2019年10月27日

海馬


「海馬」は、

かいば、

と訓む。中国語である。字源には、

たつのおとしご、
にんぎょ、

の意味が載る。「にんぎょ」は、

儒艮(じゅごん)、

の意と載る。大言海も、

たつのおとしご、
せいうち、

と載せる。しかし、広辞苑には、

Sea-horseの訳、

として、

セイウチ、およびトドの別称、
タツノオトシゴの別称、
ジュゴンの誤称、
Hippocampus 脳の内部にある古い大脳皮質の部分。その形がギリシャ神話の神ポセイドンが乗る海の怪獣、海馬(ヒポカンポス)の下半身に似ているのでこの名がある、

と載る。脳の海馬の由来はここにあるが、精選版 日本国語大辞典は、「うみうま(海馬)」は、

たつのおとしご(龍落子)の異名(物類称呼(1775))、
海産の大きなカメ。うみぼうず。あおうみがめ(大和本草批正(1810頃))、

とし、「かいば(海馬)」を、

魚「たつのおとしご(龍落子)の異名(山槐記・治承二年(1178))、
セイウチ(海象」の異名(南島志(1719))、
大脳辺縁系で古皮質に属する部位、

と分け、脳の海馬は「断面の形がタツノオトシゴに似る」としている(時実利彦・脳の話)。これは、動植物名よみかた辞典によると、

海馬(アシカ) アシカ科の動物の総称、
海馬(ウミウマ) ヨウジウオ科の海水魚。タツノオトシゴの別称、
海馬(トド)  アシカ科の海獣、

とあるので、「海馬」を、アシカと訓ませたりするのは、トドを含めたアシカ科の総称だから、ということになる。ただ、脳の「海馬」は、一般には、ヒポカンポスに似るとされるが、日本人からは、タツノオトシゴに似ていると見える、ものらしい。

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William-Adolphe_Bouguereau_(1825-1905)_-_Arion_on_a_Sea_Horse_(1855).jpg

(ウィリアム・アドルフ・ブグローの描いたヒッポカムポス https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%92%E3%83%83%E3%83%9D%E3%82%AB%E3%83%A0%E3%83%9D%E3%82%B9より)


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(海馬。図の左側が前頭葉、右側が後頭葉 https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%B5%B7%E9%A6%AC_(%E8%84%B3)より)


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で、「海馬」は、

「かいば」「うみうま」と訓んで、タツノオトシゴ、
「かいば」と訓んで、セイウチ、
「かいば」「とど」と訓んで、トド、
「あしか」と訓んで、アシカ科(アシカ、オットセイ、トド等を含み、アザラシやセイウチ等を含まない)の総称。または、アシカ、
「かいば」と訓んで、ジュゴンの誤称、
「かいば」と訓んで、ヒッポカムポス - ギリシア神話に登場する半馬半魚の架空の生物、それに準えて脳の海馬、

と、読み分けられている。脳の「海馬」は別にすると、「海馬」は、

「ウマのような大きな海産動物の意。セイウチ(海象)、アシカ(海驢)、ジュゴン(儒艮)にも用いられるが、最近は胡櫞にかえてトドの漢名として定着しつつある。タツノオトシゴの異名でもある」

というのが落としどころらしい(日本大百科全書)。

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ついでながら、「海」の付く生き物を挙げてみると、「海象」は、

せいうち、
かいぞう、
かいしょう、

と訓ませ、「セイウチ」のこと。「海豹(カイヒョウ)」は、

アザラシ、

と訓ませる。

水豹、

とも当てる。「海豚」(カイトン)は、

イルカ、

と訓ませる。イルカhttp://ppnetwork.seesaa.net/article/465062520.htmlについては触れた。「海狸」(カイトン)は、

ウミダヌキ、

と訓ませ、ビーバーの別名。「海狗」(カイク)は、「おっとせい(膃肭臍)」の異名。「海獺」(カイタツ)は、

猟虎、
獺虎、

とも言い、ラッコだが、

うみうそ、
うみおそ、

ともいい、「アシカ」の異称でもある。「海星」は、

人手、

とも当て、「ヒトデ」と訓ませる。「海月」は、

水母、

とも当て、「クラゲ」と訓ませる。「アシカ」は、

海馬、

とも当てるが、

海驢、
葦鹿、

とも当てる。アイヌ語由来とある。「海胆」は、

ウニ、

と訓ませるが、

雲丹、
海栗、

とも当てる。「海扇」

ほたてがい、

と訓ませる。

帆立貝、

とも当てる。「海鷂魚」は、

鱏、
鱝、
鰩、

とも当て、「エイ」と訓ませる。「海鞘」は、

ほや、

と訓ませる。やれやれ、めんどくさい。

参考文献;
大槻文彦『大言海』(冨山房)
簡野道明『字源』(角川書店)

ホームページ;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm
コトバの辞典;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/kotoba.htm#%E7%9B%AE%E6%AC%A1
スキル事典;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/skill.htm#%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%AB%E4%BA%8B%E5%85%B8
書評;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/critic3.htm#%E6%9B%B8%E8%A9%95

posted by Toshi at 04:55| Comment(0) | 言葉 | 更新情報をチェックする