2019年10月07日

魑魅魍魎


「魑魅魍魎」(ちみもうりょう)は、「魑魅」は、

「『魑』は虎の形をした山神、『魅』は猪頭人形の沢神」

で(史記・五帝本紀)、

山神、
山林の異気から生ずるという怪物、

「魍魎」(「罔両」とも表記)は、

水の神、
山川の精、木石の怪、

とある(広辞苑)。どうやら、「魑魅」も「魍魎」も、もとは、

神、

あるいは、

精霊、

であったらしい。

Jisuke_Chimi-Moryo.jpg

(『百鬼夜講化物語』。向かって右が魑魅、左が魍魎 https://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%AD%91%E9%AD%85%E9%AD%8D%E9%AD%8Eより)

「魑魅魍魎」は、

「山川の精霊をいう。また螭蜽とも書く。中国の《左伝》の注に〈魑魅は山川の異気の生む所にして人に害をなすもの〉,また,《国語》の〈木石の怪を夔蜽(きもうりよう)と曰(い)う〉の注に〈蜽は山精,好んで人の声を斅(まな)びて人を迷惑(まどわ)す〉とあるように,こだま,すだまの類をさす。これらは地方的な精霊であるため,中央集権的な神々の体制には服さず,それゆえ,人々が何の準備もなくこうした精霊と遭遇するのは危険であるとされた」

とあり(世界大百科事典)、地域性の強い神であったことと、それへの信仰が薄れたことで、零落して、

「魑魅」は山林の異気から生じて人を害する怪物、
「魍魎」は山水木石の精気から出る怪物、

と(四字熟語辞典)なりはて、

「山の怪物や川の怪物。様々な化け物、妖怪変化。魑魅は山の怪、魍魎は川の怪であり、一般には山河すべての怪として魑魅魍魎の名で用いられることが多い」

となったhttps://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%AD%91%E9%AD%85%E9%AD%8D%E9%AD%8E

「魑」(チ)は、

「会意兼形声。离(チ)は、奇怪な蛇、山の怪物をあらわす。魑はそれを音符とし、鬼を加えた字。この音符はもと、上部は山であった」

とあり(漢字源)、「すだま」「山林の精気から生じる化け物」の意。「すだま」は「魑魅」とあてる。和名抄は、

「山林・木石の精気から生じるという人面鬼身の怪物」

とある。「魅」(漢音ミ、呉音ビ)は、

「会意兼形声。『鬼+音符未(はっきりわからない)』。何とも得体のしれない魔力で人をまどわす妖怪」

とある(仝上)。「すだま」「山林の異気の生ずるばけもの」とある。「魍」(漢音モウ、呉音ボウ)は、

「会意兼形声。『鬼+音符罔(あみ、あみをかけて見えなくする)』。

で(仝上)、「水神」「木石の怪」とある(字源)。「魎」(漢音リョウ、呉音ロウ)は、

「会意兼形声。『鬼+音符兩(ふたつ、二本足)』。人間のように二本足で歩くばけもの」

とあり(漢字源)、「山水木石などの精気から生ずるというばけもの」「山川のおばけ」の意である(仝上)。

「魑魅」と「魍魎」は、いまは区別がつかないが、魑魅とは、

「山林の異気(瘴気)から生ずるという怪物のことと言われている。顔は人間、体は獣の姿をしていて、人を迷わせる。平安時代中期の辞書『和名類聚抄』ではスダマという和名の鬼の一種とされ、江戸時代の百科事典『和漢三才図会』では山の神とされる」

とありhttps://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%AD%91%E9%AD%85%E9%AD%8D%E9%AD%8E、鳥山石燕は、「魑魅」を描かなかったが、

邪魅(じゃみ)、

を描き、

邪魅は魑魅の類なり、妖邪の悪鬼なるべし、

と記した(今昔画図続百鬼)。

SekienJami.jpg

(鳥山石燕『今昔画図続百鬼』・邪魅 https://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%BB%8A%E6%98%94%E7%94%BB%E5%9B%B3%E7%B6%9A%E7%99%BE%E9%AC%BCより)


「魍魎」は、

「山川や木石の精霊とされる。山・水・木・石などあらゆる自然物の精気から生じ、人を化かす。また、死者を食べるとも言われ、姿かたちは幼児に似ていて、2本足で立ち、赤黒色の皮膚をして、目は赤く、耳は長く、美しい髪と人に似た声をしている。これらの外見は鬼を思わせる。『和漢三才図会』では水神、古代中国の書『春秋左氏伝』では水沢の神とされる」

とあり(仝上)、

SekienMoryo.jpg

(鳥山石燕『今昔画図続百鬼』・「魍魎」 https://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%AD%8D%E9%AD%8Eより)


鳥山石燕は、

「形三歳の小児の如し。色は赤黒し、目赤く、耳長く、髪はうるはし。このんで亡者の肝を食らふと云、

と記した(今昔画図続百鬼)。これは、

「罔両は状は三歳の小児の如し、色は赤黒し、目は赤く耳は長く、美しい髪をもつ」

とある(淮南子(えなんじ))のに基づくとみられる。

「『本草綱目』には、「罔両は好んで亡者の肝を食べる。それで『周礼』に、戈(ほこ)を執って壙(つかあな)に入り、方良(罔両)を駆逐する、とあるのである。本性、罔両は虎と柏とを怖れす。また、弗述(ふつじゆつ)というのがいて、地下にあり死人の脳を食べるが、その首に柏を挿すと死ぬという。つまりこれは罔両である」

と記されているhttps://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%AD%8D%E9%AD%8E、とか。

「魍魎」は、

みずは、

と訓じ、

水神、

とされた(「水波」「美豆波」「弥都波」等々と表記)。

「山や川、木や石などの精や、墓などに住む物の怪または河童などさまざまな妖怪の総称」

でもあるhttps://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%AD%8D%E9%AD%8E

「『淮南子』によると、罔象は水から生じる。また、『史記』によると、孔子は水の怪は龍や罔象であるとした。
これらから、魍魎も水の怪の総称とみなされるようになった。この意味は、山川の怪を意味する魑魅と対を成すようになった(あわせて魑魅魍魎)。日本では『日本記』により、罔象の和名は水神(あるいは女神)を意味する『みずは』だとされた」

とある(仝上)。ただ、亡者の肝を食べるという点から、日本では魍魎は死者の亡骸を奪う妖怪・火車と同一視されており、火車に類する話が魍魎の名で述べられている事例も見られる(仝上)、という。

火車(http://ppnetwork.seesaa.net/article/432314473.html

については、すでに触れた。

参考文献;
鳥山石燕『画図百鬼夜行全画集』(角川ソフィア文庫)
田部井文雄編『四字熟語辞典』(大修館書店)

ホームページ;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm
コトバの辞典;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/kotoba.htm#%E7%9B%AE%E6%AC%A1
スキル事典;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/skill.htm#%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%AB%E4%BA%8B%E5%85%B8
書評
http://ppnetwork.c.ooco.jp/critic3.htm#%E6%9B%B8%E8%A9%95

posted by Toshi at 04:37| Comment(0) | 言葉 | 更新情報をチェックする