2019年12月25日

フキノトウ


「フキノトウ」は、

蕗の薹、

と当てる。

早春、蕗の根茎から葉に先立って出る若い花軸、

を言う。かつては、

蕗の姑(しゅうとめ)、
とも、
蕗の祖父(ぢい)、

とも言った(岩波古語辞典)。

ふきのしうとめ 大和の方言にて、フキノトウを云ふ、
ふきのぢい 河内の方言にて、フキノトウ、本草、款冬花を云ふ、

とある(俚言集覧)。

「シュウトメのメは芽の意味も含んでいる。フキノシュウトメは、蕗の薹が老いたものをさしている。これは食べると苦みがあるところから、姑は嫁に対して苦いものだという意でよんだ」

とある(たべもの語源辞典)。別に、

款冬花(かんとうか)、
鑽凍、

ともいう、とある(大言海)。地方によってさまざまに呼び、

九州(筑紫地方)では、カンドーまたはカンロ、
広島向島でも、カンドーまたはカンロ、
信州上田付近では、フキノネブカ、
越後秋山では、サシミ、
奈良吉野地方では、シュートメバナ、
秋田・青森・岩手・宮城登米地方では、バッカイ、
庄内・南部・岩手九戸地方・秋田由利地方では、バンカイ、
和歌山日高地方では、フキノシュート、
千葉印旛地方では、フキノメ、
岡山北木島地方では、フキノミ、
長野南佐久地方、岐阜では、フキボボ、

等々、その他、

フーキノトント、
フキノオバサン、
フイノオジゴ、
フキノジイ、

等々とも呼ばれる(仝上)。

堆積した落ち葉を突き破って顔を出すフキノトウ(食べ頃).jpg

(堆積した落ち葉を突き破って顔を出すフキノトウ(食べ頃) https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%95%E3%82%ADより)


蕾の状態で採取され、天ぷらや煮物・味噌汁・ふきのとう味噌に調理して食べられる。「フキノトウ」は、

「苦みが健胃に効き、痰を消し咳を治すという。苦いものは、油で揚げると、苦みが取れる」

とある(たべもの語源辞典)。

「フキノトウ」は、というより「蕗」は、

「雌雄異花で、オスの花は淡黄色、メスの花は白色。雄の茎の肉は厚くおいしいが、メスの茎は薄くまずいといわれる。だが、鱗状の苞に包まれている間は区別なく、何れも食用となる」

という(仝上)。

「フキノトウ」の「トウ」は、

「臺の字音のタイの音便と云ふ。或いは塔かと云ふ(俚言集覧に、季瓊日録を引きて、布直垂地紫紋桐塔と見えたり)。又、頭(たう)と云ふせつもあり」

と(大言海)、所説がある。日本語源広辞典は、

蕗の地下茎から伸びて出てくる花茎を塔と見た、

と「塔」説を採る。

形がタウ(塔)の九輪に似ているところから(言葉の根しらべの=鈴木潔子)、

も「塔」説である。しかしたべもの語源辞典は、


「フキノトともいうが、薹はタイとよむので、その字音が転じてトウになったという説がある。野菜類の花茎の立ち出たものをトウというのであるが、苞に包まれたところ、その相重なるさまをいうとの説が良い」

と、「薹」の字音の転訛説を採る。その出現の仕形から見ても、妥当に思える。

ふきのとう.JPG


参考文献;
清水桂一『たべもの語源辞典』(東京堂出版)
大槻文彦『大言海』(冨山房)

ホームページ;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm
コトバの辞典;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/kotoba.htm#%E7%9B%AE%E6%AC%A1
スキル事典;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/skill.htm#%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%AB%E4%BA%8B%E5%85%B8
書評;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/critic3.htm#%E6%9B%B8%E8%A9%95

posted by Toshi at 05:31| Comment(0) | 言葉 | 更新情報をチェックする