2019年11月08日


「膳」は、

料理、調菜の具はりたるもの、

の意で、

膳部、
御膳、

の意であり、転じて、

食事の器を載する盤、即ち折敷(おしき)、脚あるものをも云ふ、

とある。室町末期の日葡辞書には、

ゼンヲハス(据)ユル、

と載る(大言海)。

食膳、

である。さらに、

一膳飯、

というように、

椀に盛った食物(特に飯)を数える、

のに使い、さらに、

塗箸一膳、

というように、

箸二本を一対ちとして数える、

のにも使う(広辞苑)。さらに、

膳夫、

というように、「膳」を、

カシハデ、

と訓ませ、

供膳、
饗膳、

の意であるが、

饗膳を司る人、

の意にも使う(漢字源)。「かしわで(膳・膳夫)」は、

古代、カシワの葉を食器に用いたところから、

いう(デジタル大辞泉)が、

中世、寺院で食膳調理のことをつかさどった職制、

に転じ、

供膳、
饗膳、

の意となる。「かしはで」は、

膳部、

と当てると、

大和朝廷の品部(しなべ)で、律令制では宮内省の大膳職・内膳司に所属し、朝廷・天皇の食事を調製を指揮した下級官人、

である(広辞苑)。なお、この意味の変転は、

「律令制下の大膳職(だいぜんしき),内膳司(ないぜんし)あるいは《延喜式》にみられる膳部(かしわでべ)などが飲食をつかさどる官名であることによっても知られるように,膳は本来,料理や食事そのものをさす言葉であったが,しだいに食事をそなえた盤,台の類を意味するようになり,やがてそれが転じて食台一般をさすようになったとされる。その時期はつまびらかでないが,1295年(永仁3)以降の成立とされる《厨事類記(ちゆうじるいき)》には,膳と食台とをなお明確に区別しており,膳が食台を意味するようになるのは,本膳料理が儀礼の料理として完成する南北朝以後であると考えられる」

とある(世界大百科事典)。

漢字「膳」(呉音ゼン、漢音セン)は、

「会意兼形声。善は『羊+言』の会意文字で、ゆったりとゆとりがある意、もと亶(セン ゆったりと多い)と同系のことば。膳は『肉+音符善』で、いろいろとゆたかにそろえた食事。転じておいしいごちそうをいう」

とある(漢字源)。「膳」は中国語である。「ごちそう」の意以外は、日本だけで使う用例である。

別に、「膳」の字について、

「会意兼形声文字です(月(肉)+善)。『切っ多肉』の象形と『羊の首の象形と、取っ手のある刃物の象形と口の象形×2(原告と被告の発言の意味))(羊を神の生贄とし、両者がよい結論を求めるさまから、『よい』の意味)から、よい肉を意味し、そこから、『供え物』、『供える』、『すすめる』を意味する『膳』という漢字が成り立ちました』

ともあるhttps://okjiten.jp/kanji2186.html

という字膳.gif



この方が、端緒の由来の説明になっているのかもしれない。

食膳としての「膳」は、

「日本料理独特のもので,古く平安時代から食事の際に使われた。種類も今日の食卓と同じような大きな4脚つきの台盤 (だいばん) ,1人用の懸盤 (かけばん) ,1人用で脚のない折敷 (おしき) ,あるいは高い脚のある皿様の高坏 (たかつき) などがあった。これらは主として会食用として用いられ,膳の上の食物の配置なども決められていた。この風習は近年まで伝えられ,1人用の膳は懐石料理,本膳料理などに欠かせないものとなっている」

とある(ブリタニカ国際大百科事典)

膳浮世絵に見る.jpg

(広重「木曽街道六十九次」宿屋の膳 http://www.21j.jp/freek69/より)


「膳」は、「折敷」http://ppnetwork.seesaa.net/article/470985757.htmlの発展形らしい。1200年ほど前の平城京跡から出土した食器や食具の中に、ひのきで作られた折敷(おしき)が発見されている。平安時代になると、

「貴人達は高杯(たかつき)を用いるようになります。折敷の四方に、宝珠形の穴をくり抜いた台をつけた衝重(ついかさね)が出てくるのもこの時代です。宴会の場合は案や机を用い、スツールに坐ることもありました。室町時代になると、衝重は三方とか供饗(くぎょう)と呼ばれるようになり、 折敷に足をつけた脚打ち折敷が生まれ、それが膳の原形となります」

とあるhttp://www.komenet.jp/bunkatorekishi06/37.html

「わが国では古くから檜(ひ)の片木板(へぎいた)を折り曲げてつくった折敷(おしき)、木具(きぐ)、三方(さんぽう)、懸盤(かけばん)などの曲物(まげもの)の角膳が使われていた。膳は折敷の変化したもので、食器をのせる盤台を膳とよぶようになったのは、のちに挽物(ひきもの)や指物(さしもの)の盤台が使われるようになってからであろう。木地師が木地をひいてつくる挽物膳は、丸膳とか木地膳とよばれる。スギ、ヒノキなどを材料とし漆を塗って仕上げる指物膳には、四足膳、両足膳、平膳、箱膳などの種類がある。四足膳は盤の四隅に足をつけたもので、この足の形によって蝶足(ちょうあし)膳(内朱外黒の漆塗り、祝儀用)、宗和足(そうわあし)膳(茶人金森宗和好みの内外朱または黒漆塗り、客用)、猫足(ねこあし)膳・銀杏足(いちょうあし)膳(ともに黒漆塗り、略式)などがある。二つ割りにしたクルミの殻を足とした胡桃足(くるみあし)膳は下人用であった。足なしで会席に用いる会席膳は、明治以降一般家庭で客膳として使用された。蓋(ふた)付き箱形の箱膳は、かつては町家や農家で普段の膳として広く使用され、家族各人がそれぞれ自分のものをもっていた。中に1人分の食器を入れておき、蓋を裏返して盤とし、その上に食器を並べて食事をする。食後はふきんでぬぐって食器を中に納める」

とある(日本大百科全書)。本来,料理や食事そのものをさす「膳」が、食事をそなえた盤,台の類を意味するようになる経緯は、はっきりしないが、

「1295年(永仁3)以降の成立とされる《厨事類記(ちゆうじるいき)》には,膳と食台とをなお明確に区別しており,膳が食台を意味するようになるのは,本膳料理が儀礼の料理として完成する南北朝以後であると考えられる」

とある(世界大百科事典)。

参考文献;
藤堂明保他編『漢字源』(学習研究社)
増井金典『日本語源広辞典』(ミネルヴァ書房)

ホームページ;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm
コトバの辞典;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/kotoba.htm#%E7%9B%AE%E6%AC%A1
スキル事典;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/skill.htm#%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%AB%E4%BA%8B%E5%85%B8
書評;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/critic3.htm#%E6%9B%B8%E8%A9%95

posted by Toshi at 04:52| Comment(0) | 言葉 | 更新情報をチェックする