2019年03月29日

なでしこ


「なでしこ」は,

撫子,

と当てる。当て字である。当て字から解釈する,

撫で撫でして、いつくしみ、かわいがる子。それほどかわいい花,

というのは,ほぼ切り捨ててよいと,僕は思った。ところが,

ナデシコの由来

「花が小さくて色も愛すべきところから、愛児に擬して『撫でし子』となった」

という説が有力だという。

「花が小さく色も愛すべきところから,愛児に擬した『撫でし子』が有力である。万葉集の和歌には,撫でるようにしてかわいがる子(女性)と掛けて詠んだものがみられるが,それは現在でいう『カワラナデシコ(河原撫子)』を指した。古くは,夏から秋にかけて花をつけることにちなみ,『トコナツ(常夏)』とも言った」

とか(『語源由来辞典』http://gogen-allguide.com/na/nadeshiko.html),

「ナデ(撫でる)+シ+子」

とか(『日本語源広辞典』),正に絵に描いたように,この字を当てた者の罠にはまっている。『大言海』も,

「家経朝臣和歌序『鐘愛抽衆草,故撫子,艶色契千年,故曰常夏』,又此草の花,形,小さく,色愛すべきものゆゑ,愛児に擬し,ナデシコと云ふ」

と,珍しく何も語源の根拠を示せていない。

800px-カワラナデシコ_Dianthus_superbus_var._longicalycinus.JPG



因みに,

和撫子(やまとなでしこ),

というのは,

唐撫子(石竹),

に対していう(仝上),とある。

800px-DianthusChinensis11.jpg



セキチク(石竹.)は,原産は中国で,日本では平安時代には栽培されてきた,という。

どうしても,撫子という当て字に引きずられた解釈が多く,愛児に擬して,ナデシコが大勢で,それ以外に,

ナデサスリクサ(撫擦草),
ナテチクソウ(南天竺草),

もあるが,同類である。しかし当て字解釈よりは,

密集するところからナヅミンゲ(泥茂),

と,草の生態の方がました。漢字を当てると,その意味に引きずられるのはやむをえないとしても,

「『撫でし子』と語意が通じることから、しばしば子どもや女性にたとえられ、和歌などに多く参照される。古く『万葉集』から詠まれる。季の景物としては秋に取り扱う。『枕草子』では、『草の花はなでしこ、唐のはさらなり やまともめでたし』とあり、当時の貴族に愛玩されたことがうかがえる。また異名である常夏は『源氏物語』の巻名のひとつとなっており、前栽に色とりどりのトコナツを彩りよく植えていた様子が描かれている。」

と,すでに,撫子からの解釈から出られなくなっている。当否は別にしても,

「淡紅色の花の優雅さを眺めて,アテサク(貴咲く)花といったのが,子音[n]を添加してナデサクとなり,『サ』の母交(母韻交替)[ai]でナデシコ(撫子)になった。〈野辺のナデシコの散らまく惜しも雨な降りそね〉(万葉集)」(『日本語の語源』)

という解釈の方を採りたい。

「あて(貴)」は,

「『いやし』の対。高い血筋にふさわしい上品さ。必ずしもヤンゴトナシのような第一級の尊貴をさすものではない」

とある(『岩波古語辞典』)。

上品,

という意味である。

参考文献;
大野晋・佐竹 昭広・ 前田金五郎編『古語辞典 補訂版』(岩波書店)
大槻文彦『大言海』(冨山房)
田井信之『日本語の語源』(角川書店)
前田富祺編『日本語源大辞典』 (小学館)
増井金典『日本語源広辞典』(ミネルヴァ書房)

ホームページ;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm
コトバの辞典;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/kotoba.htm#%E7%9B%AE%E6%AC%A1
スキル事典;
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書評
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ラベル:撫子 なでしこ
posted by Toshi at 04:39| Comment(0) | 言葉 | 更新情報をチェックする