2019年12月18日

へぼ


「へぼ」は、

へた、わざのまずいこと、またそのひと、
野菜・果物などのできのわるいもの、

という意味が載る(広辞苑)。大言海は、

つたなきこと、へっぽこ、平凡、
転じて、野菜などの出来損じたるもの、

と載る。しかし、

へた、
とか
技の拙さ、

の意は、

へぼ将棋、
へぼな絵、

という言い方で、相手の拙さをあざける含意がある。しかし、そこから転じても、

へぼキュウリ、

というような、

できそこない、

の意になるだろうか。

大言海も広辞苑も、「へぼ」を、

平凡の略、

とする。

技が拙いこと、

は、意味としてかろうじて「平凡」に掠るが、しかし、それが、

できそこない、

の意に点ずるとは到底思えない。しかし、語源由来辞典も、

「平凡の略 という。主に俗語を集めた江戸末期の国語辞典『俚言集覧(りげんしゅうらん)』には、『 へぼ、下濁、下手をヘボと云う』とある。へぼいは、へぼが形容詞化されたもの。」

と、やはり、

平凡、

とする。日本語源広辞典は、二説挙げ、平凡の略の他に、

「へ(浅薄)+ボ(男)」

で、

つまらない男、

の意とする。しかし、それでも、それが、

技の拙さ、

には、つながらないし、まして、

できそこない、

には、つながる気が、あまりしない。

「へぼ」は、岩波古語辞典には載らないが、江戸語大辞典辞典には、

屁坊の短呼か、

と載る。

拙劣、
下手、
無力、

の意である。江戸語大辞典には、

へぼ隠居(無力の隠居)、
へぼ学者(学力の乏しい学者)、
へぼ拳(下手な拳、またその打ち手)、
へぼ将棋、
へぼ浄瑠璃、
へぼ太夫(へたくそな浄瑠璃語り)、
へぼ役者(へたくそな芝居役者、地位の低い芝居役者)、
へぼ流(技の拙劣なるを一流派の如く言いなした戯言)、

と、拙い意味で使う例が載る。野菜については、

へぼ瓜、

が載るが、

蔓の末端に生った瓜、最も貧弱な売り、

と載る。どうみても、「へぼ」は、

平凡、

ではなく、

その技倆をあざけり、揶揄している。だから、

へぼ瓜、

は、

出来損ない、

というよりは、

使い物にならない、

という含意がある。そこから、

へぼ茄子、

と意味が転化するのは筋が通る。問題は、「へぼ」というとき、

平凡、

などと云う貶め方ではないことだ。

へぼくた(朽)、

という言い方が載る。

「へぼ」の強調語、

で、

下手くそ、

と「くそ」を付けたのと似ている。語源が、

屁坊、

かどうかは別に、

へぼ役者、

とあざけった時、それは、

かなりの程度に下手糞だと言っているのである。少なくとも、

平凡、

でないことは確かである。

ここからは憶説であるが、「へぼ」に似た言葉で、

へっぽこ、

という言葉がある。

技倆の劣った者、役に立たない者をののしっていう、

という意味で、「へぼ」と重なる。

へっぽこ役者
と、
へぼ役者、

は同義である。

屁っぽこ、

とあてる(江戸語大辞典)。

へっぽこ(heppoko)→へぼ(hebo)

の転訛ではあるまいか。「屁坊」の「屁」は、ののしり、あざけりの意を込める。

へっぴり(屁放)役者、

といえば、

放屁するしか芸のない役者、

の意である。「へっぽこ」「へぼ」には、そこまでの嘲りはないが。

参考文献;
前田勇編『江戸語大辞典 新装版』(講談社)

ホームページ;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm
コトバの辞典;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/kotoba.htm#%E7%9B%AE%E6%AC%A1
スキル事典;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/skill.htm#%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%AB%E4%BA%8B%E5%85%B8
書評;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/critic3.htm#%E6%9B%B8%E8%A9%95

posted by Toshi at 05:23| Comment(0) | 言葉 | 更新情報をチェックする