2019年06月05日

あがめる


「あがめる」は,

崇める,

と当てる。文語表記では,

崇む,

である。「崇」(スウ,漢音シュウ,呉音ズウ)の字は,

「形声。『山+音符宗』で,↑型に高いこと,転じて↑型に貫く意を派生した」

とある(漢字源)が,よく意味が分からない。意味は,髙い意で,そこから,気高い,たっとぶ,という意を持つのだが,別に,

「会意兼形声文字です(山+宗)。『山』の象形と『屋根・家屋の象形と神にいけにえを捧げる台の象形』(『先祖の霊を祭っておく建物(おたまや)、祖先、一族の長』の意味)から、山の中のかしらを意味し、そこから、『高い山』を意味する『崇』という漢字が成り立ちました」

ともある(https://okjiten.jp/kanji1950.html)し,

「形声。音符は宗。宗は諸氏の本宗・本家であるから、たっとぶ、大きいの意味がある。崇は山が高いの意味からすべて“たかい” の意味となり、その意味を人の上に移して、“たっとぶ、あがめる”の意味となる」

ともある(白川静『常用字解』)。「宗」(シュウ,漢音ソウ,呉音ソ)は,

「会意。『宀(屋根)+示(祭壇)』で,祭壇を設けたみたまやを示す。転じて,一族の集団を意味する」

とある。「あがめる」意が,出てくるのは,当然かもしれない。

和語「あがめる」は,

尊いものとして扱う,

意から,轉じて,

寵愛する,

意も持つ(広辞苑)とするが,岩波古語辞典は,

「アガはアガリ(上)のアガと同根。相手を自分と違う,一段と高い所にあるものとする気持ちで尊ぶ意」

とし,

尊敬して大切にする,

意とする。大言海は,「あがむ」の項で,

「上(あが)を活用せしむ(際むる,淡むる)」

とする。しかし「上がる」の「上」を「あが」を活用させた,というのは如何であろうか。

上ガ+むの(下一段化)

とする(日本語源広辞典)のも同趣だと思うが,まだしも,

アゲ(上)の活用語(言元梯・日本語源=賀茂百樹),

というほうが自然ではあるまいか。

あが(上)る,

は,あるいは,

あげ(上)る,

は,「あが(上)る」は,

「段階や次元が高い方へ移る」

と,おのずとといった含意であるが,「あげ(上)る」は,

「違いから手を加えて,物の位置や状態や次元を髙くする」

と,能動的に高める意で,「あがめる」の意味からすれば,

上げ,

の活用の方が妥当かもしれない。

アゲオガム(上拝)の約(和句解・両京俚言考),
アゲミル(上見)の義(名言通),

いずれも,「上げ」とつながる。しかし,

かみ(上)(http://ppnetwork.seesaa.net/article/463581144.html)で触れたように,日本語の語源は,

「『カミ(上)のミは甲類,カミ(神)のミは乙類だから,発音も意味も違っていた』などという点については,筆者の見解によれば,神・高貴者の前で(腰を)ヲリカガム(折り屈む)は,リカ[r(ik)a]の縮約でヲラガム・ヲロガム(拝む)・ヲガム(拝む)・オガム・アガム(崇む)・アガメル(崇める)になった。礼拝の対象であるヲガムカタ(拝む方)は,その省略形のヲガム・ヲガミが語頭を落としてガミ・カミ(神)になったと推定される。語頭に立つ時有声音『ガ』が無声音『カ』に変ることは常のことである。
 あるいは,尊厳な神格に対してイカメシキ(厳めしき)方と呼んでいたが,その省略形のカメシがメシ[m(e∫)i]の縮約でカミ(神)に転化したとも考えられる。いずれにしても,『神』の語源は『上』と無関係であったが,成立した後に,語義的に密接な関連性が生まれた。
 神の御座所を指すカミサ(神座)はカミザ(上座)に転義し,さらに神・天皇の宮殿の方位をカミ(上)といい,語義を拡大して川の源流,日の出の方向(東)をカミ(上)と呼ぶようになった。」

ヲリカガム(折り屈む)→アガム(崇む),

転訛説を採る。「崇」の字の意味と同様に,

(相手を)上に置く,

という心性とつながると見れば,「上げ」の活用説に与したい。

参考文献;
大野晋・佐竹 昭広・ 前田金五郎編『古語辞典 補訂版』(岩波書店)
大槻文彦『大言海』(冨山房)
前田富祺編『日本語源大辞典』 (小学館)
田井信之『日本語の語源』(角川書店)
増井金典『日本語源広辞典』(ミネルヴァ書房)
藤堂明保他編『漢字源』(学習研究社)

ホームページ;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm
コトバの辞典;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/kotoba.htm#%E7%9B%AE%E6%AC%A1
スキル事典;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/skill.htm#%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%AB%E4%BA%8B%E5%85%B8
書評
http://ppnetwork.c.ooco.jp/critic3.htm#%E6%9B%B8%E8%A9%95

posted by Toshi at 03:33| Comment(0) | 言葉 | 更新情報をチェックする