2019年04月28日

かまびすしい


「かまびすしい」は,

喧しい,
囂しい,

と当てる。

やかましい,
さわがしい,

意である。「喧」(漢音ケン,呉音コン)の字は,

「形声。『口+音符宣(セン・ケン)』。口々にしやべる意。歡(=歓。口々に喜ぶ)と縁が深い」

とある(漢字源)。「囂」(ゴウ,キョウ)の字は,

「会意。『口四つ+頁(あたま)』

とある(仝上)。いずれも,がやがやとさわがしい意である。

「かまびすしい」の,

「カマは,カマシ(囂)・ヤカマシのカマ同じ。古くは,シク活用。中世以降ク活用」

とあり(岩波古語辞典),

かまみすし,

とも言うとある(仝上)。「かまし」は,

囂し,

と当て,「やかましい」の意で,

「カマはカマビスシ・ヤカマシのカマと同じ」

として,

「『あま,かま』という慣用句の存在からも,古くはク活用であった可能性が高い」

とある(仝上)。「ク活用」とは,語尾が

く(未然形)く(連用形)し(終止形)き(連体形)けれ(已然形)

と変化する。因みに,シク活用は,

しく(未然形)しく(連用形)し(終止形) しき(終止形)しけれ(已然形)

と変化する。

どうやら,

かまびすしい,

やかましい,

かしましい,
も,

すべて,

かま(囂)し,

に端を発している気配である。「かま(囂)し」は,

「カマは,騒がしき音なるべし,カヤカヤ(ガヤガヤ)と通ず(名義抄『硍,カマ,カマナリ(字鏡ニ,硍ハ石聲,雷聲,鐘聲なりとあり)』)。カマシカマシと重ねて,カマカマシとなり,略して,カシカマシとなり(わたかまる,わたまる),又略して,カシマシとなる。カマビスシとも云ふは,カマビスカシの略(名義抄『囂,ヒスカシ』),ヤカマシと云ふは,彌(いや)カマシの略なり」

と,その転訛を説明している(大言海)。「かまびすし」は,

カマシ→カマビスカシ→カマビスシ,

という転訛した,ということになる。

カマシカマシ→カマカマシ→カシカマシ,

の転訛はすっと落ちるが,

カマシ→カマビスカシ,

は,少しスッキリしない。しかし,「かまし」の「かま」は,

擬音,

から来ているということを前提にして,

「カマシ(騒がしい音)+ビシ(きしむ音)+シ」

とする(日本語源広辞典)説も成り立つ。確かに,これだと,

カマシ→カマシ+ビシ→カマビスカシ,

と,不連続がつながる。しかし「ビシ」と人の声以外がはさまるのは,如何であろうか。

「カマシ」からの変化の流れが見えないからだろうか,

釜の中で煮えくりかえるように人が集まり騒ぐさまをいうところから,,カマは釜の義,ビはブリの約,スは集まるの義。またカミは獣類が食を争ってかみあうのにたとえ,カマはカミアの約(国語本義),
ガタビツシの義(言元梯),

等々というのはどうだろ。やはり「かまし」を中心に,

かまし,
やかまし,
かしまし,

というの言葉の周囲に,

かまびすし,

もあるとみていいのではないか。「やかましい」「かしましい」は,別項に改める。

参考文献;
大野晋・佐竹 昭広・ 前田金五郎編『古語辞典 補訂版』(岩波書店)
大槻文彦『大言海』(冨山房)
増井金典『日本語源広辞典』(ミネルヴァ書房)
前田富祺編『日本語源大辞典』 (小学館)
藤堂明保他編『漢字源』(学習研究社)

ホームページ;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm
コトバの辞典;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/kotoba.htm#%E7%9B%AE%E6%AC%A1
スキル事典;
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書評
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posted by Toshi at 04:03| Comment(0) | 言葉 | 更新情報をチェックする