2019年11月04日
スカ
「スカ」は、
当てが外れること、
見当違い、
(籤などの)はずれ、
へま、
の意で、
すかまた、
ともいう。ただ、「すかまた」は、
当ての外れること、
見当違い
意のほか、
まのぬけたこと、
すかたん、
の意もある。なお、
「類義語にスカタン(スコタンとも)・スカマタがあり、前者は上方語、後者は江戸語とみられる」
とある(日本語源大辞典)が、江戸語大辞典には、「すかまた」は、
芝居用語、
とあり、
透脵、
と当て、
間違い、見当違い、へま、
当て外れ、
の意が載る。
「すかたん」(http://ppnetwork.seesaa.net/article/455401916.html?1512678172)で触れたように、「すかたん」は、
あてのはずれること,だまされること,また,まちがい,の意の他に、
見当違いのことをした人をののしって言う、
のにも用いる。「すかたん」の「たん」は「すか」に付けた接尾語とみえる。
大言海は,「すかたん」の項で,
「賺(すか)されたる意」
とあり,
くひちがふこと,欺くこと,待ちぼうけること,すかを喰はすこと(だしぬく),
とある。「食い違い」が原意に見える。つまり,「食い違い」が思惑の違いなら,「当て外れ」になるし,意図的なら,「だまされる」となる。さらに,何らかの基準に外れるなら,「間違い」になる。それを人に当てはめれば,「当て外れ」は期待外れ,になり,「へま」「すか」にも転ずる。この「すか」は,はずれくじやはずれ馬券などに使う「すか」でもある。それを人に当てはめれば,罵りに転ずるはずである。しかし,どこか,罵倒にはならないのは,天に唾するようなもので,期待した自分に返ってくるからである。
そして,『大言海』は,『名言通』を引く。
「鶍〔いすか〕,(鳥名)行過ぐるなり,行過ぐるは,その嘴の上下,嚙(く)ひ差ふを云ふ。俗,スコタンなど云ふ。スコも同じ。スコタン或は,スカタンとも云ふ。又,スヤスとも,ソヤスと云ふ。皆,轉なり」
どうも、ちょっと付会ではあるまいか。
「スカ」は、
すかす(透・空)の語幹、
のようである(日本語源広辞典・日本語源大辞典・江戸語大辞典)。
「すかす」(http://ppnetwork.seesaa.net/article/455423106.html)で触れたように、
賺す、
と当てる「すかす」は、
他人の心に透きをいれる(日本語源広辞典)、
他の用心に透きあらしむる意(大言海)、
他の心に,隙を生ぜしむ(岩波古語辞典)、
となる。その語幹「すか」は、
「もともとは大阪の駄菓子屋から来ています。『すか』は『すかし』という意味からきているそうです」
とある(https://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q128435442)が、江戸語大辞典に載り、どうやら、字義通り、
すきま、
空(くう)、
というのが原義のようである。それが、それをメタファに、
当て外れ、
肩透かし、
の意になり、さらに、
籤などの外れ、
の意となったもののようである。吉原詞で、
すかや、
は(「や」は詠嘆の終助詞)、
好かん、
好かない、
意で使われ、
スカを食う、
と使うと(「スカマタを食う」「すかたんを食う」とも言う)、
当て外れ、
肩透かしを食わされる、
裏をかかれる、
意で使った(「名古平蹴倒そうとするを切平身をかはし、名古平スカを食らって雪に辷ろうとして」元治元年・曽我綉侠御所染)。なお、「スカ」の語源について、
「弓で、的を射そこなうさまをスカという。関係があるか」
とある(日本語源大辞典)。
「すかすか」という言い方があるが、今日の、
隙間だらけ、
の意ではなく、「すかと」を、
「高いところを超えて通るさま、矢で的を意損なう様」
と室町末期の『日葡辞書』は書くので、当時の、
すっかりと、
すかりと、
が同義で、
高いところを通るさま、
矢で的を射そこなうさま、
と意味が重なる(日葡辞書)。「透かす」の意味に、
間をあける、
間引く、
透けるようにする、
意と並んで、
的を外す、
意があるので、やはり「すかす」の「すか」と関わるとみていい。
参考文献;
前田勇編『江戸語大辞典 新装版』(講談社)
山口仲美編『擬音語・擬態語辞典』(講談社学術文庫)
大野晋・佐竹 昭広・ 前田金五郎編『古語辞典 補訂版』(岩波書店)
前田富祺編『日本語源大辞典』 (小学館)
ホームページ;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm
コトバの辞典;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/kotoba.htm#%E7%9B%AE%E6%AC%A1
スキル事典;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/skill.htm#%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%AB%E4%BA%8B%E5%85%B8
書評;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/critic3.htm#%E6%9B%B8%E8%A9%95