2019年06月25日

時化る


「しける」は,

時化る
湿気る,

と当てる。「時化」は当て字だが,「時化る」は,

「湿気 (しけ) る」と同語源,

とある(デジタル大辞泉)。しかし,「湿気る」は,

湿気を帯びる,しっける,

意であり,「時化る」は,

雨風で海が荒れる,
不漁である,
転じて,不景気である,また気持ち,恰好がぱっとしない,

という意で,「湿気る」とは意味が重ならない。室町末期の日葡辞書には,

「テンキガシケタ」

で,海が荒れる意で使われている。

しっけ(湿気)→しける,

はあくまで湿っている意で,時化とはつながらない。

ただ,大言海は「しけ」に,

陰,

を当て,

風雨気(しけ)の義,

とし,

水気の多いこと,しめりけ,
風雨の続くこと,(舟人の語)連陰(シケで,渡海がない),
転じて,海荒れて,魚などの捕られぬこと(漁夫の語),

という意味を載せている。これに従うと,

湿気る→雨風の続くこと→時化,

と転じたことになる。江戸語大辞典には,

時化,

しか載らず,

暴風雨のため海が荒れて,不漁になること,漁獲のないこと,

とあり,

漁夫・魚屋用語なるも,料亭などでもいう,

とある。さらに,

霖雨(ながあめ),
収入・収穫などのほとんどないこと,

の意とあり,

しけを食う,

という言い回しがあり,

暴風雨または霖雨にあう,

意であり,

しけ上がり,

という言い回しは,

暴風雨または霖雨の止んだ直後,

とある。

「時化」は,日葡辞書に,

天気が曇る,

とある(語源由来辞典)ので,「しける」は,

湿気る,

とつながり,天気の意味となり,海の荒れ,不漁,不景気と転じていったものとみてよさそうである。

シケ(陰)の義(和訓栞),

は,大言海ともつながり,陰陽の陰と考えると,曇りともつながる。

参考文献;
大槻文彦『大言海』(冨山房)
前田勇編『江戸語大辞典 新装版』(講談社)
前田富祺編『日本語源大辞典』 (小学館)

ホームページ;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm
コトバの辞典;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/kotoba.htm#%E7%9B%AE%E6%AC%A1
スキル事典;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/skill.htm#%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%AB%E4%BA%8B%E5%85%B8
書評
http://ppnetwork.c.ooco.jp/critic3.htm#%E6%9B%B8%E8%A9%95

ラベル:時化る 湿気る
posted by Toshi at 04:07| Comment(0) | 言葉 | 更新情報をチェックする