2019年11月03日


「巣(巢)」は、

鳥・獣・蒸しなどの住処、

を指すが、ほかに、

窼、
栖、

とも当てる。

キジバトの巣.jpg

(キジバトの巣 https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%B7%A3より)

「巣(漢音ソウ、呉音ジョウ)」は、

「会意。『鳥のすのかたち(のち西と書く)+木』で、高い木の上の鳥のすのこと。高く浮いて見える意を含む」

とある(漢字源)。「栖」(漢音セイ、呉音サイ)は、

「会意兼形声。西は、ざる状をした鳥のすを描いた象形文字。栖は『木+音符西』で、ざるの形をした木の上の鳥のす」

とある(仝上)。「窼」(カ)も「鳥の巣」、

「穴中にあるを窼、樹上にあるを巣といふ」

とある(字源)ので、「巣」「栖」「窼」は、ともに、もともと鳥の巣を指していた、とみられる。

巣の字の成り立ち.gif



和語「す」は、

住居(スマヒ)を占むる意、

とある(大言海)。これだと意味が定かではないが、

「本来の一音節語ス(鳥の巣)です。あきス、ふるス、スむ、スまう、スごもる、などと同根と思われる」

とある(日本語源広辞典)と、照らし合わせると、腑に落ちてくる。

スミカ(栖)の義(日本釈名・和訓栞)、

も同趣である。とするなら、逆に、

スム(栖・住)の義(和句解・言元梯・言葉の根しらべ=鈴江潔子)、
スム(住)の語根スが名詞に転じた語。スは、物事の落ちつくさまを示す(国語の語根とその分類=大島正健)、

と、「すむ」が先にある、と見る方が妥当に思えてくる。

「すむ」は、

住む、
棲む、
栖む、

と当て、

「スム(澄む)と同根。あちこち動き回るものが、一つ所に落ち着き、定着する意」

とあり(岩波古語辞典)、「すむ(澄)」は、

清む、
済む、

と当て、

「スム(住)と同根。浮遊物が全体として沈んで静止し、気体や液体が透明になる意。濁るの対」

とある(仝上)。当然、「住む」は、「巣」とかかわらせて、

巣から出た動詞か(小学館古語大辞典)、

等々という説もあるが、日本語源大辞典は、

「『巣』『住む(棲む)』『据う』、さらに…『澄む』の語幹スには、『ひと所に落ち着く』といった共通の意を読み取ることが可能である」

とし、そこから、

落ちつく意の語感スから出た語(国語の語根とその分類=大島正健)、

という説にも通じ、その「落ちつく」は、

「『終わる』『かたづく』ことであるとも考えられるから、『すむ(済む)』の語幹ともなった」

と考えられる、としている。

つまり、「住む」「澄む」はほぼ同じ意味の外延に入り、「澄む」もその端につながる。とすると、「住む」の「す」が先か、「巣」の「巣」が先かは定かではないが、日本語源広辞典のいう、「す」の持つ意味の広がりの中に、「巣」も「住む」も「澄む」も「済む」も入るということができる。

その意味で、「巣」の語原に、

スキ(透)の義か(名言通)、

も的を外してはいないのである。

ちなみに、

「平安時代の声点を見てみますと『スクフ(巣)』のスの声点は去声になっていて、『スム(住)』のスが平声、『スク(透)』のスが上声であったのとはアクセントが違い、区別されていた(類聚名義抄四種声点付和訓集成)ことが判ります。『巣』と同じ去声のスの声点が付けられているのは『簀』『スロ(棕櫚)』ですね。棕櫚は南九州原産の植物で、枕草子にも出て来るので『スロ』が和語である蓋然性もあり、『ロ』が『カブラ』の『ラ』のような接尾辞とすれば本体は『ス』になるので、あるいは『ス(巣)』の原義は棕櫚だったのではないかとも思われます」

との説https://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q12162627907もあるが、それよりも、「す」がアクセントで区別して使われていたことは、注目される。文字を持たない時代の、会話の名残と見ていい。

参考文献;
前田富祺編『日本語源大辞典』 (小学館)
大槻文彦『大言海』(冨山房)

ホームページ;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm
コトバの辞典;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/kotoba.htm#%E7%9B%AE%E6%AC%A1
スキル事典;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/skill.htm#%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%AB%E4%BA%8B%E5%85%B8
書評;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/critic3.htm#%E6%9B%B8%E8%A9%95

ラベル:栖む 棲む 住む
posted by Toshi at 04:44| Comment(0) | 言葉 | 更新情報をチェックする