2019年08月19日

杜撰


「杜撰」は,

ずさん,

と訓ますが,本来,

ずざん,

と訓むものが訛った。「杜」(漢音ト,呉音ズ)は,

「会意兼形声。『木+音符土(ぎっしりつまる)』」

とあり(漢字源),果樹の「やまなし」の意であり,「とざす」(是静非杜門)の意で,「塞」と同意である(字源)。「(神社の)もり」の意で使うのは我が国だけである。

「撰」(慣音セン,漢音サン,呉音ゼン)は,

「会意兼形声。巽(セン・ソン)とは,人をそろえて台上に集めたさま。撰は『手+印符巽』で,多くのものを集めてそろえること」

とある(漢字源)。「えらぶ」意だが,「詩文をつくる」意がある。「えらぶ」意では,

撰んで集めそろえること(もの),
事柄をそろえ,集め,それをもとに文章をつくる(撰述),
生地を集めて述べる,編集する,

といった意味になる(漢字源)。「撰」は,

「造也と註す。文章を作るには,撰,譔何にてもよし。撰述と連用す。唐書,百官志『史館修撰,掌修國史』」

とあり(字源),「選」は,

「よりすぐること,文選・詩選は,詩文のよきものをよりぬく意なり。撰述には用ひず。論語『選於衆擧皐陶不仁者遠(衆に選んで皐陶(舜帝が取り立てて裁判官とした)を挙げしかば,不仁者遠ざかりぬ)』」

とあり(字源),「撰」と「選」の違いが,「杜撰」の語源を考えるに当たって鍵となる。

「杜撰」は,今日,

物事の仕方がぞんざいで,手落が多い,

意で使われる。元は,一説に,

杜黙(ともく)の作った詩が多く律に合わなかったという故事から,

とある(広辞苑)。日本語源広辞典も,

杜黙の試が多く律に合わなかった故事,

とする。大言海は,

「宋音ならむ。禅林寶訓音義,下『杜撰,上,塞也,下造也,述也,言不通古法而自造也』。無冤録『杜撰,杜借也。撰,集也』」

とし,

詩文,著述などに,妄りに典故,出處も無き事を述ぶること,

とし,類書纂要の,

「杜撰作文,無所根拠」

野客叢書(宋,王楙)の,

「杜黙為詩,多不合律,故言事不合格者,為杜撰」

事文類聚の,

「或云,唐皇甫某,撰八陽經,其中多載無本據事,如鬱字,分之為林四郎,故事無本據,謂之杜撰」

等々を引く。こうみると,「杜撰」は,

「杜という人の編集したものの」

意(故事ことわざ辞典)ではなく,「撰述」の意,つまり,

「詩作」

の意であり,

「『杜』は宋の杜黙(ともく)のこと、『撰』は詩文を作ること。杜黙の詩が定形詩の規則にほとんど合っていなかったという「『野客叢書』の故事から」(デジタル大辞泉)

「杜撰の『杜』は、中国宋の杜黙(ともく)という詩人を表し、『撰』は詩文を作ることで、杜黙 の作った詩は律(詩の様式)に合わないものが多かったという故事に由来するという、中国の『野客叢書(やかくそうしょ)』の説が有力とされる」(語源由来辞典)

というところに落着しそうだが,

杜撰の「杜」は,本物でない仮の意味の俗語とする説,
道家の書五千巻を撰した杜光庭を指す説,

等々異説もあるが,「杜」については説が分かれている。日本語源大辞典は,

「ズ(ヅ)は『杜』の呉音,サンは通常センと訓む『撰』の別音。中国宋代に話題となったことばで,『野客叢書』や『湘山野録』などで語源について論じられている。日本には禅を通じて入ったようで,『正法眼蔵』や,『下學集』の序文に使用例が見られるが,辞書では,『書言字考節用集』に『湘山野録』を引いて『自撰無承不拠本説者曰杜撰』と記述されている」

と書く。

参考文献;
大槻文彦『大言海』(冨山房)

ホームページ;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm
コトバの辞典;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/kotoba.htm#%E7%9B%AE%E6%AC%A1
スキル事典;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/skill.htm#%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%AB%E4%BA%8B%E5%85%B8
書評
http://ppnetwork.c.ooco.jp/critic3.htm#%E6%9B%B8%E8%A9%95

ラベル:杜撰
posted by Toshi at 04:01| Comment(0) | 言葉 | 更新情報をチェックする