2020年09月18日


「葛」は、「九十九」http://ppnetwork.seesaa.net/article/471056963.htmlで触れたように、

くず、
かずら、
つづら、

と訓ませるが、

つづら、

と訓ませると、

ツヅラフジなどの野生の蔓植物の総称、

だが、

ツヅラフジの別称、

でもあり(動植物名よみかた辞典)、

かずら、

と訓ませると、

蔓性植物の総称、

とある(仝上)。しかし、

くず、

と訓むと、秋の七草の「くず」である。

「葛」(漢音カツ、呉音カチ)は、

会意兼形声。「艸+音符曷(カツ 水分がない、かわく)」。茎がかわいていてつる状をなし、切っても汁がでない植物、

とある。「くず」や「つる」の意で、「くずの繊維で織ってつくった布(かたびら)」の意で、「つづら(葛籠)」や「かづら」の意味で使うのはわが国だけである。

ここでは、

くず、

と訓ませる「葛」である。「くず」は、

くずかずら、

ともいうが、むしろ、

くず葛(かづら)と云ふが、正しきなるべし、

とある(大言海)。この根は、

生薬の葛根湯、

として用い、また

葛粉、

を採る。「くず」の繊維で、

葛布、

を織り、蔓で、行李の、

つづら(葛籠)、

をつくる(広辞苑)。大和本草に、

葛粉は、吉野よりのもの最もよし、

とあり、本草綱目にも、

葛粉、城州にては、和州の芳野葛を上品とす、

とあり、

國栖葛(くずかづら)なるべきかと云ふ、いかが、

と大言海は多少疑問符をつけているが、

奈良県国栖の地名にちなむという(広辞苑)、
吉野のクズ(国樔)のものを良しとしたところから(古今要覧稿・和訓栞)、
グズ(国栖)のかづら(葛)の意(日本語源広辞典)、

と、地名の国栖を語源とする説がある。しかし、

漢音のカツ(葛)をクツ・クヅ・クズと転音した(日本語の語源)、
漢音「葛」katの音韻変化、kat―kut―kuz(日本語源広辞典)、

と、「葛」の漢音の変化、とする説もある。その他、

スイガヅラの上下略の転(滑稽雑誌所引和訓義解)、
クリ(栗)の異名クジの転呼。クジは美味の義の朝鮮語クスハタからか(日本古語大辞典=松岡静雄)、
根を粉にして用いることから、細屑の義(東雅・百草露)、

等々あるが、理屈ばったものは大概外れている。地名か漢音の音韻変化のいずれか妥当思うが、

葛=国栖、

とみなされていた、ということは大事かもしれない。特に、

国栖、

は、

国樔、

とも当て、

國主(くにぬし)の、くにし、くにす、

と転じた(大言海)、

くにすの約、

である(岩波古語辞典・大言海)。

古事記(応神)に、吉野之國主(くにす)等とあり、神代よりの地祇(クニツカミ)の裔なり。国栖(くづ)とも云ふは、くにすの約なり……、常陸國の国巣も、土着の地主の義なり、是を土蜘蛛と云ふも、土公(つちぎみ)にて、地主の事なり、

とあり(大言海)、「国栖」は、特殊な意味がある。

上代、日本各地に散在し、非農耕民的な生活様式によって、大和政権から異種族と目された。特に大和國吉野川の川上に住んでいた人々をさす(日本語源大辞典)。

他の村落と交通せず、在来の土俗を保持し、奈良・平安時代には、宮中の節会に参加、贄を献じ、笛を奏し、口鼓を打って風俗歌を奏することが例となっていた、

とある(広辞苑)。古事記(神武天皇)には、

磐排別(イハオシワク)之子、此則吉野國巣部(くにすら)始祖也、

とあり、姓氏録の大和國神別、地祇、国栖(くにす)に、

神武天皇行幸吉野時、川上有遊人、……喚問、答曰、石穂押別神(いわほおしわけ)之子也、爾時詔賜国栖名、

とあり、応神紀(19年5月)には、

十月の戊犬の朔に吉野宮に幸す。時に国栖人(くずびと)来朝。因り醴酒を以て、天皇に献りて、

とあり(大言海)、

人となり淳朴で山の菓やカエルを食べたという。交通不便のため古俗を残し、大和朝廷から珍しがられた。その後国栖は栗・年魚(あゆ)などの産物を御贄(みにえ)に貢進し風俗歌を奉仕したようで、『延喜式』では宮廷の諸節会や大嘗祭において吉野国栖が御贄を献じ歌笛を奏することが例とされている、

とあるhttps://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%9B%BD%E6%A0%96

そう考えると、

国栖の葛、

には、意味があると思う。

葛.jpg


なお、「なでしこ」http://ppnetwork.seesaa.net/article/464868151.html、「おみなえし」http://ppnetwork.seesaa.net/article/477396903.html?1600285923は触れた。

参考文献;
大槻文彦『大言海』(冨山房)
前田富祺編『日本語源大辞典』 (小学館)

ホームページ;http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm
コトバの辞典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/kotoba.htm#%E7%9B%AE%E6%AC%A1
スキル事典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/skill.htm#%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%AB%E4%BA%8B%E5%85%B8
書評;http://ppnetwork.c.ooco.jp/critic3.htm#%E6%9B%B8%E8%A9%95

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posted by Toshi at 04:29| Comment(0) | 言葉 | 更新情報をチェックする