2019年03月24日

ごまをする


「ごまをする」は,

他人におもねりへつらって,自分の利益を計る,

意だが,この語源は,

「昔商人が、お世辞をいいながら売り込むときに、もみ手をしていた。もみ手の様子を、左手をすり鉢、右手をすりこぎに見立ててごますりと称した。」

とする説(https://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q1114763916)もあるが,

「炒った胡麻をすり鉢ですると、内側に胡麻がくっつくことから、人にべたべたと擦り寄り、へつらう意味に用いられるようになった。おべっかを使う人のことは『胡麻すり』という。」

とする説(http://yain.jp/i/%E8%83%A1%E9%BA%BB%E3%82%92%E3%81%99%E3%82%8B)が,大勢のようだ。『大言海』も,

「擂鉢の内にて,炒れる胡麻の子(み)を擂り潰すに,鉢の四方につく,ミソスリに同じ」

とあり,

「あちらにも屬(つ)き,こちらにも屬(つ)き,彼人に諂ひ,此人に諂ふ者を呼ぶ,ウチマタガウヤク」

と載る。

「煎ったゴマをすり鉢 ですり潰すと,あちこちにゴマがくっつくことから,人にへつらう意味で用いられた言葉である。また,商人などの手を揉む仕草がゴマをする姿に似ていることから,その仕草を語源とする説もあるが,あまり有力とされていない。江戸末期の『皇都午睡(こうとごすい)』にもみられ,『追従するをおべっかといひしが,近世,胡麻を摺ると流行詞(はやりことば)に変名しけり』とある」

と,『語源由来辞典』(http://gogen-allguide.com/ko/gomawosuru.html)も,揉み手説には否定的である。

『江戸語大辞典』によると,天保頃からの流行語とあり,

おべっか,

の意と,

告げ口,密告,

の意が載る。まあ,密告とは,権力者への諂いなので,あり得る意味と思う。

「種々(さまざま)胡麻をすりければ」(天保十五年『魂胆夢輔譚』)

の「ごますり」は,

「ごまをするといふは言告口をきく通言」

と注記がある(『江戸語大辞典』)。

Suribachi.MortarPestle.jpg

(擂りごまにする為のすり鉢とすり粉木 https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B4%E3%83%9Eより)


では,「ごま(胡麻)」の語源は何か。『大言海』は,

「和名抄『胡麻,本出大宛,故地名之』,箋注和名抄『胡麻,載在本草経,恐非本出大宛,蓋胡之言,烏也,以其色黒,有是名』。さらば,ウゴマと云ふは,烏胡麻(ウゴマ)なるか,重言となれど,胡麻の語原は,知らず,又,忘れられたるなり。淡海(アフミ),雁音(かりがね)の声の類か」

と,諸説挙げ,分からない,とする。

『日本語源広辞典』は,

「中国語の『胡(えびす・西域)+麻』です。漢の張騫が西域から持ち帰った麻に似た植物」

とし,

「インド・エジプト原産で、漢の張騫(ちょうけん)が西域から持ち帰ったとされ、中国では西域の異民族を「胡」と呼び、「胡から伝わった麻の実に似た種子」 という意味から「胡麻」と名づけられた。」(『由来・語源辞典』)

「ごまは 中国を経由して日本に伝わった植物で,漢語の『胡麻』を音読みしたものが『ごま』である 。中国では西域の諸国を「胡」といい,『胡瓜(きゅうり)』『胡椒(こしょう)』『胡桃(くるみ)』と同じく,胡から持ち帰ったものには『胡』が冠される。ゴマの実は,麻の実に似ていることから,胡から持ち帰った麻に似た植物ということで『胡麻』と称されるようになった」(『語源由来辞典』)

等々,

胡麻→こま→ゴマ,

という中国由来ということのようである(和名抄,五万,訛云,宇古末(うごま))。『岩波古語辞典』は,「うごま」の項で載る。

「奈良時代には濁音で始まる和語は極めて少なかったので,gomaと発音しにくかったため,前に母音uをつけてugomaとしたものであろう」

とある。とすると,

胡麻→うごま→ごま,

の転訛なのかも知れない。

「胡という字は烏のことで,黒いところからつけられた名であるとの説もあるが,ゴマは黒ばかりではないから,面白くない。(中略)古名のウゴマは烏胡麻だというが,またゴマの音を訛ってウゴマという説もある。コミアサ(コミアサ)がゴマになったとの説もあるが良くない」

とし,張騫が西域から持ち帰った「胡の「麻に似た植物の名を胡の麻」とした,としている。

W_goma2081.jpg



参考文献;
大野晋・佐竹 昭広・ 前田金五郎編『古語辞典 補訂版』(岩波書店)
大槻文彦『大言海』(冨山房)
増井金典『日本語源広辞典』(ミネルヴァ書房)
前田富祺編『日本語源大辞典』 (小学館)
清水桂一『たべもの語源辞典』(東京堂出版)

ホームページ;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm
コトバの辞典;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/kotoba.htm#%E7%9B%AE%E6%AC%A1
スキル事典;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/skill.htm#%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%AB%E4%BA%8B%E5%85%B8
書評
http://ppnetwork.c.ooco.jp/critic3.htm#%E6%9B%B8%E8%A9%95

