2019年09月26日

追剥


「追剥」は、

通行人を脅かして衣類や持ち物などを奪うこと、

である。今日では死語だが、室町末期の「日葡辞書」には、

オイハギニアウ、

と載る(広辞苑)。動詞で、

追い剥ぐ、

ということばがあり、

往来の人を追ひ劫やかして、衣類、金銭などを剥ぎ取る、引剥(ひはぎ)を行ふ、

とある(大言海)。「引剥」は、

ひきはぎ、
ひっぱぎ、

とも訓み、

「山野など、無人の路に潜みて、往来の人を劫(おびやか)し、衣を剥ぎ、財を奪う盗人」

とある(仝上)。古くは、

追落(おいおと)し、
引きはぎ、

ともいい、「宇治拾遺物語」に、

「いかなる者ぞと問へば……ひはぎに候」

とある。「追剥」は、

「追い+剥ぎ」

で(日本語源広辞典)、

旅人を追いかけて、衣類や持ち物を剥ぎ取る、

ところからきているらしい(仝上)。ただ、江戸幕府は、

「『公事方御定書(くじかたおさだめがき)』で『追いはぎ』と『追落し』とを区別したが、殺人強盗、傷害強盗とともに強盗罪のなかに組み入れている。追いはぎは、通行人を捕らえて自由を奪い金品を強奪して衣類をはぐことをいい、刑罰には獄門を適用した。追落しは、通行人を脅して突き倒し、あるいは逃げるのを追いかけて金品を奪うことをいい、刑罰は一等軽い死罪であった」

とある(日本大百科全書)。

c94c61778bef7da96893bf451497a1e1.jpg

(喜多川歌麿「見るか徳栄華の一睡 娘の夢」(商人の若夫婦が追い剥ぎに襲われ"服を脱げ"と脅され、嫁が帯を外そうとしたら"男の方だ!"とまさかの若旦那を指名、自身もふんどし姿になる追い剥ぎ、という夢を見る娘に餌をねだる猫)http://www.bestweb-link.net/PD-Museum-of-Art/ukiyoe/ukiyoe/utamaro-3/No.120.jpgより)

「追落(おいおとし)」は、

「往来の人を脅したり追いかけたりして、落とさせた財布などを奪い取ること」

とあり(精選版 日本国語大辞典)、鎌倉時代からの語らしいが、追剥と区別したのは、江戸時代のことになる。「追剥」は、

「往来の人を捕え、着ている衣類や金銭をはぎ取ること」

で(仝上)、江戸時代、獄門の刑が科せられ、追落(おいおとし)は、死罪だが、晒されないだけまし、というこの区別は、よくわからない。「獄門」は、

梟首(きょうしゅ)、
晒し首、

ともいい、江戸時代の『公事方御定書』には、

「斬首刑の後、死体を試し斬りにし、刎ねた首を台に載せて3日間(2晩)見せしめとして晒しものにする公開処刑の刑罰」

になるhttps://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%8D%84%E9%96%80。「死罪」は、『公事方御定書』には,

「首を刎ね,死骸を取捨て,様斬 (ためしぎり) にする」

とある(ブリタニカ国際大百科事典)。

ところで、寿司屋の言葉にも、

追い剥ぎ、

というのがあるらしい。

「寿司ネタをシャリから剥がして、タネにしょうゆをつけ、またシャリの上に戻して食べる方法」

を指す(日本語源大辞典)。

「職人が一番がっかりするもので、せっかく形よく握った寿司なのに、タネをはがされると、シャリとわさびが寒々しく見え、言葉通り、『追いはぎ』にあった若い娘のようにみえてしまう」

とある(佐川芳枝『寿司屋のかみさん』)、らしい。

参考文献;
前田富祺編『日本語源大辞典』 (小学館)

ホームページ;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm
コトバの辞典;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/kotoba.htm#%E7%9B%AE%E6%AC%A1
スキル事典;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/skill.htm#%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%AB%E4%BA%8B%E5%85%B8
書評
http://ppnetwork.c.ooco.jp/critic3.htm#%E6%9B%B8%E8%A9%95

ラベル:引剥 追落 追剥
posted by Toshi at 04:29| Comment(0) | 言葉 | 更新情報をチェックする