2019年11月25日

みやげ


「みやげ」は、

土産、

と当てる。

ミアゲ(見上げ)の転、

とあり(岩波古語辞典、広辞苑)、

見上げ、

の項で、

ミヤゲの古形、

とあり、

よく見、えらんで、人に差し上げる品物、

とある(岩波古語辞典、広辞苑)。

しかし、日本語源大辞典は、

「『見上げ』の転といわれるが、『みあげ』『みやげ』の前後関係は明らかでなく、したがってその語源もはっきりしない」

と否定的である。「見上げ」とは、

上の方に視線を注ぐ、仰ぎ見る、

意で、そのメタファで、

人物・力量などが優れていると認める、

意であり、名詞としては、

まびさし、

つまり、

兜の鉢の前方から。庇のように出て、額を深く覆うもの、

と、やはり、「見上げる」に関わる言葉である。それと、

お土産、

の「みやげ」とのつながりははっきりしない。大言海は、

「都笥(ミヤコケ)の義。宮倉(ミヤケ)より都へ持って上がれる由にて、云へるにかと云ふ」

とする。

ミヤケ(宮笥)の義か(志不可起)、
ミヤケ(宮倉)の義か(三余叢談)、
ミヤケ(都帰)の義(言元梯)、
ミヤコケ(都笥)の義(日本釈名・国語の語根とその分類=大島正健・日本語源広辞典)、

も、ほぼ同趣旨とみられる。日本語源広辞典は、

宮(伊勢神宮)+ケ(筐)、

とする代参の御礼の意、とする説も載せるが、同趣の説を、

「寺社仏閣を参詣した証拠の品として、神札などの授かりものを故郷に持ち帰るのが、おみやげの原初的な形態。伊勢神宮で購入された神札「神宮大麻」もおみやげの元祖のひとつ」

と載せる(https://jisin.jp/life/living/1658791/)ものもある。

しかし、「土産」を、

ドサン、
あるいは、
トサン、

と訓ませると、

土地の産物、

の意であり、

みやげ、

の意もある。この「土産(ドサン)」は、中国語である。宋史・張齊賢傳に、

「齊賢詢知云々、虔州土産銅鐵鉛錫之數」

遼史・食貨史に、

「太平初幸燕、燕民以年豊、進土産珍異、上禮高年、恵鰥寡、賜酺連日」

とある(大言海)。「土産」は、「どさん」と訓んで、

土地の名産、

の意で用いていたので、「みやげ」とは別の言葉であった。「みやげ」の意では、万葉集の大伴家持の歌に、

家苞に貝そ拾へる浜波はいやしくしくに高く寄すれど

と、「家苞(いへづと)」という言葉があった。「家苞」は、

家へ持ち帰る「みやげ」であった。「みやげ」の言葉の由来は、どうも明確ではないが、「土産」に当てられたのは、

「『易林節用集』に『土産』の訓として『ミヤゲ』『ドサン』があり、『日葡辞書』には、『ミヤゲ』『トサン』に同様の語釈が施されていることなどから、『とさん』と混用され、『みやげ』に『土産』の字を当てるようになったのは室町末期以降と考えられる」

というところのようである(日本語源大辞典)。

「土産」は、

土産物の略、

ともある(諸橋大漢和)ので、たとえば、

「『旅先で求めて持ち帰る、その土地の産物』をミヤゲモノ(土産物)という。その語源は、モチカヘリアゲルモノ(持ち帰り上げる物)で、その省略形ノモチアゲモノが、モチ[m(ot)i]の縮約で、ミアゲモノになり、『ア』に子音[j]が添加されてミヤゲモノになった」

という音韻変化を辿る(日本語の語源)のも正攻法かもしれない。

参考文献;
大野晋・佐竹 昭広・ 前田金五郎編『古語辞典 補訂版』(岩波書店)
前田富祺編『日本語源大辞典』 (小学館)
田井信之『日本語の語源』(角川書店)

ホームページ;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm
コトバの辞典;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/kotoba.htm#%E7%9B%AE%E6%AC%A1
スキル事典;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/skill.htm#%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%AB%E4%BA%8B%E5%85%B8
書評;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/critic3.htm#%E6%9B%B8%E8%A9%95

ラベル:土産 みやげ
posted by Toshi at 05:14| Comment(0) | 言葉 | 更新情報をチェックする