2019年03月21日

おもねる


「おもねる」は,

阿る,

と当てる。「阿」(ア)の字は,

「会意兼形声。『阜(おか)+音符可(かぎ形に曲がる)』。かぎ型の台地。また,かぎ形に入り込んだ台地」

である(『漢字源』)。「阿諛」の「阿」である。どうやら本来は,

くま,

の意で,

おかのはざま,
山や川の曲がって入り組んだ所,

の意である。「くま」には,

隈,
阿,
曲,

が当てられている。そこから,

原則を曲げてつき従う,
おもねる,へつらう,迎合する,

の意に広がったようですある。

「おもねる」は,

「一説に,『おも』は面,『ねる』は練る,顔を左右に向ける意」

とあり(『広辞苑第5版』『岩波古語辞典』『日本語源広辞典』),

機嫌を取って相手の気に入るようにする,
へつらう,
追従する,

の意が載る。『大言海』は,

「おもへり(顔色)の轉にて,令色,阿容のいならむか」

とし,

他の意に靡きて媚ぶ,

とする。「おもへり」は,

面へり,

と当て,

「オモヒアリの約。心の中の情が面にあらわれる意」

とある(『岩波古語辞典』)。つまり,

顔つき,

の意である。『大言海』は,「おもへり」に,

顔色,

と当て,

「思ふの完了形のおもへりの名詞形(雄略記『神面不變(おもへらひ)』)。思ひ面にあらはるる意」

とし,やはり,

顔色,おももち,

とする。相手の顔色をうかがう意としても,「おもねる」とでは,行為主体と,その対象の表情と視点が違い過ぎる気がする。

大勢は,

面+練る,

だか,「ねる(練)」は,

「糸・布・金属・土・などを柔らかにし,粘り強さを与えるのが原義」

とあり(『岩波古語辞典』),

糸・布などを灰汁で煮て柔らかくする,
こねあわせてつくる,

意があるにしても,少し語呂合わせで,穿ち過ぎる気がする。他には,

おもなる(面馴)の轉(名語記),
オモナレアル(面馴在)の義(日本語原学=林甕臣),
オモヌメル(面滑)の義(名言通),
オモヒネル(思練)の義か(和句解),
オモ(懐)ニ・イル(入)の義(言元梯),

と,いずれも,

オモテ(面),

にこだわっている感じがある。そのながれでいうなら,

顔色をうかがう,

といういみで,

おもへり,

の転訛という説もありうるか,と結論は出ない。それにしても,

おもねる,
へつらう,
こびる,
とりいる,

類語が多い。この違いを,考えるのは,次項に譲る。

参考文献;
大野晋・佐竹 昭広・ 前田金五郎編『古語辞典 補訂版』(岩波書店)
大槻文彦『大言海』(冨山房)
前田富祺編『日本語源大辞典』 (小学館)
増井金典『日本語源広辞典』(ミネルヴァ書房)
藤堂明保他編『漢字源』(学習研究社)

ホームページ;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm
コトバの辞典;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/kotoba.htm#%E7%9B%AE%E6%AC%A1
スキル事典;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/skill.htm#%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%AB%E4%BA%8B%E5%85%B8
書評
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ラベル:おもねる 阿る
posted by Toshi at 04:52| Comment(0) | 言葉 | 更新情報をチェックする