2019年04月03日

フグ


「フグ」は,

河豚,
鰒,
鮐,
魨,
鯸,
鯺,

等々と当てるらしい(https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%95%E3%82%B0)。古くは,

フク,

といったとあり(『広辞苑第5版』),

「平安時代の文献『本草和名』『倭名類聚秒』には、フク(布久)またはフクベ(布久閉)と記されていた記録があります。フクが濁って『フグ』と呼ばれるようになったのは江戸時代頃からです。ただし、関西では古来より『フク』という呼び方を用い、今でも下関や九州ではフクと呼ぶ方も少なくありません。」

ということらしい(https://www.fugu-sakai.com/magazine/learn/1426/)。

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(歌川国芳 猫の当て字 ふぐ https://mag.japaaan.com/archives/6005より)


「河豚」と表記することについては,中国由来であり,

「漢字が、『河』と書くのは中国で食用とされるメフグが河川など淡水域に生息する種であるためで、また、このメフグが豚のような鳴き声を発することから『豚』の文字があてられているとされる。」

とある(仝上)。「河」は黄河を指すが,ここでは大きな河の意か。

「河という字が使われているのは、中国では揚子江や黄河など、海よりも河に生息するふぐが親しまれていたからだそうです。」

とある(https://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q1410857504)。さらに,

中国語では,「フグ」は,

「『河豚』『河豚魚』『河魨』という表記を使っている」

とある(仝上)。日本で「フグ」に当てている,

鰒(漢音フク,呉音ブク),

は,

とこぶし,

とあり,

一説に,

あわび,

ともある(『字源』)。すくなくとも,「フグ」の意ではないが,漢音で「フク」と発音することから,古名「フク」に当てたのかもしれない。

鮐(イ,タイ),
魨(トン),
鯸,

は,「フグ」の意である。鯺(ショ)は昆虫を指すらしい。この辺りは,

「漢字は『河豚』と書くのが普通だが、魚へんの漢字『鰒』『鯸』『魨』も『ふぐ』と読む。『鰒』は本来アワビを指す漢字であるが、『フク』と音読みすることから、フグを表す漢字として使用されるようになった。室町時代の国語辞典『節用集(せつようしゅう)』に『鰒(ふぐ)』が始めて現れる。『鯸』は、つくりの『侯』が『膨れる』という意味を表すことから『大きく膨れる魚』=フグとなった。『河豚』は中国の揚子江や黄河の中流域までメフグが棲んでいたことから『河』、膨れた姿が豚に似ていることから『豚』が使用されるようになった。また、豚の異体字を『豘』と書くことから『河魨』の表記が生まれ、『魨』の一文字が独立するようになった。」

と詳しい(https://zatsuneta.com/archives/001931.html)。なお,「鮭」(ケイ,ケ)も,

フグ,

をさす(『山海経』などの古典ではフグに『鮭』の字を当てている),とか(仝上)。

当てた漢字はさておき,「フグ」の語源は,『大言海』は,

「怒れば,腹,脹るる故に云ふと」

と,脹れるを語源とする。その他,

口の形が「吹き付ける」のに適しているところから、「フキツケル→ フク→ フグ」という説
「腹を含ませる(フク)」から“フク“となり「フク→ フグ」という説
膨らんだフクが「瓢箪・フクベ」のようだから「フクベ→ フク→ フグ」という説
フクルルトト(脹るる魚)からフクトと呼ばれた。「フクト→ フク→ フグ」という説
韓国語で「ポク」はフグのこと。そこから「ポク→ フク→ フグ」という説

等々(http://allfishgyo.com/595.html),さらに,

シブク(渋)の義(和句解),
フド(斑魚)の義(言元梯),
ブス(毒)の転(和語私臆鈔),

等々もある(『日本語源大辞典』)。

「膨らむものを意味するものの多くは『ふく』が使われているため、ふぐも『ふく』と呼ばれたとする」

説からする(https://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q1410857504)と,

袋(ふくろ),
脹脛(ふくらはぎ),
ふくよか,
膨れる(ふくれる),
ふくべ(瓢箪)
脹る,

等々の諸説は「ふくらむ」の「ふく」に含まれる。どうやら,

「平安時代には『布久(ふく)』『布久閉(ふくべ)』と呼ばれていた。江戸時代中頃から,関東で『フグ』と呼ぶようになり全国へ広がったが,現在でも下関や中国地方の一部では『ふく』と呼ばれている。『ふく』の語源は,海底で砂を吹き出てくるゴカイ類を食べる性質があるため,『吹く』と呼ぶ説や,『袋(ふくろ)』『脹脛(ふくらはぎ)』『ふくれる(膨れる)』など膨らむものを意味するものの多くに『ふく』が使われており,フグも膨らむのでこの語幹からとする説がある。『瓢箪』を『瓠瓢(ふくべ)』と呼んだことから,形が似ているため『ふぐ』を『ふくべ』と呼び,『ふく』になったとする説もあるが,『瓠瓢』は膨らむものと同じ由来になるので,この説は違うとみてよいだろう。」

と整理(http://gogen-allguide.com/hu/fugu.html)してみると,「ふくらむ」の「ふく」に傾く。

「フグは,『吹く』で,膨れる,フクベと同源です」

とある(『日本語源広辞典』)のをみると,「吹く」と「膨らむ」が重なるように見える。しかし,『岩波古語辞典』には,「膨る」は,

フクダムと同根,

とある。「フクダム」は,

毛羽立たせる,
毛がそそけだって膨らんだようになる,

ことである。「吹く」は,あくまで,

口をすぼめて息を吐く,

意で,膨らむのは逆に吸い込むで,別のことである。やはり,

膨らむの「ふく」

でいいのではあるまいか。

「空気をのみこんてだ体をふくらすので,フクルルトト(脹るる魚)といったのが,フクト・フグトに転音した。…さらに,語尾を落してフク(布久。和名抄)・フグ(河豚)になった」

とある(『日本語の語源』)のは,時間経緯が多少怪しいが,「ふくらむ」説の傍証となる。

参考文献;
大野晋・佐竹 昭広・ 前田金五郎編『古語辞典 補訂版』(岩波書店)
大槻文彦『大言海』(冨山房)
増井金典『日本語源広辞典』(ミネルヴァ書房)
前田富祺編『日本語源大辞典』 (小学館)
田井信之『日本語の語源』(角川書店)
簡野道明『字源』(角川書店)
藤堂明保他編『漢字源』(学習研究社)

ホームページ;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm
コトバの辞典;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/kotoba.htm#%E7%9B%AE%E6%AC%A1
スキル事典;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/skill.htm#%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%AB%E4%BA%8B%E5%85%B8
書評
http://ppnetwork.c.ooco.jp/critic3.htm#%E6%9B%B8%E8%A9%95

ラベル:フグ 河豚
posted by Toshi at 04:28| Comment(0) | 言葉 | 更新情報をチェックする