2019年04月27日

つまびらか


「つまびらか」は,

詳らか,
審らか,

と当てる。もともと清音で,

つまひらか,

だったらしい。

つばひらかの転,

ともある(大辞林)。

「つばひらか」の音変化。古くは「つまひらか」

ともある(デジタル大辞泉)。

つまひらか→つばひらか→つまびらか,

ということか。

「ツバヒラカの轉。鎌倉時代にはツマヒラカと清音」

とある(岩波古語辞典)ので,

つばひらか→つまひらか→つまびらか,

なのかもしれない。「つばひらか(審らか・審らか)」は,

平安時代,漢文訓読に用いられた語,

とある(仝上)ので,一般化して,

つばひらか(平安時代)→つまひらか(鎌倉時代)→つまびらか,

と,転訛したとみていいようだ。

「詳」(漢音ショウ,呉音ゾウ)の字は,

「会意兼形声。羊は,欠けめなく姿の整ったひつじ。詳は『言+音符羊』で,欠けめなく行き届いて論じることをあらわす」

とある(漢字源)。「審」(シン)の字は,

「会意。番(ハン)は,穀物の種をたにばらまく姿で,播(ハ)の原字。審は『宀(やね)+番』で,家の中に散らばった細かい米粒を,念入りに調べるさま」

とある(仝上)。

「つまびらかに」は,

委曲(ツバラニ)に通ず,

とある(大言海)。「つばらに」は,

詳,
委曲,

と当て,

つまびらかにと同じ,

という(大言海)。『岩波古語辞典』は,「つばら(委曲)」は,

ツバヒラカと同根,

とし,

つばらか(委曲か),
つばらつばらに,

という言い回しがあった,とする。

つばら,
つばひらか,

の,「つば」はどこから来たのか。『日本語源広辞典』は,

「ツバラ(詳・委曲)+ヒラク(開く)」

と,

詳しく開いていく,

意とする。「つばら(委曲・詳ら)」は,

ツはヒトツフタツ(一箇一箇)のツ,ハラはハラハラ(散々)のハラの意,

とする(大言海)。「つばらかに」は,万葉集にもある古い言葉で,

つばらに,
つぶさに,
つぶつぶに,

と同義で,「つばらつばらに」は,

ツバラツバラは,つぶつぶ(委曲)の転音に,ラの接尾語を添えたるもの。重ねて意を強くする,

とある。つまり,「つばら」の「つば」は,

粒,

とする(大言海)。「つば」を,

ツブラ,

とする(日本語源=賀茂百樹)のも,「つぶら」は,「粒」なので同趣になる。

ツバは先鋭の意のムツマの転(日本古語大辞典=松岡静雄),

とみると,「つばらかに」は,

つまびらか,

と重なってくる。現に,「つばら」を,

ツマビラカの略,

と見る説もある(冠辞考・万葉考)。だから,「つまびらか」は,

ツバヒラケシのバがマに変化したツマヒラカニが元になった語。ツマは詳しくの意で,ヒラは開くの意(語源辞典・形容詞篇=吉田金彦),

とする説もある。「ツバヒラケシ」は「ツバヒラカ」の形容詞形なので,「つまびらか」と「つばらか」とは重なってくることになる。「つばら」「つばらか」は古い言葉なので,

ツバラカの転,

とする説(国語の語根とその分類=大島正健)もあり,

つばら(つばらか)→つばひらか(平安時代)→つまひらか(鎌倉時代)→つまびらか,

と,もともとあった「つばら」が出発点とみてみたが,どうであろか。

「ひら」は,

開く,

とする(語源辞典・形容詞篇=吉田金彦,日本語源広辞典,和訓栞)のに従ってみる。

参考文献;
大野晋・佐竹 昭広・ 前田金五郎編『古語辞典 補訂版』(岩波書店)
大槻文彦『大言海』(冨山房)
前田富祺編『日本語源大辞典』 (小学館)
増井金典『日本語源広辞典』(ミネルヴァ書房)
藤堂明保他編『漢字源』(学習研究社)


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posted by Toshi at 03:48| Comment(0) | 言葉 | 更新情報をチェックする