ラベル:ごまをする 胡麻
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ごまをする


「ごまをする」は,

他人におもねりへつらって,自分の利益を計る,

意だが,この語源は,

「昔商人が、お世辞をいいながら売り込むときに、もみ手をしていた。もみ手の様子を、左手をすり鉢、右手をすりこぎに見立ててごますりと称した。」

とする説(https://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q1114763916)もあるが,

「炒った胡麻をすり鉢ですると、内側に胡麻がくっつくことから、人にべたべたと擦り寄り、へつらう意味に用いられるようになった。おべっかを使う人のことは『胡麻すり』という。」

とする説(http://yain.jp/i/%E8%83%A1%E9%BA%BB%E3%82%92%E3%81%99%E3%82%8B)が,大勢のようだ。『大言海』も,

「擂鉢の内にて,炒れる胡麻の子(み)を擂り潰すに,鉢の四方につく,ミソスリに同じ」

とあり,

「あちらにも屬(つ)き,こちらにも屬(つ)き,彼人に諂ひ,此人に諂ふ者を呼ぶ,ウチマタガウヤク」

と載る。

「煎ったゴマをすり鉢 ですり潰すと,あちこちにゴマがくっつくことから,人にへつらう意味で用いられた言葉である。また,商人などの手を揉む仕草がゴマをする姿に似ていることから,その仕草を語源とする説もあるが,あまり有力とされていない。江戸末期の『皇都午睡(こうとごすい)』にもみられ,『追従するをおべっかといひしが,近世,胡麻を摺ると流行詞(はやりことば)に変名しけり』とある」

と,『語源由来辞典』(http://gogen-allguide.com/ko/gomawosuru.html)も,揉み手説には否定的である。

『江戸語大辞典』によると,天保頃からの流行語とあり,

おべっか,

の意と,

告げ口,密告,

の意が載る。まあ,密告とは,権力者への諂いなので,あり得る意味と思う。

「種々(さまざま)胡麻をすりければ」(天保十五年『魂胆夢輔譚』)

の「ごますり」は,

「ごまをするといふは言告口をきく通言」

と注記がある(『江戸語大辞典』)。

Suribachi.MortarPestle.jpg

(擂りごまにする為のすり鉢とすり粉木 https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B4%E3%83%9Eより)


では,「ごま(胡麻)」の語源は何か。『大言海』は,

「和名抄『胡麻,本出大宛,故地名之』,箋注和名抄『胡麻,載在本草経,恐非本出大宛,蓋胡之言,烏也,以其色黒,有是名』。さらば,ウゴマと云ふは,烏胡麻(ウゴマ)なるか,重言となれど,胡麻の語原は,知らず,又,忘れられたるなり。淡海(アフミ),雁音(かりがね)の声の類か」

と,諸説挙げ,分からない,とする。

『日本語源広辞典』は,

「中国語の『胡(えびす・西域)+麻』です。漢の張騫が西域から持ち帰った麻に似た植物」

とし,

「インド・エジプト原産で、漢の張騫(ちょうけん)が西域から持ち帰ったとされ、中国では西域の異民族を「胡」と呼び、「胡から伝わった麻の実に似た種子」 という意味から「胡麻」と名づけられた。」(『由来・語源辞典』)

「ごまは 中国を経由して日本に伝わった植物で,漢語の『胡麻』を音読みしたものが『ごま』である 。中国では西域の諸国を「胡」といい,『胡瓜(きゅうり)』『胡椒(こしょう)』『胡桃(くるみ)』と同じく,胡から持ち帰ったものには『胡』が冠される。ゴマの実は,麻の実に似ていることから,胡から持ち帰った麻に似た植物ということで『胡麻』と称されるようになった」(『語源由来辞典』)

等々,

胡麻→こま→ゴマ,

という中国由来ということのようである(和名抄,五万,訛云,宇古末(うごま))。『岩波古語辞典』は,「うごま」の項で載る。

「奈良時代には濁音で始まる和語は極めて少なかったので,gomaと発音しにくかったため,前に母音uをつけてugomaとしたものであろう」

とある。とすると,

胡麻→うごま→ごま,

の転訛なのかも知れない。

「胡という字は烏のことで,黒いところからつけられた名であるとの説もあるが,ゴマは黒ばかりではないから,面白くない。(中略)古名のウゴマは烏胡麻だというが,またゴマの音を訛ってウゴマという説もある。コミアサ(コミアサ)がゴマになったとの説もあるが良くない」

とし,張騫が西域から持ち帰った「胡の「麻に似た植物の名を胡の麻」とした,としている。

W_goma2081.jpg



参考文献;
大野晋・佐竹 昭広・ 前田金五郎編『古語辞典 補訂版』(岩波書店)
大槻文彦『大言海』(冨山房)
増井金典『日本語源広辞典』(ミネルヴァ書房)
前田富祺編『日本語源大辞典』 (小学館)
清水桂一『たべもの語源辞典』(東京堂出版)

ホームページ;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm
コトバの辞典;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/kotoba.htm#%E7%9B%AE%E6%AC%A1
スキル事典;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/skill.htm#%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%AB%E4%BA%8B%E5%85%B8
書評
http://ppnetwork.c.ooco.jp/critic3.htm#%E6%9B%B8%E8%A9%95

ラベル:ごまをする 胡麻
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