2019年08月23日

溜息


「溜息」は,

長息(ちょうそく),
大息(おおいき),

とも言い,

「失望・心配または感心したときなどに長くつく息」(広辞苑)
「心配・失望・感動などの時に思わずもらす大きな息」(大辞林)
「気苦労や失望などから、また、感動したときや緊張がとけたときに、思わず出る大きな吐息」(デジタル大辞泉),

等々と意味が載る。

溜息をつく,
溜息が出る,
溜息をもらす,

等々と使う。

嘆く時は,

嘆息,

感動する時は,

感嘆,
詠嘆,

という。似た言い回しに,

吐息,

がある。

「落胆したり,安心したりしてつく息」

である(広辞苑)。この酷い状態が,

青息吐息,

で,

「嘆息する時弱った時に出す溜息,また,その溜息が出るような状態」

とある(広辞苑)。嘆息のもっとひどい状態である。笑える国語辞典は,

「ため息(溜息)とは、吸った息をひとしきり溜めたのちに吐かれる長い息のこをいうが、決してレントゲンの検査をしているわけではなく、落胆したときや絶望したとき、あるいは逆に感動したときなどに吐かれる息のことをいう。「吐息」も似たような意味があるが、こちらは女性が男性を誘惑するようなときにも用いられるのに対して、ため息はどちらかというと、女性ご自慢のボディを見せつけられた男性が間抜け面をして吐く息である」

と区別して見せるが,まあ付会である。

イタリアのヴェネツィアには「溜め息の橋」という観光名所があるそうである。

「ドゥカーレ宮殿と旧監獄を結ぶ運河の上に架かる橋の事を指し、この橋を渡って監獄に入れられていく罪人達が溜め息をつくことから由来(橋から眺めるヴェネツィアの景色が、囚人が投獄前に最後に見られる光景であるため)」

とか(https://dic.nicovideo.jp/a/%E3%81%9F%E3%82%81%E6%81%AF)。

私見だが,大きく息を吸うためには,大きく息を吐かなくてはならない。それは肺活量検査で,経験済みである。嘆いたり,絶望したとき,思いが鬱屈していて,息が浅いか,思い詰めて息を殺している。だから,体は,吸気のために,まず体内の息を吐き出す。それが溜息のように思われる。

溜息は意識的ではなく,ほとんど無意識に,

気付いたら「はぁ~」とため息をついているもの,

らしい(https://docoic.com/12261)。その前に,思い屈し,息が浅いか,息を飲むように,息を止めているかがある。

2016年2月米カリフォルニア大と米スタンフォード大の合同研究チームが,ラットの実験で,ため息が脳を活性化させるばかりか,呼吸を助けて生存に欠かせない行為であることを明らかにし、英科学誌「ネイチャー」に発表した。それによると,

「人間は気づかないうちに約5分おきに、通常の呼吸より2倍多く空気を吸い込む『小さなため息』をついている。肺の中には肺胞という微細な袋がたくさんあり、酸素を取り込んでいるが、呼吸の間に水分を吸収し濡れた風船のようにしぼんでしまうからだ。そこで、ため息をついて空気を多く吸い込み、再び肺胞を膨らませるのだ。研究チームは、ラットの脳の神経細胞を調べ、酸素が足りないことを脳が察知し、ため息をつかせる神経回路を発見した。この回路に異常をきたすと、呼吸障害などが起こり、死に至ることがわかった」

という(https://www.j-cast.com/2016/02/19258913.html?p=all)。スタンフォード大学のマーク・クラズノー教授は,

「ため息はただの感情のはけ口でなく、生きるために不可欠な行為なのです。ため息によって、感情、言葉、認知、推理をつかさどっている大脳皮質が再び活性化します。ため息は、脳にとって究極の覚醒(かくせい)と言えます」

とコメントしているという(仝上)。

人間の自律神経には,興奮時に活動する交感神経と安静時に活動する副交感神経がある。

交感神経は血圧や心拍数を高めて体を活性化する,
副交感神経は血圧や心拍数を鎮めて体をリラックスさせる,

両者はアクセルとブレーキの関係で,両方のバランスが取れているのが健康な状態になる。ストレス状態では,

「交感神経が強く働くようになる。いったん優位になった交感神経は、放っておくと2時間は元に戻らない」

そんなときは,

「呼吸も乱れている。姿勢が前かがみになり、肺に十分空気が行き渡っていない。すると、リラックスが役割の副交感神経が働いてくる。副交感神経の1つに呼吸情報をモニタリングする迷走神経があり、『酸素が足りていない』とキャッチし、脳に『ため息を命じて』と伝達する。こうして、深々とため息をついて酸素を取り込むことで、高ぶった交感神経を収めてくれる」

という仕組みになっている(仝上)。ため息をつくことは,ストレスで無呼吸や浅い呼吸の状態から呼吸を整える役割ということになる。

「溜息」とは,まさに,文字通り,

溜+息,

息を溜めている状態から,息を吐き出す意である(日本語源広辞典)。大言海は,

溜めて,後に長くつく息,

と正確である。

参考文献;
大槻文彦『大言海』(冨山房)
増井金典『日本語源広辞典』(ミネルヴァ書房)

ホームページ;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm
コトバの辞典;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/kotoba.htm#%E7%9B%AE%E6%AC%A1
スキル事典;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/skill.htm#%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%AB%E4%BA%8B%E5%85%B8
書評
http://ppnetwork.c.ooco.jp/critic3.htm#%E6%9B%B8%E8%A9%95

ラベル:大息 長息 溜息
posted by Toshi at 03:52| Comment(0) | 言葉 | 更新情報をチェックする