2020年07月25日


「麹」は、酒さけ・味噌・醤油などに加工するため、

米こめ・麦むぎ・大豆といった穀類を蒸したものに、コウジカビなどの発酵に有効な黴かびを中心にした微生物を繁殖させたもの、

の意であるhttps://ja.wiktionary.org/wiki/%E3%81%93%E3%81%86%E3%81%98

「麹」(キク)は、

会意兼形声。「麥+音符掬(キク 掬手で丸く握る)の略体」。ふかした麦や豆を丸くにぎったみそ玉、

とある(漢字源)。「糀」(こうじ)は、国字。

会意。「米+花」・蒸し米の上に、花が咲いているように繁殖することを表す、

とある(仝上)。

糀の字をも用ゐるは、米花(黴)の合字、

とある(大言海)。

麹菌.jpg


「かもす」http://ppnetwork.seesaa.net/article/464017690.htmlで触れたように、「麹」「糀」両字の区別は,意味上ないが,

「糀」:米を醸造して作った物
「麹」:大豆・麦を醸造して作った物
「こうじ」を醸造するための元になる菌(種)のことも「麹」の漢字を使用しています。

と,ある味噌屋のサイトでは区別していたhttp://www.izuya.jp/daijiten/kouji-a_5.html。古くから利用されているのは、

黄麹、

で、

味噌、醤油、日本酒、酢、味醂などを醸す代表的な菌種、

とされるhttps://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%BA%B9

和語「こうじ」の語源は、

かびだち(黴立ち)→かむだち→かうだち→かうぢ(大言海・日本紀和歌略註・類聚名物考・箋注和名抄・名言通・音幻論=幸田露伴)・日本語源広辞典、

とするのが多数派である。確かに、平安中期の倭名抄(和名類聚抄)に、

麹、加無太知、

とあり、平安末期の類聚名義抄にも、

麹、カムタチ・カムダチ、

とあるが、しかし、

カビダチ(黴立)→カムダチ→カウダチ→カウヂと音韻変化した説が有力。中世の古字書にはカウジしかみられず、「ヂ」の仮名遣いに疑問の声もある(語源由来辞典)、
類聚名義抄などに「麹」を「カビダチ」(黴立ち)と訓ずるのに拠り、この転訛(カビダチ>カウヂ>コージ)とする説もあるが、このような変化は不規則であることに加え、「ヂ」で終わる語形は実際には確認されていないhttps://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%BA%B9

等々とする見方があり、断定しがたい。漢字側からは、

麹子(きくし)が訛って「コウジ」となり、日本語化した(漢字源)、

との見方があるが、

応神天皇のころ朝鮮から須須許理(すずこり)という者が渡来して,酒蔵法を伝えて,麹カビを繁殖させることを伝えた、

とある(たべもの語源辞典)ので,この説にも説得力がある。ただ、

かもす(醸す)の連用形「かもし」が、ウ音便化により、カモシ>カウジ>コージと、転訛した(https://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%BA%B9・語源由来辞典)、
カムシの転(語簏)、
口の中で噛んでつくったものであるから、カムダチである。カムダチ(醸立)がカムチとよばれ、コウヂとなった(たべもの語源辞典)、

とする説も、一応の説得力がある。特に、たべもの語源辞典の説は、

カビダチ→カムダチ→カウダチ→カウヂ、

の転訛ではなく、

カムダチ(醸立)→カムチ→カウヂ、

と、「醸す」を出発点とする考え方になる。

「かもす」は,

醸す,

と当てるが,古語は,

か(醸)む,

である(岩波古語辞典)。

もと,米などを噛んで作ったことから、

であり(仝上)、

カム(醸)は,口で噛むという古代醸造法、

らしい(大言海)。字鏡には

醸,造酒也、佐計加无、

名義抄(類聚名義抄)には、

醸、カム、サケカム、サケツクル、カモス、

とある。しかし、これは、

カム(噛む)はカム(嚼)に転義して食物を噛み砕くことをいう。米を噛んで酒をつくったことからカム(醸む)の語が生まれた。〈すすこりがカミし神酒にわれ酔ひにけり〉(古事記)。(中略)酒を造りこむことをカミナス(噛み成す)といったのがカミナス(醸み成す)に転義した。カミナスは,ミナ[m(in)a]の縮約で,カマス・カモス(醸す)になった、

と(日本語の語源)いうように,あくまで、

醸造の方法、

を指していて、これ自体は、「麹」の由来の説明にはなりそうもない気がする。それに,「かも(醸)す」という言葉から,それの原因になる「麹」を抽象化するほどの語彙力を、われわれはもたなかったのではないか、という気がしてならない。その意味では,「かもす」http://ppnetwork.seesaa.net/article/464017690.htmlで触れたことと同じく、やはり、

麹子(きくし)→こうじ,

の転訛が捨てがたい。

なお、「酒」http://ppnetwork.seesaa.net/article/451957995.html、「味噌」http://ppnetwork.seesaa.net/article/471703618.html、「醤油」http://ppnetwork.seesaa.net/article/471986028.html、については触れた。

参考文献;
清水桂一『たべもの語源辞典』(東京堂出版)
前田富祺編『日本語源大辞典』(小学館)
田井信之『日本語の語源』(角川書店)

ホームページ;http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm
コトバの辞典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/kotoba.htm#%E7%9B%AE%E6%AC%A1
スキル事典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/skill.htm#%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%AB%E4%BA%8B%E5%85%B8
書評;http://ppnetwork.c.ooco.jp/critic3.htm#%E6%9B%B8%E8%A9%95

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posted by Toshi at 03:59| Comment(0) | 言葉 | 更新情報をチェックする