2019年11月05日
洲
「洲」は、
州、
とも当てる。「州」(シュウ)は、
「象形文字。川の中になかすのできたさまを描いたもので、砂地の周囲を、水が取り巻くことを示す。欠け目なく取り巻く意を含む」
とあり、「砂がたまって水面に出た陸地」「す」の意味であり、「洲」(シュウ)は、
「会意兼形声。州は、川の流れの中のなかすを描いた象形文字。洲は『水+音符州』」
とあり、「川の中の小島」「なかす」の意である(漢字源)。ただ、
「本来は州が中州を意味したが、州が行政区画も意味するようになったので、さんずいを加えて中州の意味を明らかにした字が洲である。しかし、古くから互いに通用できる」
とある(https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%B7%9E)。
「洲」は、
水流に運ばれた土砂が堆積して、河川・湖・海の水面に現れたところ、
であり(広辞苑)、
「河口付近などの比較的浅い場所にできる」
とある(デジタル大辞泉)。
砂洲、
とか
中の島、
とか
中洲、
と言ったりする。和名抄に、
「洲、水中可居者曰洲…四方皆有水也、須」
とある(岩波古語辞典)。
大言海は、「洲」を、
「巣、栖と通ず、人の住む所を云ふと云ふ。或いは云ふ、清(スガ)の義。沙に汚泥無きを云ふと、或いは云ふ、洲(シウ)の音の約なりと」
と並べて、確言していない。「巣」(http://ppnetwork.seesaa.net/article/471317902.html?1572723897)で触れたように、「巣」の「ス」と、「住む」の「ス」と、「澄む」の「ス」、「済む」の「ス」は同根で、「すむ」は、
住む、
棲む、
栖む、
と当て、
「スム(澄む)と同根。あちこち動き回るものが、一つ所に落ち着き、定着する意」
であり(岩波古語辞典)、「すむ(澄)」は、
清む、
済む、
と当て、
「スム(住)と同根。浮遊物が全体として沈んで静止し、気体や液体が透明になる意。濁るの対」
である(仝上)。で、「住む」は、「巣」とかかわり、
「『巣』『住む(棲む)』『据う』、さらに…『澄む』の語幹スには、『ひと所に落ち着く』といった共通の意を読み取ることが可能である」
とし(日本語源大辞典)、そこから、
落ちつく意の語幹スから出た語(国語の語根とその分類=大島正健)、
という説にも通じ、その「落ちつく」は、
「『終わる』『かたづく』ことであるとも考えられるから、『すむ(済む)』の語幹ともなった」
と考えられる、としている(仝上)。その意味で、「洲」も、流れ来った砂が、
ひと所に落ち着く、
と共通する意味が読み取れなくもない。
巣の義か(本朝辞源=宇田甘冥)、
動くものの落ちつくさまを示す語根スから(国語の語根とその分類=大島正健)、
も同じ説を採る。もちろん異説も、
「洲」の音シウの反(名言通・和訓栞・言葉の根しらべの=鈴木潔子)、
砂に汚泥が無いところからスガ(清)の義(箋注和名抄)、
清くて、気がスイとするものであるところから(本朝辞源=宇田甘冥)、
スナ(砂)の義(言元梯)、
スヒヂ(沙土)・スナゴ(砂子)などスと同源、砂と通じる意を持つ(角川古語大辞典)、
スヱ(末)の義か(和句解)、
水が浅く蘆が生えたところをいうアセフ(涸生)の義(日本語原学=林甕臣)、
等々あるが、「巣」の「ス」と、「住む」の「ス」と、「澄む」の「ス」、「済む」の「ス」と意味の共通する外延の中の、
ひと所に落ち着く、
意の「ス」のつながりに、「洲」もあるとみるのが妥当ではあるまいか。
参考文献;
大槻文彦『大言海』(冨山房)
前田富祺編『日本語源大辞典』 (小学館)
ホームページ;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm
コトバの辞典;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/kotoba.htm#%E7%9B%AE%E6%AC%A1
スキル事典;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/skill.htm#%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%AB%E4%BA%8B%E5%85%B8
書評;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/critic3.htm#%E6%9B%B8%E8%A9%95