2020年01月05日

よもぎ


「よもぎ」は、

蓬、
艾、

と当てる。

もちぐさ、
繕草(つくろいぐさ)、
蓬蒿(ほうこう)、

ともいう。成長した葉は、灸の、

もぐさ、

とする(広辞苑)。「よもぎ」で漢字を引くと、

蓬、
艾、
蒿、
萩、
苹、
蕭、
薛、

が出る。「よもぎ」の漢字表記について、

「現在日本において、ヨモギは漢字で『蓬』と書くのが一般的だが、中国語でヨモギは『艾』あるいは『艾蒿』である。(中略)艾は日本で「もぐさ」と訓じる。もぐさはヨモギから作られるから、そのこと自体は何ら問題ではない。だが、蓬をヨモギとするのは誤りである、という説が現在では一般的のようだ。」

とあるhttp://square.umin.ac.jp/mayanagi/students/03/kamiya.htm

「艾」(ガイ、呉音ゲイ)は、

「会意兼形声。『艸+音符乂(ガイ、ゲ ハサミで刈り取る)』」

とあり、よもぎ、もぐさの意である(漢字源)。字源には、

よもぎ(醫草)、

と載る。「蒿」(コウ)は、

「会意兼形声。『艸+音符(高く伸びる、乾いて白い))』」

とあり(漢字源)、よもぎ、くさよもぎ、艾の一種、

とある(字源)。「蓬」(漢音ホウ、呉音ブ)は、

「会意兼形声。『艸+音符逢(△型にであう)』で、穂が三角形になった草」

とあり(漢字源)、

「よもぎ(艾)の一種」

とある(字源)。「萩」(漢音シュウ、呉音シュ)は、

「会意兼形声。『艸+音符秋』で、秋の草」

とあり、日本では「はぎ」に当てる。

よもぎ、くさよもぎ(蕭)の一種、

とある(字源)「蕭」(ショウ)は、

「会意兼形声。『艸+音符肅(ショウ 細く引き締まる)』」

とあり(漢字源)、

よもぎ(艾蒿)、

の意とある(字源)。「苹」(漢音ヘイ、呉音ビョウ)は、

「会意兼形声。平は、屮型のうきくさが水面に平らに浮かんだ姿を描いた象形文字。苹は『艸+音符平(ヘイ)』で、平らのもとの意味をあらわす」

とある(漢字源)。浮草のようであるが、

よもぎ、蒿の一種、

ともある(字源)。「薛」(漢音セツ、呉音セチ)は、

「会意。『艸+阜の字の上部(つみかさねる)+辛(刃物で切る)』。束ね重ねて着るよもぎをありらわす」

とあり(漢字源)、

かわらよもぎ(仝上)、
よもぎ(蒿)(字源)、

とあり、「よもぎ」のようである。どうやら、「艾」「蒿」「艾蒿」が、本来の「よもぎ」の漢字のようである。たべもの語源辞典には、こうある。

「蒿(かう)もヨモギで、艾の一種。苹(へい)またはビョウとよむが、これもヨモギで、蒿の一種、蕭(ショウ)もヨモギで、蒿と同じである。漢名には、蒿艾(コウガイ)、蕭艾(シュウガイ)、指艾(シガイ)、荻蒿(テキコウ)、氷台、夏台、福徳草、肚裏屏風など」

がある、と。しかし、

字類抄「蓬、よもぎ」

とあるように、「蓬」の字を当ててきた。

和名「よもぎ」は、古く、

させもぐさ、
つくろひぐさ、
えもぎ、
させも、

等々といった(たべもの語源辞典)。「させもぐさ」は、

さしもぐさ(指焼草・指艾)の転(岩波古語辞典)、
サセモグサと云ふは、音轉なり(現身、うつせみ)、サセモとのみ云ふは、下略なり(菰筵、薦)(大言海)、

である。「さしもぐさ」は、

「夫木抄『指燃草』、注燃草の義、注(さ)すとは、点火(ひつ)くること(灸をすうるを、灸をさすと云ふ…)、モは燃(も)すの語根、燈(とも)すの、カモなり、此のモグサは、即ち艾(もぐさ)にて、灸治する料とす。」

とある(大言海)。

ヨモギ.jpg



大言海は、「よもぎ」を、

艾、
蓬、

の当てる漢字で二項別に立てている。「よもぎ(艾)」は、

「善燃草(よもぎ)の義」

とし、

「草の名。山野に自生す。茎、直立して白く、高さ四五尺、葉は分かれて五尖をなし、面、深緑にして、背に白毛あり。若葉は餅に和して食ふべし(餅草の名もあり)。秋、葉の間に穂を出して、細花を開く。實、累々として枝に盈つ。草の背の白毛を採りて、艾(もぐさ)に製し、又印肉を作る料ともす。やきくさ。やいぐさ。倭名抄『蓬、一名蓽、艾也。與毛木』、本草和名『艾葉、一名醫草、與毛岐』」

と記す。ほぼ、「よもぎ」の意である。しかし、「よもぎ(蓬)」の項では、

「葉は、柳に似て、微毛あり、故に、ヤナギヨモギの名もあり。夏の初、茎を出すこと一二尺、茎の梢に、枝を分かちて、十數の花、集まりつく。形、キツネアザミの花に似て、小さくして淡黄なり。後に絮(わた)となりた飛ぶ。ウタヨモギ。字類抄『蓬、ヨモキ』」

