2020年05月16日

奉書焼


「奉書焼」とは、

魚介類や野菜・きのこ類などの材料に薄塩をして奉書紙に包んで蒸し焼きにした料理。香りづけに松葉やゆずの輪切りなどをのせることもある。島根の郷土料理、すずきの奉書焼きが知られる、

とある(世界の料理がわかる辞典)。

島根の郷土料理、スズキの奉書焼は、宍道湖でとれるスズキが、有名で、淡水のためとある(たべもの語源辞典)。藩政時代、宍道湖畔の漁師たちが、真冬の湖上でとれたばかりのスズキを熱い灰の中に入れて蒸し焼きにして食べていたものを、時の藩主不昧公(松平治郷)が、この荒っぽい丸焼きを賞味してみたいといわれたのを、いくら何でも灰まみれでは畏れおおいと奉書紙に包んで灰に埋めて焼いて差し上げたところ、大変喜ばれた、という(仝上)。ために、それ以来、

不昧公料理、

といわれ、維新まで、「お止め料理」とされてきた、という。

スズキの奉書焼き.jpg

(スズキの奉書焼き http://kyoudo-ryouri.com/food/737.htmlより)

その由来をみても、奉書で包むことが「パイ包み焼きのような、味を引き出すため、又は相乗効果を狙った手段」とは言えず、したがって「飾りの類」と考えるべきであろう、

ともあるhttps://temaeitamae.jp/top/t2/kj/9992_K/01.html。現在ではスズキに限らず様々魚介を使い、野菜・きのこ類や栗、銀杏、輪切り柚子などを加えてオーブンで焼いたりする。また、焼きだけではなく他の調理法を使うこともあり、「奉書巻き」という献立名もある。揚げたものは「奉書揚げ」である(仝上)、とある。

「奉書」(ほうしょ)とは、

主人の意を受けて従者が下達する文書。天皇の意を受けた場合は綸旨(りんじ)、上皇の場合は院宣(いんぜん)、親王の場合は令旨(りょうじ)、三位以上の場合は御教書(みぎょうしょ)、

である。

古文書の一種。高位者がその意思・命令などを特定者に伝える際に、家臣などの下位者に1度その内容を口頭などによって伝えて、下位者が自己の名義でその旨を記した文書を作成して伝達の対象者である特定者に対して発給する形式を取ったもの、

とあるhttps://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%A5%89%E6%9B%B8のがわかりやすい。平安時代中期以後こうした文書が見られる、という。差出者の意思と一致する直筆の書状、

直札(じきさつ)、

に対して言う。ちなみに、直札は、

直状(じきじょう)、
あるいは、
直書(じきしょ)、

ともいうが、

高貴な身分である差出人本人が直に署判・署名を行って差し出す書札様(しょさつよう)文書(もんじょ)、

である。「家臣」が代理して差し出す奉書(ほうしょ)や本文ではない副状(そえじょう 添状)に対して用いる。

鎌倉幕府では執権・連署は奉書が原則であったが、室町期、征夷大将軍の御判(ごはんの)御教書(みぎょうしょ 将軍自身の花押もしくは自署を加える直状形式)をはじめ、幕府・守護職が出す多くの公文書が直札形式となった。戦国大名・武将の文書もほとんど直札形式となったhttps://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%9B%B4%E6%9C%AD。家臣による「副状」を添付するのが典型とされる。

なお、「書札様文書」(しょさつようもんじょ)は、

(書札および書札様)文書を作成する際に守らなければならない儀礼(形式)と故実(こじつ)(作法)を指す。その様式は、はじめに要件等の本文、本文の終わる次行に日付、日付の下に差出書(さしだしがき)、日付の次行上段に充名書という構成を基本にしている。

「奉書紙」(ほうしょし、ほうしょがみ)は、

もともとは原料を楮とする和紙である楮紙のうち、白土などを混ぜて漉きあげたもので、日本の歴史上、奉書などの古文書で使用されたので、

奉書、

とも略す。

「奉書紙」の言葉がはじめて登場する史料は戦国時代後期に興福寺大乗院の門跡であった尋憲が著した『尋憲記』元亀四(1573)年正月27日条の「奉書かみ」を越前で買い求めたという記事であり、このことから一般に奉書紙は江戸時代のものとされる、

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%A5%89%E6%9B%B8%E7%B4%99、奉書紙の言葉はなくても、中世の古文書で使われた料紙の多くは奉書紙の系統に属すると考えられる、とある(仝上)。大言海には、

檀紙の、肌、美にして、皺なきもの、楮皮の精製なるに、米粉を加へ、のりのき(又、ねりのきとも云ふ、山地に多き、ユキノシタ科の落葉灌木)の液を糊として、厚く製す。純白なり。多く奉書に用ゐたればこの名あり。大奉書紙、中奉書紙、小奉書紙あり。越前の丹羽郡の産を上品とす。略して、ほうしょ、又、略延して、ほうしょう、

とある。書言字考節用集に、

越前所産紙、堅硬純白、以堪充其用(ホウショをさす)、故謂之奉書紙、

とあり、日本山海名物圖繪には、

越前奉書紙、奉書、餘國よりも出れども、越前に及ぶものなし。越前奉書、其品多し、

とある(仝上)。「檀紙」(だんし)とは、

古く、みちのくがみ、まゆみのかみ。紙の一種。上品なるもの。古へ、檀(マユミ)にて製せりとぞ、今は、楮なり。厚くして白し、面に細かき皺文(しぼ)あるを、高檀紙(又は鷹檀紙)と云ふ、

とある(仝上)、

ちなみに、「奉書焼」を家庭で作るには、

500~600gのスズキのウロコ・エラをとって、腸(わた)は胃だけとりのぞき、きれいに洗う。奉書紙を2~3枚水でぬらして、スズキを包む。焙烙か天火にいれて蒸し焼きにする。熱すぎると紙が焦げるし、低すぎると水気が出ておいしくない。煮返して醤油にもみじおろしを付けて食べる、

とある(たべもの語源辞典)。この調理法だと、はらわたが特にうまいので、胃以外をとらないようにして焼く、とある(仝上)。

参考文献;
清水桂一『たべもの語源辞典』(東京堂出版)
大槻文彦『大言海』(冨山房)

ホームページ;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm
コトバの辞典;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/kotoba.htm#%E7%9B%AE%E6%AC%A1
スキル事典;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/skill.htm#%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%AB%E4%BA%8B%E5%85%B8
書評;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/critic3.htm#%E6%9B%B8%E8%A9%95

posted by Toshi at 03:33| Comment(0) | 言葉 | 更新情報をチェックする