2020年06月23日

霜を履んで堅氷至る


「霜を履(ふ)んで堅氷至る」は、

堅き氷は霜を踏むより至る、

ともいう。

霜を見て氷を知る、

という言い方もあり、

葉落ちて天下の秋を知る、

と似た意味になる。

「霜を履んで堅氷至る」は、

霜が降りる時期になれば、やがて厚い氷が張る寒い冬がやってくる。少しでも災いの兆候が現れれば、やがて大きな災難がやってくることにいう、

とある(広辞苑)。物事には前兆がある、という喩えに使われる。また、

前兆を見たら、次に来るものに対してあらかじめ備えよ、

という意でもある(故事ことわざの辞典)。易経・坤が出典である。

霜を履みて堅氷とは、陰のはじめて凝るなり、その道を馴致すれば、堅氷に至るなり、

とある(易経)

(初六は)陰気の初めて生ずる時、その勢いはなお微弱であるが、放置すればやがて強勢になるから、早くにこれを警戒せねばならぬ。たとえば初めて霜を履む季節ともなれば、やがて堅い氷の張る時がやって来ることを予想すべきである、

と説く(仝上)。易は、

陰陽、

の二爻(こう)であり、これを重ねること三にして、

乾、兌(だ)、離、震、巽(そん)、坎(かん)、艮(ごん)、坤(こん)、

の八卦をなす、とある(易経)。爻とは効(なら)い交わる意。天地の現象に効って互いに交わり、また他に変ずるの意味、とある(仝上)。八卦を、自然現象に配当すれば、

天、沢(たく)、火(か)、雷、風、水、山、地、

となり、性情に当てれば、

健(健やかに強く)、説(えつ よろこび)、麗(付く)、動、入、陥、止、順、
となる(仝上)。

易に太極あり、これ両義を生ず、両義は四象を生じ、四象は八卦を生ず、

とあり、陰陽二爻から、八卦を組み合わせて、六十四卦三百八十四爻をもって、あらゆる一切の事物の現象の性体及びその作用をみようとする。そこには、天地の理から、神明の情、一身の修養、処世の要諦まで余すところなく含んでいるのだという(仝上)。

陰陽は無限の変化、

である。その変化作用を説こうとする。

一陰一陽、これを道と謂う、

と。陰となり陽となり、また陽となり陰となる無限の変化の原理を取り出して、その実相を説明するのである。

易は天地と準う。故に能く天地の道を弥綸(びりん もれなく包み込む)す。仰いでもって天文を観、俯してもって地理を察す、この故に幽明の故を知る。始めを原(たず)ね終わりに返る、故に死生の説を知る、

とある。

霜を履んで堅氷至る、

もまたそうした卦のひとつである。

「霜」は、「露」http://ppnetwork.seesaa.net/article/458783261.htmlで触れたことと重なるが、

霜は露の発生と同様,地表面が冷却することででき,その付近の温度が 0℃以下のときに霜となる。このとき気温は地表から 1.5mの高さではかっているため,気温が 3~4℃でも,地表面付近は 0℃以下となり霜ができる場合がある、

とある(ブリタニカ国際大百科事典)。

木の枝や地表より高いところにできる霜を樹霜といい,窓ガラスの内側にできる霜を窓霜(霜華)という、

ともある(仝上)。霜の形は、

雪の結晶と同じく六方晶系である。代表的なものには針状、羽毛状、樹枝状、板状、柱状、コップ状などがあるが、形のはっきりしない無定形のものが多い、

ともある(日本大百科全書)。これをメタファに、

かしらに霜をいただく、

というように白髪をいうこともある。これは、

霜毛、

というように「霜のように白い」という漢字の意味や、

星霜、

という漢字の含意から来たのかもしれない。

「霜」(漢音ソウ、呉音ショウ)は、

会意兼形声。「雨+音符相(縦に向かい合う・別々に並び立つ)」。霜柱が縦に並び立つことに着目したもの、

とある(漢字源)ように、「霜」の字は、どうやら、「霜柱」から作られたもののようであるが、別説は、

霜柱.jpg


形声文字です(雨+相)。「天の雲から水滴がしたたり落ちる」象形と「大地を覆う木の象形と人の目の象形」(「木の姿を見る」の意味だが、ここでは、「喪(ソウ)」に通じ(同じ読みを持つ「喪」と同じ意味を持つようになって)、「失う」の意味)から、万物を枯らし見失わせる「しも」を意味する「霜」という漢字が成り立ちました、

とあるhttps://okjiten.jp/kanji1974.html。個人的には、霜柱から来たとするのがいい気がする。確かに予兆と考えると、霜の気がしないでもないが、

霜を履んで堅氷至る、

は、霜柱にこそふさわしい気がするが、如何であろうか。

地面に張った霜.jpg

(地面に張った霜 https://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%9C%9Cより)

参考文献;
尚学図書編『故事ことわざの辞典』(小学館)
高田真治・後藤基巳訳『易経』(岩波文庫)

ホームページ;http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm
コトバの辞典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/kotoba.htm#%E7%9B%AE%E6%AC%A1
スキル事典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/skill.htm#%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%AB%E4%BA%8B%E5%85%B8
書評;http://ppnetwork.c.ooco.jp/critic3.htm#%E6%9B%B8%E8%A9%95

posted by Toshi at 03:31| Comment(0) | 言葉 | 更新情報をチェックする