『大言海』は, 「級處(シナカ)の約と云ふ(然(しか),さ)」 とする。 (坂 h…

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高持百姓

渡邊忠司『近世社会と百姓成立―構造論的研究 』を読む。 「近世では一人前の男が一年に消費する米の量は一石(玄米で一五〇キロキグラム)から二石、また夫婦と子供・親の五人から六人の家族が自らを自力で維持していくことのできる標準的な規模は、裏作も可能な田畑を合わせて五反五畝程度、石高にして八石前後の所持であった。表作の米は年貢・諸役(貢租)として徴収され、裏作の麦を主食としながら。で…

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さかひ

「さかひ(い)」は, 境, 界, 堺, 等々と当てる。「境」(呉音キョウ,漢音ケイ)の字は, 「会意兼形声。竟(キョウ)は『音+人の形』の会意文字。また『章(音楽のひと区切れ)の略体+人』と考えてもよい。人が音楽の一楽章を歌い終って区切りを付けるさまを示し,『おわる』と訓じる。境は『土+音符竟』で,土地の区切り」 とあり,「国境」の意のさかいであり,「境内」の一定…

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正念場

「しょうねんば」は, 正念場, とともに, 性念場, とも当てる。 「歌舞伎・浄瑠璃で,主人公がその役の性根を発揮させる最も重要な場面。性念場,性根場」 とあり,転じて, ここぞという大事な場面,局面, の意となった,とある(『広辞苑第5版』)。しかし,たとえば, 「正念場は『性根場』とも書き、本来『正念』は仏教語で、悟りにいたるまでの基…

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剣が峰

「剣が峰(剣ヶ峰)」(けんがみね)は, 「噴火口の周縁、主として富士山山頂にいう」 とある(『広辞苑第5版』)。つまり, 「富士山の最高峰であり、日本の最高標高地点3,776 mのことである。八神峰(はっしんぽう)の1つでもある。」 ということになる(https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%85%AB%E7%A5%9E%E5%B3%B0)。…

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むぎ

「むぎ」は, 麦(麥), と当てる。和名抄(和名類聚抄)に, 「麥,牟岐,今按,大小麥之㵤總名也。大麥。布土無岐,小麥,古牟岐」 とあり,本草和名に, 「大麥,布止牟岐,小麥,古牟岐」 とあり,名義抄に, 「麥,ムギ,大麥,フトムギ,小麥,コムギ,マムギ」 とある。「麦(麥)」は, 「コムギ、オオムギ、ライムギ、エンバクなどの、外見の類似…

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いきどおる

「いきどおる」は, 憤る, と当てる。 激しく腹を立てる,憤慨する, の意が載る(『デジタル大辞泉』)が, 気持ちがすっきりしないで苦しむ, の意も載る(仝上)。しかし, 「いきどほる心の内を思ひ延べ」 という用例(万葉集)から見ると,単純な怒りとは違う。『広辞苑第5版』には,まず, 思いが胸につかえる,思い結ぼれて心が晴れない, …

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あせ

「あせ」は, 汗, と当てる。 「汗水たらす」「汗を流す」「血と汗の結晶」「額に汗する」 とか, 「手に汗握る」「冷や汗をかく」「汗顔の至り」 といった汗にまつわる言い回しは少なくない。 「汗」(漢音カン,呉音ガン)の字は, 「形声。干(カン)は,敵を突いたり,たてとして防いだりする棒で,桿(カン こん棒)の原字。汗は『水+音符干』で,かわいて…

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