2020年06月03日

もじもじ


「もじもじ(もぢもぢ)」は、

はにかみ・気おくれ・遠慮などで、行動をためらったり、落ち着かなかったりしているさま、

の意とある(広辞苑)。

もじもじとしり込みする、
帰りたくてもじもじする、
もじもじしていないではっきり言いなさい、

といった使い方をする。

座に堪えがたく、身をもじる状に云ふ語、

というのがよく表している(大言海)。「もじる」は、

捩る、

と当て、

ねじる、
よじる、

意である。

身体をひねっているさま、

から、

もじもじ、

が生まれたのかと想像してしまう。江戸時代から現れる語、であるらしい(擬音語・擬態語辞典)。江戸時代は、

にじくじ、

という言い方でも、

こちへよれと手をとると、にじくじとして(浮世草子「男色十寸鏡(ますかがみ)」)、

と、「もじもじ」と同義を言い表した(仝上)。

「もじもじ」に似た言い回しに、

いじいじ、
うじうじ、

等々がある。「いじいじ」は、

いじけてふるまいがはっきりしないさま、

の意(広辞苑)だが、この擬態語「いじいじ」から、

いじける、

を動作化した語、

いじましい、

は、

そうした様子が哀れをさそうようであることを言う語、

とある(擬音語・擬態語辞典)。しかし「いじける」は、

怖(お)じけるの音轉、

とする説(大言海)もある。とすると、逆に、

おぢける→いぢける→いぢいぢ→いじいじ、

と変化したとも考えられる。

「うじうじ」は、

ためらうさま、

の意(広辞苑)だが、「いじいじ」が、

自分の能力や行動に対する自信のなさから、あるいは、他からの評価の低さを自覚するがゆえに、のびのびとふるまえにい様子を指すことが多い、

のに対して、「うじうじ」は、

迷いや決断力のなさから、行動をためらう様子を指すことが多い、

とある(擬音語・擬態語辞典)。

「もじもじ」は「うじうじ」と似ているが、「うじうじ」が、

迷いの気持ちがあるのに対して、

「もじもじ」は、

恥ずかしかったり遠慮したりする気持ちが根底にある、

とあり(仝上)、同じくためらうにしても、

「うじうじ」は逡巡している、

のに対して、

「もじもじ」は遠慮や羞恥している、

という微妙な含意の差になる。

「もじもじ」「うじうじ」に対して、「いじいじ」は、

劣等感やひがみの気持ちが根底にある、

とある(仝上)ので、「いじいじ」が一番いじけた状態、と言っていいのかもしれない。

大言海は、「うぢうぢ」に、

逡巡、

と当て、

怖怖(おぢおぢ)の転、おじく、うじく、

と例示している。ということは、「うじうじ」も「いじいじ」も、いずれも、

おじける→いじける、
おじく→うじく、

と、

怖じける、
怖じく、

という、

おそれ、
ひるむ、

意からきていることになる。ただ、「うじうじ」には、

迷う、

意の他に、

小さな虫などが、小刻みに絶え間なく動くさま、

の意でも使われ(擬音語・擬態語辞典)、そのためか語源には、

ウジムシ(蛆虫)の動くさま(幽遠随筆・国語本義)、

という説もある。江戸時代、両方の意を持つ、

うじつく、

という言い方もした。たとえば、

盗人のすっぱのと云ちらされてきょろりっとうぢついている(気後れしてためらっている)人じゃない(浄瑠璃「八百屋お七」)

というように(仝上)。

「もじもじ」「うじうじ」「いじいじ」は、どちらかいうとためらっている心理状態を表す擬態語だが、「ぐずぐず」、「もごもご」は、ためらっている行動・態度の、のろさを指し、価値表現がより際立っている。これについては、項を改める。

参考文献;
山口仲美編『擬音語・擬態語辞典』(講談社学術文庫)
大槻文彦『大言海』(冨山房)

ホームページ;http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm
コトバの辞典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/kotoba.htm#%E7%9B%AE%E6%AC%A1
スキル事典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/skill.htm#%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%AB%E4%BA%8B%E5%85%B8
書評;http://ppnetwork.c.ooco.jp/critic3.htm#%E6%9B%B8%E8%A9%95

posted by Toshi at 03:46| Comment(0) | 言葉 | 更新情報をチェックする