2019年11月26日
點心
「點(点)心(てんしん)」は、
てんじん、
とも訓む。中国語である。
あひだぐひをする、
の意で、河東記に、
「板橋三娘子、置新作焼餅干食牀上、與客點心」
とある(字源)。また、転じて、
其の食物、菓子の類、
ともあり(仝上)、輟畊(てつこう)録に、
今以早飯前及午前後小食為點心、
とある(仝上)。つまり、
早飯前と飯後・午前・午後に食べる小食のこと、
であり、どうやら、
一時の空腹をいやすための少量の食事、
のことである(たべもの語源辞典)、らしい。中国の食事は、大きく分けて、
飯(主食),
菜(副食),
湯(スープ)、
点心(間食,小食)
となる(世界大百科事典、https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%82%B9%E5%BF%83)。「点心」は、
ツァイ(菜,料理の意)に対するもので,麺(めん)類,シューマイ,ギョーザなどの軽食や菓子、
をいう(百科事典マイペディア)が、「点心」は、
鹹(かん)点心(塩味),
甜(てん)点心(甘味),
小食(鹹,甜以外のもの),果物
に、分類される(世界大百科事典)、という。「点心」は、解釈が多く、たとえば、
「めん類,ギョーザなどは,食べる時により飯になったり点心になったりする」
ので、食べる時間帯によって
早点(朝御飯)
午点(おやつ)
晩点(夜食)
となる(https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%82%B9%E5%BF%83)が、
間食,非時の食,小食、
としておくのがいいようである(仝上)。
「点心」という名前は
「禅語『空心(すきばら)に小食を点ずる』からきたという説や、心に点をつけることから心に触れるものと言う説がある。明確な定義はないが、食事の間に少量の食物を食べることなので、菓子や間食、軽食の類いは全て点心と呼ばれる。中国の朝食は点心ですまされる事が多い」
とあり(https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%82%B9%E5%BF%83)、間食や軽食をさすという意味では、
茶の湯の料理である懐石も,本来は同義、
と考えられる(百科事典マイペディア)。
日本には室町時代に伝来し、朝食と夕食の間に食べる箸休めの品とされ、
「『間食』の意に用いられる語となった」(たべもの語源辞典)
が、当時は1日2食が普通だったので、朝と夕の間、と幅が広い。
『七十一番職人尽歌』(室町時代)だと、
饅頭を点心とよんでいる、
とある(たべもの語源辞典)。「点心」は、
「字義は、胸に点ずるという意味で、僅かなものをすすめるということで、茶のこ、茶うけなどといい、小食をとることと同じ意味」
である(仝上)。『庖丁聞書』(16世紀後半)、『禅林小歌』(応永年間(1394~1427))には、
点心とは、腹心に点加する意であり、禅家では、昼食の意に用いるようになる、
とあり、『浮世草紙』(元禄期)には、
「侍は中食といひ、町人は昼食といひ、寺がたは点心と云、道中はたご屋にては昼息といひ」
とあり、「点心」は、どうやらこの時期、
昼食、
の意に落ち着いてきたようである(たべもの語源辞典)。
で、『貞丈雑記』(天保四年(1843))には、
「朝夕の飯の間のうどん又は餅などを食ふをいにしへは点心と云今は中食(ちゅうじき)又むねやすめなどといふ」
とあり、『類聚名物考』(宝暦三年(1753)~安永九年(1780))には、
点心は、俗にいう茶子(ちゃのこ)である。飯粥の類ではない、菓子の類で、心を点改する故に点心という。禅家のことばとのみ思ってはいけない。唐の時にすでにあったことばである、
とある。『嬉遊笑覧』(文政十三年(1830))には、
点心は、食後の小食である、蒸菓子の類を点心とする、
とある。
なお、「点心」には、豆沙包子(あんまん)、桃包(タオバオ、桃饅頭)、月餅等々の甜点心(てんてんしん)、餃子、焼売、春巻、ラーメン、チャーハン等々の鹹点心(かんてんしん)があるが、詳しい内容は、https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%82%B9%E5%BF%83に譲る。
ついでながら、
飲茶(ヤムチャ)
とは、
お茶を飲むこと、
であり、
中国茶を飲みながら点心を食べる行為、
を指す。
参考文献;
清水桂一『たべもの語源辞典』(東京堂出版)
ホームページ;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm
コトバの辞典;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/kotoba.htm#%E7%9B%AE%E6%AC%A1
スキル事典;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/skill.htm#%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%AB%E4%BA%8B%E5%85%B8
書評;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/critic3.htm#%E6%9B%B8%E8%A9%95