とする。「もぐさ」にする「よもぎ(艾)」と「くさもち」にする「よもぎ(蓬)」とは別、という意味なのだろうか。

日本では一般的な「よもぎ」は、

 ヨモギArtemisia princes Pamp.〔分布〕本州・四国・九州・小笠原・朝鮮
 ニシヨモギArtemisia indica Willd.〔分布〕本州(関東地方以西)・九州・琉球・台湾・中国・東南アジア・印度
 オオヨモギArtemisia montana (Nakai) Pamp.〔分布〕本州(近畿地方以北)・北海道・樺太・南千島

の三種というhttp://square.umin.ac.jp/mayanagi/students/03/kamiya.htm。日本だけでも30種あるが、この3種は植物学の分類上かなり近縁の種で、

「日本全国で一般に『ヨモギ』と呼ばれている植物はこの3種のうちいずれかということになろう。」

というし、

「別名は、春に若芽を摘んで餅に入れることからモチグサ(餅草)とよく呼ばれていて、また葉裏の毛を集めて灸に用いることから、ヤイトグサの別名でも呼ばれている。ほかに、地方によりエモギ、サシモグサ(さしも草)、サセモグサ、サセモ、タレハグサ(垂れ葉草)、モグサ、ヤキクサ(焼き草)、ヤイグサ(焼い草)の方言名がある」

とありhttps://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%A8%E3%83%A2%E3%82%AE、一般には、区別しているようには見えない。しかし、大言海が、是非は判断できないが、「くさもち」につかう「よもぎ」と「もぐさ」の「よもぎ」を分けているのには意味がある。

「蓬(よもぎ)は、葉は柳に似て微毛があるのでヤナギヨモギと呼ばれる。淡黄の小さい花をつけ、後に絮(わた)になって飛ぶ。ウタヨモギともいい、艾(よもぎ)とは違った植物である」

とある(たべもの語源辞典)。大言海の見識である。

さて和語「よもぎ」の語源であるが、大言海が、「よもぎ(艾)」に、

善燃草(よもぎ)の義、

としたように、

ヨ(弥)+モ(萌)+キ(草)(日本語源広辞典)

か、あるいは、

ヨクモエクサ(佳萌草)の義(日本語原学=林甕臣)、
弥茂く生える草の意(日本語源=賀茂百樹)、
ヨモギ(常世萌)の義(柴門和語類集)、

の二つが多い。語源由来辞典は、

「よもぎの『よ』は『ますます』を意味する『いや・いよ(弥)』、もしくは『よく(善)』の意味。『も』は『萌える』か『燃える』の意味で、『ぎ(き)』は茎のある立ち草の意味。つまりよもぎの語源は『いよいよ萌え茂った草』か、『よく燃える草』の意味からである」

とまとめている。この他に、

よく繁殖し四方に広がることから「四方草」と書いてヨモギと読ませる、

という説(よく繁殖し四方に広がることから「四方草」と書いてヨモギと読ませる)もあるが、「萌」「燃」には、盛んに生えるという意味がある。岩波古語辞典には、

「平安中期以後には、『むぐら』『あさぢ』などと共に、代表的な雑草として、荒廃した家の描写に使われることが多い」

とあるが、万葉集の家持の長歌には、

玉桙(たまほこ)の道に出で立ち、岩根(いわね)踏み、山越え、野行き、都辺(みやこへ)に参ゐし我が背を、あらたまの年行き返り、月重ね、見ぬ日さまねみ、恋ふるそら、安くしあらねば、霍公鳥(ほととぎす)、来鳴く五月のあやめぐさ、余母疑(よもぎ)かづらき、酒みづき、遊びなぐれど、射水川(いみづかは)、雪消(げ)溢(はふ)りて、行く水の、いや増しにのみ、…

とあり、必ずしも、荒んだという意味はない。その意味で、「よく茂る」という意味は悪い意味ではない。しかし、古名、

さしもぐさ(指燃草)、

が、艾(もぐさ)に火をつける意味だとすると、

ヨリモヤシキ(捻燃生)の義、灸に用いるところから。生は草の意(名言通)、

という、「もぐさ」と絡める説も無視できない気がする。

「モグサはモエグサ(燃草)の意である。サシモグサのサシは灸をすえるの意である」

とある(たべもの語源辞典)。「よもぎ」の名も、古名「さしもぐさ」の由来との連続性を採りたい。

「よもぎ」は、

餅草、

ともいう。草餅の材料にするからである。しかし、昔は、ハハコグサを用いた。

平安朝の『文徳実録』(八七九年)に、

野有草、俗名母子草、二月始生、茎葉白脆、毎属三月三日、婦女採之、蒸擣以為餻、伝為歳事。

とありhttp://square.umin.ac.jp/mayanagi/students/03/kamiya.htm、ハハコグサを搗き入れた餅で、

母子餅、

と呼んだ。

ははこぐさ、

は、

ホウコグサ、
モチヨモギ、

といい、漢名は鼠麹草(そきくそう)、春の七草のひとつで御行(ごぎょう、おぎょう)である。

ハハコグサのつぼみ.jpg



参考文献;
神谷正太「東アジアにおけるヨモギ利用文化の研究」(http://square.umin.ac.jp/mayanagi/students/03/kamiya.htm
大槻文彦『大言海』(冨山房)
前田富祺編『日本語源大辞典』 (小学館)

ホームページ;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm
コトバの辞典;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/kotoba.htm#%E7%9B%AE%E6%AC%A1
スキル事典;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/skill.htm#%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%AB%E4%BA%8B%E5%85%B8
書評;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/critic3.htm#%E6%9B%B8%E8%A9%95

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