2019年11月02日


「酢」は、

す、

と訓ませるが、漢字「酢」(サク、漢音ソ、呉音ス)は、

「形声。『酉+音符乍』。醋(月日を重ねて発酵した汁をねかせておく)と同じ」

とある(漢字源)。「醋」(サク、漢音ソ、呉音ス)も、

「会意兼形声。『酉+音符昔(日を重ねる)』で、月日を重ねて、発酵した汁を寝かせておくこと」

とある(仝上)。「酢」も「醋」も、「す」「すっぱい液体」の意である。大言海は、「す」に、

酢、
醋、

を当てている。和名抄には、

「酢、字亦作醋、須」

とあり、「須」とも当てたらしい。「酸」も、「す」と訓まれた(たべもの語源辞典)、とある。

酢という漢字の成り立ち.gif

(「酢」の成り立ちhttps://okjiten.jp/kanji1882.htmlより)


別に、

「会意兼形声文字です(酉+乍)。『酒器』の象形と『木野小枝を刃物で切り除く』象形(『作る』の意味・『組』に通じ(「組」と同じ意味を持つようになって)、「積み重ねる」の意味)から、『酒を皿に作って、「す」にする』、『す』、『客が主人に酒をすすめる(返杯する)』を意味する『酢』という漢字が成り立ちました」

ともあるhttps://okjiten.jp/kanji1882.html。「酢」「醋」ともに、「むくいる」意があり、「客が主人に盃をすすめる(返す)」意となる。この逆は、「献」で、主人が客に酒をすすめる言葉になる。

「酢」は、古くから調味料として使われ、

「『万葉集』にも『醤酢(ひしおす)』として酢が出てくる。酒造技術とともに中国よりもたらされた調味料で、地帯化の改新時(645)には酢を作る役人ができ、平安時代には米からの製造技術が生まれ…江戸時代には…米酢が作られるようになった」

とある(たべもの語源辞典)。古くは、

からざけ(辛酒)、

と呼ばれた(仝上、大言海)。和名抄には、

「酢、…鄙語、謂酢為加良佐介」

とある。

大言海は、「す(酢)」の語源を、

「スガスガシ、スズシの意」

とする。たべもの語源辞典も、

「スという音は、清(スガ)という意味からつけられたもので、その味が清酸であることによって、スと名付けられた。中国では苦酒(くしゅ)と書かれた」

とする。語源由来辞典は、

「口に含んだときにスッとする感覚の『す』であろう。『すずしい』や『すがすがしい』の『す』を語源とする説もあるが、口に含んだ時の感覚を『すがすがしい』や『すずしい』と形容した 説なので、ひとまとめにスッとする感覚と捉えて良いであろう」

と、「すがすがしい」を「スッ」とする感覚でまとめている。

日本語源広辞典は、

すし(酢し)の語幹、

とするが、「酢し」自身が、「す(酢)」を前提にしているので、前後が逆ではあるまいか。しかし、

スシ(酸)の義(言葉の根しらべの=鈴木潔子)、
朝鮮語suil、満州語zuなどに由来するか(衣食住語源辞典=吉田金彦)、

と同種の説は少なくない。岩波古語辞典が、

朝鮮語sïと同源、

とするが、この是非は判別できない。その他、

スク(透)の反(名語記)、
肉などにかけると縮まり、また人が吸うと口がスボルところからスボムルの義(和句解)、
物事の落ちつくさまをしめす語根スから。酒の浮遊物が落ちついてできた清い液の義(国語の語根とその分類=大島正健)、
「酒」を口にしたときに、酸っぱくなっていて思わず口を「窄(すぼ)めた」から(http://www.marukan.com/health/sub/kotoba.html)、

等々あるが、語感からいうと、たしかに、「スッ」とする感覚というのが妥当に思える。

酢屋.jpg

(酢屋・人倫訓蒙図彙より https://www.benricho.org/Unchiku/edo-syokunin/01jinrinkinmo/11.htmlより)


酢が調味料として一般に広まったのは江戸時代、

「お酢の製法が全国各地に広まり、それとともにお酢をつかった料理もたくさん生まれました。 はじめてお寿司が生まれたのもこの頃。ごはんに酢を混ぜて押し寿司にする『早ずし』と呼ばれるものです。幕末になると、『にぎり寿司』や『いなり寿司』が誕生し、庶民にも大変な人気だった」

そんな江戸時代、「酢屋」の看板がなかなかユニークだった。

「小竹を編んだもの、つまり簀(す)を軒先に掛け、酢に通じさせたともいう。古いものでは、酢売りの瓶の絵を買いて示した。また、木片を丸くした曲物の輪をぶら下げた。これは的をねらって矢を射ても通り抜けてしまう。つまり素矢(すや)という意を表して酢屋に通わせた」

とある(たべもの語源辞典)。

参考文献;
清水桂一『たべもの語源辞典』(東京堂出版)
前田富祺編『日本語源大辞典』 (小学館)

ホームページ;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm
コトバの辞典;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/kotoba.htm#%E7%9B%AE%E6%AC%A1
スキル事典;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/skill.htm#%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%AB%E4%BA%8B%E5%85%B8
書評;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/critic3.htm#%E6%9B%B8%E8%A9%95

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posted by Toshi at 04:51| Comment(0) | 言葉 | 更新情報をチェックする