2020年03月11日

ワラビ


「ワラビ」は、

蕨、

と当てる。和名抄、本草和名、字鏡、いずれも、

和良比、

と訓ませているが、古名は、

ヤマネグサ、
イワネグサ、
イワシロ、
ホドロ、

とある(たべもの語源辞典)。異名に、

ムラサキノリ、
ワラ(女房ことば)、
紫の塵、

地域でさまざまに呼び名がある。たとえば、

土佐方言でシドケ、伊勢でヨメノサイ、和歌山県日高地方でホツロ、壱岐・香川三豊地方・長崎でワラビナ、沖縄でヘゴ、

等々(仝上)。漢名は、

蕨萁菜・米蕨草・龍頭菜・山菜・烏昧(うまい)・月爾(げつじ)・莽芽(もろが)・金桜芽(きんおうが)・拳頭菜(けんとうさい)・小児拳・倒掛草(とうけいそう)・拳菜・龜脚菜、

等々(仝上)。

「蕨」(漢音ケツ、呉音コチ)は、

会意兼形声。「艸+音符厥(ケツ ちぢんで曲がる)」。若芽がちぢんでまるくまがったわらび、

を指す(漢字源)。早春、地中の根茎からこぶし状に巻いた新芽をだす、これを意味しているが、わが国では、

さわらび(早蕨)、

という。「ワラビ」は、

シダ類の代表的な名として流用され、たとえばイヌワラビ、クマワラビ、コウヤワラビなどがある。また、アイヌ語でもワラビを「ワランビ」「ワルンベ」などと呼称しており、日本語由来の言葉と考えられている、

とあるhttps://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%AF%E3%83%A9%E3%83%93

ワラビ、葉が開くまえ・通常この程度を食用とする.jpg

(葉が開く前・通常この程度を食用とする https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%AF%E3%83%A9%E3%83%93より)


春から初夏にまだ葉の開いてない若芽(葉)を採取しスプラウトとして食用にするほか、根茎から取れるデンプンを「ワラビ粉」として利用するが、毒性があるため生のままでは食用にできない。伝統的な調理方法として、熱湯(特に木灰、重曹を含む熱湯)を使ったあく抜きや塩漬けによる無毒化が行われる、

とある(仝上)。あく抜きには、

灰汁を用いたりするが、アザミの葉をワラビ一把(わ)に二、三枚加えて茹でるとアクが抜ける、

と出羽山中の伝えにある(たべもの語源辞典)、とか。

「ワラビ」の語源には、さまざまな説がある。

ハルミ(春味)の転(和語私臆鈔)、
色が焼いたワラビ(藁火)に似ているから(和句解)・日本語源広辞典、
ワラノヒ(曲平伸)の略で、形がワラ(藁火)に似ているところから(柴門和語類集・日本語源広辞典)、
ワラハテフリ(童手振)の義(名言通)、
ネネリヤカメグキ(撓々芽茎)の義(日本語原学=林甕臣)、
ワ(曲)ラ(接辞)ヒ(秀)という語構成の語(語源辞典・植物篇=吉田金彦)、
ワラ(茎)メ(芽)の転呼(日本古語大辞典=松岡静雄)、
童+ビ(拳)。握りこぶしに似ているので(日本語源広辞典)、
早春の芽出しの早いことをワラヒ(笑)とみて、それが訛ったもの、
ワラビの芽の部分が三本に分裂して、その一本は茎となって伸びたのち、さらに三本の芽に分かれと、分裂を繰り返すので、ワカレメ(別れ芽)草と呼ばれていたから、ワカの縮約形のワレメはレの転訛でワラメ、さらにメの転訛でワラミ、ワラビと転訛した(日本語の語源)、
ワラビのワラを散(わら)と考えて、ワラビがその芽の散(わら)くるから、
散芽(わらめ)の転、
散風(わらぶる)の転、
ワラビのワラはカラ(茎)に通ずるので、カラ(茎)メ(芽)から転じた、
蕨の字と蹶(ケイ、ケツ)の字と似ていることからワラビの芽生えの形が鼈(すっぼん)の足ににているから、

等々(日本語源大辞典、たべもの語源辞典)。

ワラビ.jpg



「ワラビ」の「ビ」は、ビ→ミ、と転じて、

実、

とし(ミからビ=前川文夫)、

あちこちに散らばって出るから散(わら)という、

とし、

ワラミ→ワラビ、

ではないかとするのはたべもの語源辞典である。

ワラビ、葉が開きはじめる.jpg

(葉が開きはじめるワラビ https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%AF%E3%83%A9%E3%83%93


どれかという根拠はないが、ワセビの生態から見ると、日本語の語源の、

芽の部分が三本に分裂しており、その中の一本は茎となって伸びたのち、さらに三本の芽に分かれ、再三、分裂を繰り返してゆくので、ワカレメ(別れ芽)草と呼ばれていたと推測される。ワカ[w(ak)a]の縮約形のワレメは、レの母交(母韻交替)[ea]でワラメになり、さらにメの母交(母音交替)[ei]でワラミ・ワラビと転訛した、

とする、

ワカレメ→ワラメ→ワラミ→ワラビ、

と転訛するとする説は、たべもの語源辞典は「いかがか」と疑問を呈したが、

あちこちに散らばって出るから散(わら)、

という説よりは、僕には生態的にも、感覚的にもよくわかる気がする。

参考文献;
清水桂一『たべもの語源辞典』(東京堂出版)
前田富祺編『日本語源大辞典』 (小学館)
田井信之『日本語の語源』(角川書店)

ホームページ;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm
コトバの辞典;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/kotoba.htm#%E7%9B%AE%E6%AC%A1
スキル事典;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/skill.htm#%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%AB%E4%BA%8B%E5%85%B8
書評;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/critic3.htm#%E6%9B%B8%E8%A9%95

ラベル: ワラビ
posted by Toshi at 04:42| Comment(0) | 言葉 | 更新情報をチェックする