2020年08月04日

かくや


「かくや」は、

覚弥(彌)、
隔夜、
覚也、

等々と当てる(広辞苑・たべもの語源辞典)。

種々の香の物の古漬を塩出しして細かく刻み、醤油などで調味したもの、

とある(仝上)。関西では、

贅沢煮、

という、ともある(日本語源広辞典)。寛政期の風俗などを記した「寛天見聞記」には、

八百善といふ料理茶屋……、かくやの香の物……は、春の頃より、いと珍しき瓜、茄子の、粕漬けを、切り交ぜにしたる也、

とある。料理屋に出るものは、単なる残り物や古漬けの活用とは違うようである。

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江戸時代の初め、徳川家康の料理人岩下覚弥の創始(広辞苑・日本語源広辞典)、

とも、

高野山の隔夜堂を守る歯の弱い老僧のために作られた(仝上)、

とも、

沢庵和尚の弟子覚也が始めた(江戸語大辞典)、

ともいわれ、諸説あるが、江戸時代のものらしく、

古なすにもり口のかくや、

とある(天明七年(1787)「総籬」)。「覚弥」説には、

東照公の料理人岩下覚彌、調じて供せしに、賞美ありしより名とす、岩下氏の家伝なる由なり(松屋筆記)、

という背景もある(大言海)。

なお、「香の物」については、「おしんこ」http://ppnetwork.seesaa.net/article/476447870.html、「沢庵」http://ppnetwork.seesaa.net/article/476431744.html、「糠味噌漬」http://ppnetwork.seesaa.net/article/476479225.html、で触れたでふれたが、「香の物」というのは、「おしんこ」http://ppnetwork.seesaa.net/article/476447870.htmlで触れたように、

「漬物」を、

こうこう(香々)、
おこうこう(御香々)、
こうのもの(香の物)、

等々と呼ぶのは、

こうのもの(香の物)、

からきている(仝上)。

「香の物」の「香」は、

味噌、

を指す(江戸語大辞典・https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%BC%AC%E7%89%A9・大言海・大日本国語辞典・碩鼠漫筆等々)、とする意見が大勢だが、たべもの語源辞典は、それを否定し、

においがたかいものということで香物とよぶ。奈良時代に漬物がはじまる。香(か)は気甘(きあま)、あましは、あーうましの意である。香物は、うまいにおいをもったたべものの意。大根・瓜など味噌の中につけて味噌の香気をうつしたので香物というせつがあるが、味噌だけでなく、塩・味噌・酒粕などに漬けた蔬菜でにおいのあるものを香物という、

とする。確かに一理あり、味噌だけではない気がするが、「味噌」を、女房詞で、

香、

と呼んだことは確かで、室町時代の大上臈御名之事には、

女房詞、汁のしたりのミソを、カウの水と云ふ、

とあり(大言海)、江戸初期の慶長見聞集には、

凡そ味噌と云ふことを香と云ふ、みそは、一切の物に染みて匂ひよく、味よき故に、香と名づけたり、

とある。また、雍州府志(1684)によると、

木芽漬はアケビ、スイカズラ、マタタビなどの新芽を細かく切って塩漬にしたもの、烏頭布漬はいろいろな植物の新芽をとりまぜて塩漬にしたものであった。室町期には、香(こう)の物、奈良漬といったことばが現れてくる。前者は、みその異名を〈香(こう)〉というところから、本来はみそ漬をいったことばだとされる、

とある(世界大百科事典)。ただ、だから、香の物が、

味噌漬、

の代名詞だったかどうかまでははっきりしない。岩波古語辞典には、

野菜を味噌・酒粕・糠・塩などで漬けた、

とある。

参考文献;
清水桂一『たべもの語源辞典』(東京堂出版)
大槻文彦『大言海』(冨山房)

ホームページ;http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm
コトバの辞典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/kotoba.htm#%E7%9B%AE%E6%AC%A1
スキル事典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/skill.htm#%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%AB%E4%BA%8B%E5%85%B8
書評;http://ppnetwork.c.ooco.jp/critic3.htm#%E6%9B%B8%E8%A9%95

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posted by Toshi at 04:08| Comment(0) | 言葉 | 更新情報をチェックする