2019年04月14日

そしる


「そしる」は,

謗る,
誹る,
譏る,
毀る,

等々と当てる。「謗」(ボウ,呉音・漢音ホウ)の字は,

「会意兼形声。『言+音符旁(ボウ 両脇,脇に広げる)』」

誹(ヒ)の字は,

「会意兼形声。非(ヒ)は,鳥の羽が左右反対側にわかれるさまを描いた象形文字。誹は『言+音符非』で,ことばを操って二つの仲をさくこと。また,人の非(筋違いを言い立てること)」

「譏」(漢音キ,呉音ケ)の字は,

「会意兼形声。『言+音符幾(近くに迫る)』で,相手に鋭く迫って問いただすこと」

「毀」(キ)の字は,

「会意兼形声。『土+音符毀の土の部分を米に変えた字の略体』で,たたきつぶす,また,穴をあけてこわす動作を示す」

とある(『漢字源』)。和語では「そしる」ですんでしまうが,漢字には微妙なニュアンスがある。

「誹」は,人の非をさしてそしるなり。非に通用す。漢書の腹誹の註に『口不言,心非之也』とあり,
「非」は,誹に同じ,
「謗」は,陰口を言い,人をそしるなり。誹謗と連用す。誹謗之木は湿性らば,書きしるして諌むる爲,宮門にたてたる柱なり。人のことを悪しくつげあげたる書を謗書といふ。戦国策「文侯示之謗一筺」,
「毀」は,誉の反。人を毀ちやぶる如く,ひどくそしるなり,
「譏」は,先方のおちどをとがめそしるなり,詩譜序「刺過譏失,所以匡救其惡」,

と,使い分ける(『字源』)。『日本語源広辞典』は,

誹は,人の非を指摘して,ソシル
謗は,陰口を言ってソシル,
譏は,他人の欠点を細かく言いたててソシル,

と区別している。

和語「そしる」は,そんなニュアンスの翳はないが,『大言海』は,

背後言(そしりごと)の略転,褒むの反,

とし,『日本語源広辞典』も,

背後言(そしりごと)を約した動詞がそしる,

とする。しかし,背後言を,

そしりごと,

と訓ませたのは,すでに「そしる」という言葉があったからではないのか。これは,と自己撞着に陥っているように見える。

「そしりごと」という訓以外には,

ソトサル(外去)の義(名言通),
ソシは祖師か,ルハアヤマルの意か(和句解),
ソシイル(外誣)の義(柴門和語類集),
ソシユル(其誣)の義(言元梯),
ソグ(削)と関係のある語。ソはソヨナフ(害)のソに通ずる(国語の語根とその分類=大島正健),

等々ある(『日本語源大辞典』)が,何れも語呂合わせに思える。

結局,「そしる」の語源はっきりしないが,素人の臆説ながら,

そしり,

の「そ」は,「背」ではあるまいか。「せ(背)」は,古名,

ソ,

である。しかし,この先を続けると,語呂合わせの轍のに嵌りそうである。

参考文献;
大槻文彦『大言海』(冨山房)
増井金典『日本語源広辞典』(ミネルヴァ書房)
前田富祺編『日本語源大辞典』 (小学館)
藤堂明保他編『漢字源』(学習研究社)
簡野道明『字源』(角川書店)

ホームページ;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm
コトバの辞典;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/kotoba.htm#%E7%9B%AE%E6%AC%A1
スキル事典;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/skill.htm#%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%AB%E4%BA%8B%E5%85%B8
書評
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posted by Toshi at 03:57| Comment(0) | 言葉 | 更新情報をチェックする