2020年06月01日

しげしげ


「しげしげ」は、

繁繁、

と当てる。

しけしけ、
しけしげ、

ともいう、とある(広辞苑)。

たびたび、
しきりに、

の意は、室町末期の日葡辞書にも、

シゲシゲゴヨウヲマウス、

と載り、

しげしげ通う、

という使い方を今日もする。「しげしげ」には、その他に、

じっと見つめるさま、
つくづく、
よくよく、

の意味もあり、

しげしげと顔を見る、

という使い方をする(広辞苑)。

「しげしげ」は、

繁々、

と当てるように、本来は、

草や木が茂って、枝や葉がすきまなく重なりあうさまを表わす(和歌庭訓(1326)「四方の木立しげしげとして涼しきさまにはみえで」)、

擬態語であったと思われる(精選版日本国語大辞典)。それが、空間を表した隙間のなさが、時間に転じて、

間を置かず、しきりにするさま、

と、動作の頻度の意味となり(岩波古語辞典)、そこから、

視線をそらさず、よく見つめるさま、

を表わす意へと転じた(精選版日本国語大辞典)、とみられる。大言海は、

頻(つ)く頻(つ)くの轉か、

とする。「頻」を当てたのは、

間を置かず、

の意を表す「空間的」な含意が、「繁」を当て、それが時間に転じる含意を、「頻」の字が意味しているともとれる。この「つくつく」で思いつくのは、

「つくづく」http://ppnetwork.seesaa.net/article/463698678.html

だが、「つくづく」は、

つくつく、

ともいい,

念を入れて見たり考えたりするさま,よくよく,つらつら,じっと,
物思いに沈むさま,つくねんと,よくよく,
深く感ずるさま,

という意味で,

つらつらhttp://ppnetwork.seesaa.net/article/456542777.html

と重なる。「つくづく」は、

熟,
尽、

などと当て,

就くを重ねたる語、

とする説(大言海)もあるが、

尽く+尽く

とし,

尽きるまでじっとを,更に重ねたものです。よくよく,じっと、

の意(日本語源広辞典・岩波古語辞典)とする。これが妥当に思える。

「つく」http://ppnetwork.seesaa.net/article/448009954.html

で触れたように,「尽く」は「付く」に繋がり,同源である。「つくづく」は、本来、

疲れ果てている,

じっとしている,

という状態表現であったが,価値表現へ転じ,

物淋しい,

となり,そのじっとしているさまから,

じっと思いを凝らすさま,

に転じ,

念を入れて見たり考えたりするさま,

と転じたことになる。その段階で、

しげしげ、

と意味が重なったものと思われる。しげしげ」が、

間を置かない、

という頻度の高さから、

(目をそらさず)じっと見つめる、

の意味に転じたとき、「しげしげ」は、

しみじみhttp://ppnetwork.seesaa.net/article/463638912.html

とも意味が重なる。「しみじみ」は,

染み染み,
沁み沁み,

と当てる。

心の底まで情趣がしみいる様子、あるいは逆に心の底から心情がわき起こる様子、
心を込めてよく物を見つめる様子、

という意味(擬音語・擬態語辞典)とある。前者が状態表現なのに対して,後者は,主体の価値表現,感情表現にシフトしている。今日の使い方からすると,後者の方がピンとくる。大言海を見ると,

静かに,しめやかに,

心に滲みて,心に深く滲みて,

しんみり,

つくづく,

よくよく,

と,主体表現へと少しずつシフトして意味が広がっていく流れが見える気がする。

「平安時代から見られる語。動詞『染む』の連用形『染み』が重なったものと考えられ,本来は擬態語ではない。しかし,『しとしと』『じめじめ』などに形が類似したり,『しんみり』と類義的であったりするなど擬態語と関連が強いために,現在では,擬態語と意識されている。」

とある(擬音語・擬態語辞典)。類義語「しんみり」は,

心の底まで情感がしみいる様子,あるいは心の底から心情が湧きおこる様子,

だが,「しげしげ」は,

心を込めてよく物を見る様子,

の意味の類義語。「しげしげ」は「しみじみ」比べると情趣なく,細かく観察する意となる(仝上)、とある。

参考文献;
山口仲美編『擬音語・擬態語辞典』(講談社学術文庫)
大槻文彦『大言海』(冨山房)

ホームページ;http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm
コトバの辞典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/kotoba.htm#%E7%9B%AE%E6%AC%A1
スキル事典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/skill.htm#%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%AB%E4%BA%8B%E5%85%B8
書評;http://ppnetwork.c.ooco.jp/critic3.htm#%E6%9B%B8%E8%A9%95

posted by Toshi at 03:23| Comment(0) | 言葉 | 更新情報をチェックする