2020年05月08日

しっとり


「しっとり」は、

湿る程度に濡れていたり、適度に水分穂を含んでいたりするさま、

という状態表現と、

落ち着いていて風情があるさま、

という価値表現と、二つの意味がある。日葡辞書には、

シットリトシタヒト、

と後者の意味が載る(広辞苑)。普通に考えれば、状態表現から価値表現へと意味が転じたと見ることができる。後者は、人の、

落ち着いてしとやかなさま、

と、雰囲気の、

しずかで落ち着いているさま、

の意にも使われる(大辞林)。更に、

むつまじいさま、

の意で、類義語「しっぽり」の意でも使われている(岩波古語辞典)。たとえば、

せめて逸年しっとりと一つ寝臥しもしたいぞ、

というように(近松・夕霧)。

「しっとり」は、擬態語のように思う。似た言葉に、

しっぽり、
しっくり、
じっとり、
しとしと、
じとじと、
じくじく、
じめじめ、

等々あり、

しっぽり、

しっくり、

はつながるし、

しっとり、

しんみり、

もつながる。湿気や水っ気とかかわる、

「しっとり」は、

しとしと、

と関係がある(擬音語・擬態語辞典)、との見方がある。湿気や水っ気にかかわるのは、

じっとり-じとじと、
ぐっしょり-ぐしょぐしょ、
びっしょり-びしょびしょ、

等々がある(仝上)。

しっとり-しとしと、

は、関連性が高い。「しとしと」は、略して、

しとど、

とも言う(岩波古語辞典)。「しとしと」は、

細かい雨が静かに降り続く様子、
程よく湿った様子、
しずしず、しとやかなさま、

といった意味で、日葡辞書には、

シトシトモノヲスル、

と、

物事をきちんとするさま、
しとやかなさま、

と、「しっとり」の意味とも重なるところがある。「しとしと」の「しと」は、

しとやか、

の「しと」とも通じる(擬音語・擬態語辞典)、とみなされる。「しとど」を、

しとと、

と濁音を消すと、

したたかに、
ぴったりと密着するさま、

と意味が変わる(仝上)。「しっとり」の濁音を付けた、

じっとり、

は、

したたりそうなほど湿った様子、

で、

じっとりと汗ばむ、

などと使うが、江戸時代には、

あまりはすはでないじっとりしたおなご(浮世風呂)、

と、「しっとり」とほぼ同義の、

しとやかで落ち着いた様子、

の意味で使っている(擬音語・擬態語辞典)。

しっとり
じっとり、
しっぽり、
しんみり、
じとじと、
じくじく、

の違いについて、

「しっとり」は、

潤う程度の心地よい湿り気、

「じっとり」は、

湿度が過剰で汗ばむようなイメージ、

「しっぽり」は、

十分濡れなじんだ快な湿り気、

「しんみり」は、

落ち着いた雰囲気の「しっとり」に対して、寂しくてしめやか、

「じとじと」は、

粘りつくような不快な湿気、

「じくじく」は、

水分が表面に滲み出るような湿り気、

を表す(仝上)、とある。「しっぽり」は、

しめやかなさま、
春雨などのしとしとふるさま、
男女の仲のこまやかなさま、

の意だが(広辞苑)、江戸時代の遊郭では、

しんみり落ち着いた様子、

を、

しっぽり、

と言い、

しっぽり客(情趣の細やかな客)、
しっぽり酒(しんみり飲む酒)、

という言い回しをして、「しっとり」の意と重なる使い方をしていた(擬音語・擬態語辞典)、らしい。

参考文献;
山口仲美編『擬音語・擬態語辞典』(講談社学術文庫)
大野晋・佐竹 昭広・ 前田金五郎編『古語辞典 補訂版』(岩波書店)

ホームページ;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm
コトバの辞典;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/kotoba.htm#%E7%9B%AE%E6%AC%A1
スキル事典;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/skill.htm#%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%AB%E4%BA%8B%E5%85%B8
書評;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/critic3.htm#%E6%9B%B8%E8%A9%95

posted by Toshi at 03:35| Comment(0) | 言葉 | 更新情報をチェックする