2020年06月19日

今出川豆腐


「今出川豆腐」は、

豆腐を醤油と酒で薄味に煮、しょうが・わさびを添えた料理、

とある(広辞苑)。別に、

豆腐を昆布のだし汁・酒・しょうゆで薄味に煮て、おろししょうが・わさび・かつお節・いったくるみなどを添えた料理(世界の料理がわかる辞典)、

四角に切った豆腐を酒・醬油の薄味で煮て、おろし生姜しようがや花がつおなどをそえた料理(デジタル大辞泉)

豆腐をコンブとともに酒、しょうゆで味をつけて煮、おろしショウガ、ワサビ、花かつお、ときにはクルミをあしらって食べる。京都今出川産の豆腐を使用したことに由来する(精選版日本国語大辞典)、

等々ともある。本筋は変わっていないようだが、微妙に細部が違う。その細部が鍵のように思われる。

今出川豆腐.jpg

(今出川豆腐 http://www.oboshi.co.jp/okan/recipe_04.htmlより)

天明二年(1782)出版の豆腐百珍(とうふひゃくちん)は、100種の豆腐料理の調理方法を解説している。そこでは、

豆腐料理を六段階に分類・評価、

しているhttps://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%B1%86%E8%85%90%E7%99%BE%E7%8F%8D、とされる。つまり、

尋常品:どこの家庭でも常に料理するもの。木の芽田楽、飛竜頭など26品、
通品:調理法が容易かつ一般に知られているもの。料理法は書くまでもないとして、品名だけが列挙されている。やっこ豆腐、焼き豆腐など10品、
佳品:風味が尋常品にやや優れ、見た目の形のきれいな料理の類。なじみ豆腐、今出川豆腐など20品、
奇品:ひときわ変わったもので、人の意表をついた料理。蜆もどき、玲瓏豆腐など19品、
妙品:少し奇品に優るもの。形、味ともに備わったもの。光悦豆腐、阿漕豆腐など18品、
絶品:さらに妙品に優るもの。ただ珍しさ、盛りつけのきれいさにとらわれることなく、ひたすら豆腐の持ち味を知り得るもの。湯やっこ、鞍馬豆腐など7品、

で、その詳細は別に譲るhttp://www.toyama-smenet.or.jp/~tohfu/tofuhyakutin.htmlが、「今出川とうふ」は、佳品の一品として、

昆布をしき鰹脯(かつほ)のだし汁と酒しほとにて烹ぬく也 中ほどより醤油さし烹調(ハウテウ)しかくし葛をひき碗へよそひてみ胡桃(くるみ)の碎きをふる也、

と載る(仝上)。「酒しほ」とあるのは、

調味用に使う酒のこと。酒だけを使う場合と、少量の塩を入れる場合があります、

とありhttp://www.chinjuh.mydns.jp/cgi-bin/blog_wdp/diary.cgi?mode=comment&no=1112

「かくし葛をひく」は、

材料に葛粉をはたいて茹でることで葛のコーティングを作ること。つるんとした食感になる。水で溶いた葛粉を汁にいれ加熱することでとろみをつけることの意味があるのですが、ここでは後者の意味にとって、なおかつ「隠し」なのでごく薄く、とろみと感じない程度、

とある(仝上)。要は、

昆布を鍋に敷き、
酒とかつおだしで豆腐を煮、
途中で醤油をさし味加減をし、
葛を少し入れ、
椀によそい、
砕いたクルミの実をふりかけ、

というプロセスになるhttp://www.toyama-smenet.or.jp/~tohfu/tofuhyakutin.html。たべもの語源辞典には、

豆腐を一切盛に切って、両方から面をとって、串二本を用い、焦げないように焼く。この焼いた豆腐は湯水で洗ってはいけない。洗えば水を含んで良くない。……つぎに松前昆布を洗って、ひきさき、鍋の底に敷いて、この焼いた豆腐を幾重にも平たく並べ、酒をたくさん入れ、上に松前昆布を蓋のようにおおい、内蓋をして、また本蓋をする。炭火にかけて、静かによく煮る。酒の気も抜け、膳部を出そうというときに、醤油をさして味加減をする。盛って出すときも、蓋をした昆布は取らずに、昆布の下から盛って出す。……酒は十分たくさん入れた方がよい。かつおぶしのだしは少し入れ、酒に混ぜてもよい。だしを多く入れてはいけない。上置きはわさびばかりである、

と、

豆腐大きさ二寸(六センチ)四方、厚さ三、四分(0.9~1.2センチ)に切って、面を取って、焼き、かつおぶし一節、酒一升、醤油を杓子に三杯入れ、昆布を鍋底に敷いて、炭火で(二時間くらい)煮て、味加減する、

と、当時の二種の料理法を紹介している。

「今出川豆腐」の命名のいわれには、

今出川というのは京都の地名でしょうか。今出川の料亭か屋台の名物料理といったところかと思います、

とかhttp://www.chinjuh.mydns.jp/cgi-bin/blog_wdp/diary.cgi?mode=comment&no=1112

昔、菊亭前大納言が関東に御下向なされたとき御馳走が何日も続いた。そのうちにこの豆腐料理をこしらえて勧めた。大変喜ばれ、たびたび所望された。そしてこれは何という料理かとお尋ねになると、ただ、豆腐の煮ものですと答えたところ、名がないのは残念だ、今出川とでもいったらよかろうと笑われたので、そう名付けた、

とか(延享二年(1745)「伝演味玄集」跋文)があるらしいが、菊亭膳大納言の関東下向は、享保(1716~36)か、それ以前であること、この料理は関東で作られたものであり京都の今出川とは無縁であることから、今出川家とは関係なく、今出川豆腐を使用したからでもない、とたべもの語源辞典は一蹴する。

参考文献;
清水桂一『たべもの語源辞典』(東京堂出版)

ホームページ;http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm
コトバの辞典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/kotoba.htm#%E7%9B%AE%E6%AC%A1
スキル事典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/skill.htm#%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%AB%E4%BA%8B%E5%85%B8
書評;http://ppnetwork.c.ooco.jp/critic3.htm#%E6%9B%B8%E8%A9%95

ラベル:今出川豆腐
posted by Toshi at 03:45| Comment(0) | 言葉 | 更新情報をチェックする