「つづら」は、
九十九、
と当てると、
九十九折、
の「つづら」となり、
葛籠、
と当てると、
つづらこ、
ともいう、
ツヅラフジの蔓で編んだ、衣服などを入れる(蓋つき)箱形のかご。後には竹・檜 (ひのき) の薄板で編み、上に紙を張って柿渋 (かきしぶ) ・漆などを塗った、
衣装入れ、
となる。
「ツヅラフジ」は、
葛藤、
と当てる(クズフジとも訓ませる)が、別名、
青葛、
と当て、
あおかずら、
あおつづら、
ともいう。
関東地方以西の暖地の常緑樹林中に生える。茎は木質で硬く,長く伸びて他物に巻きつく。
とある(ブリタニカ国際大百科事典)。ツヅラフジの、
幹、根茎、根を乾燥し、薄く横切りしたもの、
を、漢方では、
防已(ぼうい)
または
漢防已、
と称し、利尿、消腫(しょうしゅ)、鎮痛剤として浮腫、小便不利、関節痛、神経痛などの治療に用いる(日本大百科全書)。
(アオカズラの花、トゲとツルで他の木に巻き付く https://ww1.fukuoka-edu.ac.jp/~fukuhara/keitai/aokadzura.htmlより)
「葛」は、
くず、
かずら、
つづら、
と訓ませるが、
くず、
と訓むと、秋の七草の「くず」であり、
つづら、
と訓ませると、
ツヅラフジなどの野生の蔓植物の総称、
だが、
ツヅラフジの別称、
でもある(動植物名よみかた辞典)。
かずら、
と訓ませると、
蔓性植物の総称、
とある(仝上)。「つづら」の語源は、
綴葛(つらつら)の約にて、組み綴るより云ふかと云ふ(大言海)、
連続の意のツラツラの略(類聚名物考)、
ツヅクカヅラの略(日本釈名)、
クスカツラの略(和訓栞)、
と形状からきているようだ(日本語源大辞典)。
「九十九折」は、
葛折、
とも当てるように、
ツヅラフジの蔓のように幾重にも折れ曲がっている意、
で、
羊腸小径(ようちょうしょうけい)、
斗折蛇行(とせつじゃこう)、
という言い方もする(https://sanabo.com/words/archives/2001/06/post_360.html)。
蔓が木にからんだように折れているところから(名語記)、
ツヅラの蔓のように折れ曲がる意(大言海)、
という解釈が一般的だが、
ツラツラオリの略(類聚名物考)、
ツツラヲリ(継連折)の義(言元梯)、
ツツは登れぬさまを言う語。オリは降りる意。登ろうとしてはうしろへおりてしまう坂であるところから(松屋筆記)、
等々もあるが、「つづら」の形状との類似と見るのが自然だろう。
「葛籠」は、
「元々はツヅラフジのつるが丈夫で加工しやすいことから、つる状のものを編んで作る籠のことを材料名から葛籠と呼んでいたようである。原材料が変化しても呼称だけは残り、葛籠という字が当てられたまま「つづら」と呼ばれるに至っている」
のだ(https://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%91%9B%E7%B1%A0)が、
つづらこ(葛籠)、
といったものの約と見ていい(大言海・俗語考)。
ところで、「ツヅラフジ」に当てる、
葛藤、
は、
カットウ、
とも訓ませる。これは、
葛(かずら)やふじ(藤)のつるがもつれからむ、
ことから、
もつれ、悶着、
の意から、
心の中の違った方向あるいは相反する方向の力があって、その選択に迷う状態、
心理的葛藤、
の意になる。仏語では、
正道を妨げる煩悩のたとえ、
禅宗では、
文字言語にとらわれた説明、意味の解きがたい語句や公案、あるいは問答・工夫などの意、
にも、用いる(デジタル大辞泉)。
参考文献;
大槻文彦『大言海』(冨山房)
前田富祺編『日本語源大辞典』 (小学館)
ホームページ;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm
コトバの辞典;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/kotoba.htm#%E7%9B%AE%E6%AC%A1
スキル事典;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/skill.htm#%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%AB%E4%BA%8B%E5%85%B8
書評;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/critic3.htm#%E6%9B%B8%E8%A9%95
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