2019年06月30日

独活の大木


「独活の大木」の「うど」に,「独活」を当てるのは,

「風が吹いてないときでもひとりで動く植物だということから,独揺草(どくようそう)とも名づけられていた。独は,一人という意味があり,活は,よく動くという意味がある。サンズイに舌という字は,水が勢いよく流れるということから動くことを表したもので,『ウド』が,風もないのにひとりで動くということから『独活』という字が当てられた」

ということかららしい(たべもの語源辞典)。

「独活の大木」とは,

「ウドは茎が長くても,柔らかくて役に立たないことから,身体ばかり大きいが,役に立たない人のたとえ」

に使われる(広辞苑)。しかし,ウドはせいぜい二メートル,どうみても,ウドが大木には見えない。

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(白ウド(東京うど)  https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A6%E3%83%89より)


「成長すると茎が二メートルほどにもなるが,若芽の時のように食用にならず,さりとて柔らかいため用材にもならないため」

という説明(故事ことわざ辞典)なら,まだわかる。日本語源広辞典は,この説を採り,

「大きい植物だが,若芽を食べる以外,木として役に立たない意」

とする。

独活の大木蓮木刀(はすぼくとう レンコンでつくった木刀),

ならともかく,

独活の大木柱にならぬ,

ということわざは,どうもジョークならともかく,現実的ではない。一説に,

「『うど』は空洞のことで,空洞のある大木は柱にならないの意から,同様のたとえになった」

という説もある(故事ことわざ辞典)。日本語の語源は,この説を採り,

「洞穴や樹木などの空洞をウツロ(空虚)といったのがウロ(空洞)になった。〈古木のウロ,いはほのくぼかなる所などに〉(弓張月)。今も,(中略)『木のウロ』という(ところがある)。
 発音が強化されると子交(子音交替)[rd]をとげてウドになり,東北地方…では『洞穴』のことをいう。さらに子交[dt]をとげてウトになり,淡路島…では『ほらあな』のことをいう。ウトーというところもある。
 ウドの大木とは植物の独活ではなくうど(空洞)のことで,空洞のある大木は建築用材にはならぬというのが本義であった。ちなみに,ウド(独活)もまた茎が中空なところからウド(空洞)の名を得た」

とする。考えると,確かに,この説の方が現実的ではあるが,諺の意外性は無くなり,人へのインパクトは無くなる。やはり,

ウドの大木,

は,「独活」とするのが,表現として,面白いのかもしれない。

白豆腐の拍子木

という表現とセットで考えるなら,「独活」だろう。では「うど」の語源は何か。

大言海は,

「埋(うづ)の轉(たづたづ,たどたど)。芽の,土中にあるを食ふ意と云ふ,いかがか」

とする。これは,山ウドを指し,

「若葉、つぼみ、芽および茎の部分が食用になり、香りもよい。つぼみや茎は採取期間が短いが、若葉はある程度長期間に渡って採取することができる」

とある(https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A6%E3%83%89)。スーパーや八百屋などで見られるのは、

「日の当たらない地下の室(むろ)で株に土を盛り暗闇の中で栽培した軟白栽培によるもので、モヤシのように茎を白く伸ばして出荷する」

せいで,白ウドと呼ぶ。日本語源広辞典も,

ウ(埋)+ト(土),

を採る。

ウド(埋所)の義(本朝辞源=宇田甘冥),

も同趣旨とみていい。しかし,

林の際など日当たりのよい場所か半日陰の傾斜地などに自生する,

ものの若芽を採っていた(仝上)とすると,この説はどうなのだろう。

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(山菜として食べごろのウド(若芽) 仝上)


たべもの語源辞典の言っていた,

「ウゴクの轉語。風がないのに動くところから中国で活を当てた」(滑稽雑誌・たべもの語源抄=坂部甲次郎)

は,中国語での「独活(どくかつ)」の説明ではあるが,それを「うど」と訓ませただけだから,これは「うど」の語源の説明にはなっていない。中国語では,「うど」は,

土當歸(どとうき),

とも呼び,若莖を食用にするとある(字源)。字鏡に,

「独活 宇度,又云,乃太良」

本草和名に,

「独活 宇土,都知多良」

とある。「たら」とは「タラノキ」で,

「春,幹の上に芽を生ず,フキノタウの如し,食用とす。味独活の如し,故に,ウドモドキ,又ウドメ(物頭)という名づく」

とある。「野タラ」「土タラ」と「独活」を呼んでいるのはこのためである。とすると,若芽を食べることを前提にしている。「埋(うづ)」等々,埋もれることを前提にしている説はいかがであろうか。

となると,

ウはウバラのウと同じ。トはトゲの下略。茎に毛刺が多いことから生じた語か(古今要覧稿),

が生きてくる。そうすると,「独活の大木」も,

空洞説,

となるが。

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参考文献;
大槻文彦『大言海』(冨山房)
前田富祺編『日本語源大辞典』 (小学館)
増井金典『日本語源広辞典』(ミネルヴァ書房)
藤堂明保他編『漢字源』(学習研究社)
清水桂一『たべもの語源辞典』(東京堂出版)

ホームページ;
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コトバの辞典;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/kotoba.htm#%E7%9B%AE%E6%AC%A1
スキル事典;
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書評
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posted by Toshi at 03:56| Comment(0) | 言葉 | 更新情報をチェックする