2019年10月02日

太閤検地


中野等『太閤検地-秀吉が目指した国のかたち』を読む。

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本書は、秀吉の織田政権下での羽柴領検地から始まって時系列に、豊臣政権下で行われた検地を詳細に検討し、

「豊臣政権が創り上げようとした近世社会あるいは近世国家像」

に迫ろうとする。この検地によって、米の容積を示す単位を「石」を基軸としたため、

「国内の生産力が『石高』によって表示されるにいたる。すなわち、太閤検地によって田畠には等級が設けられ、土地の面積は町・段(反)・畝・歩という単位体系によって把握され、生産力の指標となる米の容積も基準となる統一の枡によりつつ、石・斗・升・合・勺という単位体系に整理された。田も畠もさらには屋敷地まで米を生産するものと想定され、その収穫高が米高として算出された」

これを前提として、村々の境界線を確定し、地域を明確にして、

「村々の石高が算出され、さらにそれを基準として郡の石高(郡高)や国の石高(国高)が算出される」

こととなり、これによって、

「大名の領地高や給人(知行地を与えられた大名家臣)の知行高はもとより、村々の規模や百姓が所持する高知の規模、さらには年貢として収奪される生産物の多寡も石高によって表示されることとなった」

村の確定は、村単位として年貢を納める責任を負う、

「村請制』が機能しはじめることである。『村請制』のもとでは、村のみが法人格を付与されて年貢や諸役の責任を負う。仮に、個々の百姓に年貢の滞納(未進)があったとしても、その責めは村全体に帰する」

ことになる。つまり、検地により、

村の境界を画し、
当該地域の土地面積を測量し、
田地の品位を定め、
石盛(一反当たりの収穫量)を定め、
石高を定め、
一村当たりの総地積、総石高を決定する、

ことによって、太閤検地は、

「在地秩序を再編し、社会の新たな基本単位を設定する」

ことになり、この結果、近世の村が成立する。

さらに在地の一元化に伴い、

主を持たず、田畠を作らざる侍、

は村々から放逐される。つまり、

「豊臣政権が目指した在所のありようは『百姓』『諸職人』『商売人』と、武具類の所持を認められた主人をもつ『奉公人』からなるもの」

であった。

「豊臣政権下の『在所』は給恩をもって主人の役を務める『諸奉公人』と田畠開作を専らに仕る『百姓』および『町人』すまなわち諸職人や商売人から構成されることになる」

したがって、大名は、国替えで移封される場合、

「『家中』『侍』のことは申すに及ばす、『中間』『小者』に至るまで『奉公人』は一人も残さず連れていく」

ことを命じられる。これを、

「『兵農分離』ではなく『士農分離』という概念こそがふさわしい」

とする。それは、中世以来の、地侍、土豪という所有地を持った侍の在り方の解体、士・農の分離を意味する。在地に残った地侍。土豪は、百姓となることを意味した。

この検地は、土地から離された侍側にも大きな変化をもたらす。

「検地の結果として機能する石高制によることで、秀吉は臣下の領知を容易に異動する環境を獲得する。前後の知行規模が数値化されており、知行加増や減封といった主従関係の変化も容易に具現化されることとなるが、領知内容の互換性を図るうえで石高のもつ客観性や合理性は大きな意味を持つ」

その結果、豊臣政権末期になると、

戦国以来の故地にいたのは中国毛利氏と九州・奥羽など遠隔地の諸大名」

のみになり、

「薩摩・大隅・日向の一部を領した島津氏の場合も、給人レベルでみれば文禄四年検地ののち、ほとんどが本来の領地から引き離された地に転封を余儀なくされている」

ありさまで、これを、確か荻生徂徠は、

鉢植化、

といったと思うが、

「原理的にすべての『国土』は天皇あるいは秀吉の手に帰し、以後江戸時代を通じて大名・給人は在地性を否定された「鉢植え」の領主として存在することとなる。こうした世界史的にも稀有な『封建制度』を可能にし、それを根本で支えたのが一連の太閤検地と称される政策であった」

この太閤検地の成果の上に、徳川幕藩体制は成り立つ。幕藩体制の成立しについては、

「幕藩体制の確立」(http://ppnetwork.seesaa.net/article/470099727.html?1568502090

で触れた。

参考文献;
中野等『太閤検地-秀吉が目指した国のかたち』(中公新書)

ホームページ;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm
コトバの辞典;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/kotoba.htm#%E7%9B%AE%E6%AC%A1
スキル事典;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/skill.htm#%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%AB%E4%BA%8B%E5%85%B8
書評
http://ppnetwork.c.ooco.jp/critic3.htm#%E6%9B%B8%E8%A9%95

posted by Toshi at 04:40| Comment(0) | 書評 | 更新情報をチェックする