2019年06月07日


「木」は,

樹,

とも当てる。「木」(漢音ボク,呉音モク)の字は,

「象形。立木の形を描いたもの。上に葉や花を被った木」

とある(漢字源)。別に,

「象形文字です。『大地を覆う木』の象形」

ともある(https://okjiten.jp/kanji61.html)。いずれにしろ。木の幹と枝を描いている。

800px-木-oracle.svg.png



「樹」(呉音ジュ・ズ,漢音シュ)の字は,

「会意兼形声。右側の尌(シュ)は,太鼓または豆(たかつき)を直立させたさまに寸(手)を加えて,⊥型に立てる動作を示す。樹はそれを音符とし,木を添えた字で,立った木のこと」

とある(漢字源)が,よく分からない。別に,

「会意兼形声文字です(木+尌)。『大地を覆う木』の象形と『たいこの象形と右手の手首に親指をあて脈をはかる象形』(『安定して立てる』の意味)から、樹木や農作物を手で立てて安定させる事を意味し、そこから、『うえる』、『たてる』を意味する『樹』という漢字が成り立ちました」

とある(https://okjiten.jp/kanji942.html

k-942.gif



この方が意味が伝わる。因みに,「木」と「樹」は,

木は立木の総称,

とあり,「樹」も,立木の意はあるが,

草木,

とは言うが,草樹とは言わない。しかし,

植樹,

とはいうが,

植木,

とは言わない。

木刀,
木像,

とはいうが,樹の字を当てることはない。「樹」は,生きている木をいい,木材でつくるときは,「木」を当てる。しかし,

木陰(こかげ),
とも
樹陰(じゅいん),

ともいう。区別があるようだが,はっきり分からない。

さて,和語「き」は,植物名に,

「サカキ、エノキ、ヒノキ、ケヤキ、ツバキ、イブキ、ミズキ、サツキ、アオキ、エゴノキ、マサキ、カキ、ウツギ、ヤナギ、ヤドリギ、スギ、クヌギ」

等々(https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%9C%A8),「キ」または「ギ」で終わるものが少なくない。岩波古語辞典は,「き」に,

kï,

を当てる。上代和語は,

「ひらがな・カタカナ成立以前の日本語では、母音はa i u e o の5音ではなく、多くの母音の別があった…。(中略)イ段のキ・ヒ・ミ、エ段のケ・ヘ・メ、オ段のコ・ソ・ト・ノ・(モ)・ヨ・ロの13字について、奈良時代以前には単語によって2種類に書き分けられ、両者は厳格に区別されていたことがわかっている。(中略)片方を甲類、もう片方を乙類と呼ぶ。例えば後世の「き」にあたる万葉仮名は支・吉・岐・来・棄などの漢字が一類をなし、「秋」や「君」「時」「聞く」の「き」を表す。これをキ甲類と呼ぶ。己・紀・記・忌・氣などは別の一類をなし、「霧」「岸」「月」「木」などの「き」を表す。これをキ乙類と呼ぶ」

とされるhttps://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%B8%8A%E4%BB%A3%E7%89%B9%E6%AE%8A%E4%BB%AE%E5%90%8D%E9%81%A3

で,

甲類を i, e, o
乙類を ï, ë, ö

と表記する。「木(kï,)」は乙類になる。このことを前提にしないと,単なる語呂合わせになる。

大言海は,

「生(いき)の上略,生生繁茂の義」

とする。「生き」は,

iki,

で甲類である(岩波古語辞典)。しかし,

イキ(息)と同根,

とある(仝上)。「いき(息)」も,

iki,

とある(仝上)。しかし引用された書紀には,

「子等(みこたち)また倫(ひと)に超(すぐ)れたる気(いき)有ることを明かさむと欲(おも)ふ」

とある。「気」は乙類である。この転換はよく分からない。もし,この「いき(息)」が乙類なら,大言海説はある。そのせいか,日本語源広辞典も,

「生き(iki)で語頭のイが脱落してkiとなった」

とするが,これでは甲類のkiで,乙類のkïではない。不思議に,音韻にこだわる説が皆無である。

イキ(生)の上略(日本釈名・名言通・和訓栞・言葉の根しらべの=鈴木潔子・国語の語根とその分類=大島正健),

説以外にも,

生える物を意味するク(木)から,コ(木),ケ(毛・髪)同語源(続上代特殊仮名音義=森重敏),

というのがある。しかし「け(毛)」は古形「カ」ではなかったか。しかし「け(毛)」と関わらせる説もある。

ケ(毛)の轉。素戔嗚尊のなげた毛が木になったという伝説から(円珠庵雑記),
木は大地の毛髪であるところからか(日本古語大辞典=松岡静雄),

「け(毛)」は,

kë,

と乙類ではあるが,

kë→kï,

の転訛がありえるのかどうか,分からない。「き」http://ppnetwork.seesaa.net/article/448822496.html?1558388428で触れたように, 音韻を無視すれば,

「キ・コ(木)」と「カ・ケ(毛)」「クサ(草)」の音韻のつながりは深いので,

生えるものを意味するク(木)から,コ(木),ケ(毛・髪)も同源説,
キ(木)と同源語で,ケ(毛)から分化したもの,

は惹かれるが,音韻の問題は解けない限り,語呂合わせに過ぎない。もし乙類同士の,

kë→kï,

転訛があるなら,「毛(kë)」が「木(kï)」の語源と見ることが出来る。日本語の語源は,

「エ列音は隣接母韻間の母交(母韻交替)[ei]をとげてイ列音に変化」

するとあるので可能性はある。

参考文献;
大野晋・佐竹 昭広・ 前田金五郎編『古語辞典 補訂版』(岩波書店)
大槻文彦『大言海』(冨山房)
前田富祺編『日本語源大辞典』 (小学館)
藤堂明保他編『漢字源』(学習研究社)

ホームページ;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm
コトバの辞典;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/kotoba.htm#%E7%9B%AE%E6%AC%A1
スキル事典;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/skill.htm#%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%AB%E4%BA%8B%E5%85%B8
書評
http://ppnetwork.c.ooco.jp/critic3.htm#%E6%9B%B8%E8%A9%95

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