2020年06月02日

まじまじ


「まじまじ」は、

たびたびまばたきするさま、また眠れないさま、
恥じずへいきなさま、しゃあしゃあ、
視線をそらさず見つめるさま、

という意が載る(広辞苑)。今日は、

まじまじと見つめる、

といった使い方をするのが大勢だろう。大言海は、

交睫、

と当てている。

眼をしばたたかせる、

という擬態語からきていると思われる。「まじまじ」は、また、

ましくし、

ともいう(岩波古語辞典)とあり、「ましくし」は、

眼をしばたたくさま、また、そういう状態で眼が冴えてねむれないさま、

の意である。

ましくしゃ、
まじくじ、
まじくら、

ともいった(仝上)。江戸中期の俳諧辞書、反故集(ホウグシュウ)には、

交睫、マジマジ、マシクシ、

とある(仝上)。面白いことに、

目をしばたたくさま、

から、いつのまにか、

たひたび目ばたきして、ながむる状に云ふ、

となり、

転じて、

無遠慮なる状に云う、

と、状態表現から、その様自体の価値表現へと転じていく(大言海)。たとえば、

籠の家まじまじしたるうその声(俳諧・玉手箱)、

しかし、同時に、

言ひこめられてしょげ島の、まじまじとして閉口す(浄瑠璃・夏祭)、

というように、真逆の、

もじもじするさま、

の意でも使う(岩波古語辞典)。この「まじまじ」の用例は室町時代末期から見られ、

平然としていてずうずうしい様子、

を示し、

しゃあしゃあhttp://ppnetwork.seesaa.net/article/452281880.html

に近い意味でも使われ、また

決断できずに手をこまねいている様子を示した、

もじもじ、

に近い用例もある(仝上)。

どうも初めは、

目をしばたたかせるさま、

であったが、それは、

眼が冴えて眠れぬさま、

にもなるし、見ようによっては、価値表現の、

もじもじ、

にも見えるが、逆に、

しゃあしゃあ、

にも見える、ということだろうか。江戸語大辞典には、「まじまじ」に、

目ばかりパチパチさせじっとしているさま、
じっとまじめな顔をしているさま、

の意が載る。確かにこれだと、

しゃあしゃあ、

に見えてくる。

また、「まじまじ」は、

まじりまじり、
まじいりまじいり、

と、「まじまじ」を強調した言い方も使われる。

ちと休みませうと檀を下り、煙草ぱくぱく、病人をまじりまじり見て居らるれば(滑稽本・古朽木)、
松之丞どの雁首のう打傾(うちかたげ)で、まじいりまじいり見て居っけえ(滑稽本・浮世風呂)、

「まじまじ」に、

墨々、

と当てているのは、尾崎紅葉で、

お峯はその言はんとするところを言はんとには、墨々(まじまじ)と手を束ねて在らんより、事に紛らしつつ語るの便(たより)あるを思へるなり。

と書いている(金色夜叉)。他に見ない独自の当て字のようである。

相手をじっと見つめるのは、

しげしげhttp://ppnetwork.seesaa.net/article/475384845.html?1590949400

と重なるが、「しげしげ」は、見る「頻度」を示す。「まじまじ」は、目をしばたたかせながら目を離さないさまで、微妙な含意の差がある。見つめる集中度からすれば、「まじまじ」が勝るか。

参考文献;
山口仲美編『擬音語・擬態語辞典』(講談社学術文庫)
大野晋・佐竹 昭広・ 前田金五郎編『古語辞典 補訂版』(岩波書店)
大槻文彦『大言海』(冨山房)

ホームページ;http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm
コトバの辞典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/kotoba.htm#%E7%9B%AE%E6%AC%A1
スキル事典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/skill.htm#%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%AB%E4%BA%8B%E5%85%B8
書評;http://ppnetwork.c.ooco.jp/critic3.htm#%E6%9B%B8%E8%A9%95

posted by Toshi at 03:17| Comment(0) | 言葉 | 更新情報をチェックする