2020年03月24日

あらい


「あらい」は、

洗い、

と当てる。

洗い膾、

のことである。「膾」は、「なます」http://ppnetwork.seesaa.net/article/474186656.html?1584905399で触れたように、

ナマシシ(生肉)、

の意で、古くは

生魚の肉を細かく切ったもの、

を膾(なます)と呼んでいた(たべもの語源辞典)からである。「洗い」と当てるのは、

コイ、フナなどの川魚、スズキ、ヒラメ、鯛、アジなど白身の魚等々

を下ろし、

そぎづくりや糸つくりなど薄切りにし、流水やぬるま湯で身の脂肪分や臭みを洗い流した後、冷水(氷水)にさらし漬けて身を引き締めて(身は、縮まり、ちりりと「はぜる」。)から水気を切って提供する、

からであるhttps://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%B4%97%E3%81%84。カニの刺身をさっと湯引きしたものを洗いと呼ぶ地方もある(仝上)、とか。

鯉の洗い.jpg


洗鱸(あらいすずき)、
洗鯉、

等々といい、「洗鱸」には、

古酒に醤油、鰹節、塩などを加えて煮詰めた煎酒と称する酒を添える、

とある(たべもの語源辞典)。

氷塊を添えて供する、

ので、夏の料理として喜ばれる(たべもの語源辞典)。タイ、スズキ・コイの他、

フッコ、クロダイ・コチ・ボラ、

等々が使われ、

つまには、青ジソの葉を刻んだもの、穂ジソなどを添え、ワサビ醤油で食べる、

とあり、淡水魚には、酢味噌か芥子酢味噌がよい、

とある(たべもの語源辞典)。

ところで「あらう」に当てた、「洗」(セン、漢音セイ、呉音サイ)は、

会意兼形声。先は「足+人」の会意文字で、人間の足先を示す。跣(セン はだしの爪先)の原字で、指の間に細い隙間が空いて離れている意を含む。洗は「水+音符洗」で、細い隙間に水を通すこと、

とあり(漢字源)、「あらう」というよりは、「すすぐ」という含意があるが、「洗濯」の「濯」(漢音タク、呉音ダク)は、

会意兼形声。翟(テキ)は「羽+隹(とり)」の会意文字で、キジが尾羽を高く抜きたてたさま。濯はそれを音符とし、水を加えた字で、水中につけた物をさっと抜きあげてあらうこと、

で、「あらう」意だが、じゃぶじゃぶとあらう、という含意になる。「あらい」に、「洗」を当てたのは頷ける。

「あらふ」について、大言海は、

新(あら)を活用せしむ(荒(ありら)、あらぶ)。新たにする義(浚ふも、更にする義ならむ)。或は、和訓栞に、拂ふと音義通是りと云ふ(頒(あが)つ、はがつ。溢る、はふる)、汚れを除き去る義となるか、

とする。日本語源広辞典も、

アラ(更・新)+う、

と、似た説を立てる。意味的には、あっているが、理が先立つときは、往々にして、後付け解釈の気がして、ちょっと納得しがたい。「あら」は、

生(あ)るの名詞形、アレの転(曝(さ)れぼふ、さらばふ。荒らぶ、あれぶ。賓客(まれびと)、まらびと)、新たと云ふ語も、生立(あれたち)なるべし、生まれ出でたる意、

とあり、「生(あ)る」は、

生(な)るに通ずと云ふ(豈(あに)、何(なに)。などか、あどか)、新たに生(な)る意、

と(大言海)、理屈はますます合うのだが、他は、

ハラフ(払)から(和訓栞、和句解、日本語原学=林甕臣)、

と、「払う」とする説だから、確かに、「更・新」説が、とは思えるのだが。

参考文献;
清水桂一『たべもの語源辞典』(東京堂出版)
大槻文彦『大言海』(冨山房)
前田富祺編『日本語源大辞典』 (小学館)

ホームページ;
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コトバの辞典;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/kotoba.htm#%E7%9B%AE%E6%AC%A1
スキル事典;
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書評;
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ラベル:あらい 洗い
posted by Toshi at 04:24| Comment(0) | 言葉 | 更新情報をチェックする