2019年09月09日

狐の嫁入り



「狐の嫁入り」は,

狐火が多く連なって嫁入り行列の提灯のように見えるもの,

を言うが,

陽が照っているのに雨の降る天気,

つまり,

天気雨,

についてもいう(広辞苑)。そのため,

狐雨(きつねあめ),

ともいう。

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(葛飾北斎画『狐の嫁入図』 https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%8B%90%E3%81%AE%E5%AB%81%E5%85%A5%E3%82%8Aより)

語源由来辞典は,

「狐の嫁入りは,夜,遠くの山野に狐火がいくつも連なっていることを,狐が嫁入りする提灯に見立てたもの。狐火は,狐の口から吐き出された火という俗信がある奇怪な青白い火で,恐れられていた。陽が照っているのに雨がバラつく現象を,狐火の怪しさのようであることにたとえ,日照り雨を『狐の嫁入り』というようになった」

と,その意味の転化を説明する。日本語源広辞典の,

「狐火(土中の燐化水素の自然発火)を,『狐の嫁入りの提灯の灯とみて怪しいとみた』言葉です」

は,ちょっと身も蓋もない。大言海は,

「一方に日は照り,一方に雨の降るを称する語。変化自在の狐のすめ所為(わざ)として云ふなるか」

と,日照り雨の説明をする。この方がいい。

宝暦時代の越後国の地誌『越後名寄』には,怪火としての「狐の嫁入り」が,

「夜何時(いつ)何處(いづこ)共云う事なく折静かなる夜に、提灯或は炬の如くなる火凡(およそ)一里余も無間続きて遠方に見ゆる事有り。右何所にても稀に雖有、蒲原郡中には折節有之。これを児童輩狐の婚と云ひならはせり」

と,描かれているhttps://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%8B%90%E3%81%AE%E5%AB%81%E5%85%A5%E3%82%8Aし,寛永時代の随筆『今昔妖談集』には江戸の本所竹町、文政時代の草紙『江戸塵拾』には同じく江戸の八丁堀、寛政時代の怪談集『怪談老の杖』には上州(現・群馬県)神田村で、それぞれ奇妙な嫁入り行列が目撃されて,それが実はキツネだった(仝上),とか。

葛飾北斎による『狐の嫁入図』では,天気雨のときにはキツネの嫁入りがあるという俗信に基き、キツネの嫁入り行列と、突然の天気雨に驚いて農作物を取り込む人々の様子が描かれている(仝上)。

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(広重『名所江戸百景』・王子装束ゑの木 大晦日の狐火 「毎年、大晦日の夜、社に近い榎の下に集まった狐は、ここで衣裳を整えて王子稲荷社に参上した。近在近郷の農家では、狐がともす狐火の量で、新年の豊凶を占った」。各狐とも顔面の近くに狐火を浮かべている https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%8B%90%E7%81%ABより)

「狐火」とは,

「狐が口から吐くという俗説にもとづく」

とし,

暗夜,山野に見える怪火,鬼火・燐火等の類,

とある(広辞苑)。

狐の提灯,
ヒトボス、
火点し(ひともし),
燐火(りんか),
鬼火,

ともいう。郷土研究家・更科公護によると,狐火の特徴は,

「火の気のないところに、提灯または松明のような怪火が一列になって現れ、ついたり消えたり、一度消えた火が別の場所に現れたりするもので、正体を突き止めに行っても必ず途中で消えてしまうという。また、現れる時期は春から秋にかけてで、特に蒸し暑い夏、どんよりとして天気の変わり目に現れやすいという。十個から数百個も行列をなして現れ、その数も次第に増えたかと思えば突然消え、また数が増えたりもするともいい、火のなす行列の長さは一里(約4キロメートルあるいは約500~600メートル)にもわたる」

という(https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%8B%90%E7%81%AB)。まさに,「狐の嫁入り」である。人は,知っていることを見る,まさに「狐」とはこういうものだというものを見ている。

なお,「きつね」http://ppnetwork.seesaa.net/article/433049053.htmlはすでに触れた。

参考文献;
大槻文彦『大言海』(冨山房)

ホームページ;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm
コトバの辞典;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/kotoba.htm#%E7%9B%AE%E6%AC%A1
スキル事典;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/skill.htm#%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%AB%E4%BA%8B%E5%85%B8
書評
http://ppnetwork.c.ooco.jp/critic3.htm#%E6%9B%B8%E8%A9%95

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posted by Toshi at 06:58| Comment(0) | 言葉 | 更新情報をチェックする