2020年09月02日


「肴」は、

さかな、

と訓ます。「肴」(漢音コウ、呉音ギョウ)は、

会意兼形声。「肉+音符爻(コウ 交差する)」で、料理した肉を交差させて俎豆(ソトウ)の上に並べたもの、

とあり(漢字源)、

食べるために煮た魚肉、

の意である。

飲食の時に食べる副産物、

の意で用いるのはわが国だけである(漢字源)が、

酒肴、
珍肴、

という言葉があり、

穀物以外の副食物、

の意もあり(字源)、

酒の肴、

ということが、原義から外れているとは必ずしも言い難い気もする。「さかな」に当てる漢字には、

魚、

があるが、「魚」(漢音ギョ、呉音ゴ)は、

象形文字。骨組みの張った魚の全体を画いたもの、

で(漢字源)、いわゆる「さかな」の意であるが、

鱗と鰭のある水族、

を指し(字源)、

池魚、
海魚、

等々と使う。「さかな」の意味では、

鮭、

の字もあるが、「鮭」(漢音ケイ、カイ、呉音ケ、ゲ)は、

会意兼形声。「魚+音符圭(ケイ 三角形に尖った形がよい)」

とある(漢字源)。日本語では、「さけ」にあてるが、

鮭肝死人、

とあるように、

ふぐ、

を指し、さらに、

鮭菜、

というように、

調理せる魚菜の総称、

の意味がある(字源)。

さて、「さかな」であるが、

酒の肴、

という言い方はいけない、などというのは、「さかな」の語源が、

酒菜(さかな)の意、

とされるから(広辞苑)である。つまり、「肴」は、平安時代から使われ、

サカは酒、ナは食用の魚菜の総称(岩波古語辞典)、
酒+ナ(穀物以外の副食物)、ナは惣菜の意(日本語源広辞典)、
「菜」(な)は、副食物のことを指し、酒に添える料理(酒に添える副菜)を「酒のな」と呼び、これが、なまって 「酒な」となり、「肴」となったhttp://hac.cside.com/manner/6shou/14setu.html
「酒菜」から。もともと副食を「な」といい、「菜」「魚」「肴」の字をあてていた。酒のための「な(おかず)」という意味である。「さかな」という音からは魚介類が想像されるかもしれないが、酒席で食される食品であれば、肴となるhttps://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%82%B4

等々が一般的とされる。大言海も、同趣で、

サカは酒なり、ナは食用とする魚菜の総称、

とし、

國語、晉語「飲而無殽」注「殽俎實(モリモノ)也」、広韻「凡非穀而食者曰肴、通作殽」

を引いて、

酒を飲むとき、副食(アハセ)とするもの、魚、菜の、調理したるもの、其外、すべてを云う、

とし、

今、専ら、魚を云ふ、

とあるが、「酒の肴」というとき、必ずしも「魚」を指さない。その意味では先祖返りしている。酒にあてがうことから、

アテ、

と呼ぶし、手でつまんで簡単に食べられるようなおかずだったから、「つまみもの」と呼んでいたので、

つまみ(おつまみ)、

ともいうhttps://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%82%B4。その意味から派生して、

酒を飲む際に共に楽しむ様々な対象(歌舞や面白い話題など)、

も「肴」と呼ばれる(仝上)。

「菜」(サイ)は、

会意兼形声。「艸+音符采(サイ 採=つみとる)」。つみなのこと、

とある(漢字源)。

葉、茎を食用とする草本類の総称、

である(仝上)。和語では、

な、

とも訓ませ、

酒飯に添えるものの総称である。

魚・鳥・草木、食べるものは、みな菜であって、ナという、

のであり(たべもの語源辞典)、だから、酒を飲むときの「菜」だから、

サケのナ→サカナ、

となる。逆にいうと、「な」は、

肴、
とも、
菜、
とも、

当てる。「な(菜)」は、

肴(な)と同源、

なのであり(広辞苑)、「菜」と「肴」と漢字をあてわけるまでは、

な、

で、

野菜・魚・鳥獣などの副食物、

を全て指し、

さい、
おかず、

の意であった(岩波古語辞典)。かつては、

おめぐり、
あわせもの、

とも言った。「あわせもの」は、

飯に合わせて食うことから、

いう(日本食生活史)。古今著聞集に、

麦飯に鰯あはせに、只今調達すべきよし、

とある(仝上)。

「菜」の字を当てることで、「菜(な)」は、

葉・茎・根などの食用とする草木、

と分離し、今日では、「菜」(な)は、

あぶらな類の葉菜、

に限定するようになっている(広辞苑)。そして、

魚類のことを「さかな」と呼ぶのは、肴から転じた言葉であり、酒の肴には魚介類料理が多く使用されたためである。古くは「うを」(後に「うお」)と呼んでいたが、江戸時代頃から「さかな」と呼ぶようになった、

とあるhttps://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%82%B4。もともと「魚」の意では、

イヲ、
ウヲ、

が用いられていた(岩波古語辞典)。名義抄には、

魚、ウヲ、俗云、イヲ、

とある。

江戸時代以降、次第にサカナがこの意味領域を侵しはじめ、明治以降、イヲ・ウヲにとってかわるようになった、

とある(日本語源大辞典)。江戸語大辞典では、「魚」の意味で、「さかな」に、

魚、

を当てている。文政八年(1825)の風俗粋好伝には、

鮮魚売(さかなうり)、

天保九年(1838)の祝井風呂時雨傘には、

魚問屋(さかなどんや)、

と使われて、「魚」(うお)の意となっている。イヲ、ウヲから「サカナ」に転じたとき、「魚」と当てて、区別したのかもしれない。

ちなみに、平日の菜を、京阪では、

飯(ばん)ざい、

といい、江戸では、

惣ざい、

といった(たべもの語源辞典)。

ビールのアテ.jpg

(ビールのアテ https://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%82%B4より)

参考文献;
清水桂一『たべもの語源辞典』(東京堂出版)
大槻文彦『大言海』(冨山房)
渡辺実『日本食生活史』(吉川弘文館)
前田富祺編『日本語源大辞典』 (小学館)
前田勇編『江戸語大辞典 新装版』(講談社)

ホームページ;http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm
コトバの辞典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/kotoba.htm#%E7%9B%AE%E6%AC%A1
スキル事典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/skill.htm#%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%AB%E4%BA%8B%E5%85%B8
書評;http://ppnetwork.c.ooco.jp/critic3.htm#%E6%9B%B8%E8%A9%95

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posted by Toshi at 04:13| Comment(0) | 言葉 | 更新情報をチェックする