2020年10月10日

カニ


「カニ」は、

蟹(蠏)、

と当てる。「蟹(蠏)」(漢音カイ、呉音ゲ)は、

会意兼形声。「虫+音符解(別々に分解する)」。からだの各部分がばらばらに分解する「カニ」、

である(漢字源)。本草和名に、

蟹、加爾、

と載る。

「カニ」の「ニ」は、ウニhttp://ppnetwork.seesaa.net/article/477785361.htmlで触れた、赤い色を表す「丹」の「ニ」である。で、

カニのカは殻のこと、「ニ」は「あか」である。殻が赤いからカニというとか、煮ると殻が赤くなるからだとか、背中が赤いからカニという、

とする説がある(たべもの語源辞典・日本釈名・東雅・柴門和語類集)。

カは背中(背中)カ。ニはニ(丹)の義(和句解)、
カニ(甲丹)の義(言元梯・日本語源広辞典)、
皮丹の義(名言通・和訓栞)、

等々も類似の説である。他には、

甲が堅く、よく逃げることからカタニゲ(堅逃)の略(本朝辞源=宇田甘冥)、
かたかたへ、のきさる意からカタノキの反(名語記)、
能力を兼ね備える意味の「かぬ」の変化(語源由来辞典)、
カニは海よりも川蟹の例が古くから見られることから「カハニハ(河庭)」が変化した(仝上)、

等々あるが、少し苦しい。

確かに、「カニ」の「ニ」が、

丹、

つまり、

赤、

である。「丹」は、

ニ(土)と同根、

とあり、土器の材料や顔料にする、

赤土、

を指した(岩波古語辞典)。だから、

カニのニは丹(あか)であるのは間違いない。カはカニが赤いという特徴をとらえたとき、どこが赤いかといえば、甲羅である。要するに、「カ」は、皮か甲か背中かと論じられているが、とにかくその甲羅をさしたものである、

として、

カニは甲赤(カニ)、

だとしたのはたべもの語源辞典である。確かに、甲羅で括れば、

甲+丹、

となる。

イシガニ.jpg


カニは世界で約五千種、国内でも千種ある、と言われるが、古事記にも、応神天皇の歌として、

この蟹や いづくの蟹 百伝ふ 角鹿(ツヌガ)の蟹 横去らふ いづくに到る、

と詠われるほど馴染みのものだ。淡水の、

澤ガニ、

以外の、海水の、

毛ガニ、
ガザミ(ワタリガニ)、
イシガニ、
ズワテイガニ、

等々がある。わかりにくいのは、

ズワイガニ、

の語源である。

オオズワイガニ.jpg


「ズワイガニ」は、オスとメスは大きさが異なるために多くの漁獲地域でオスとメスの名前が異なる。オスは、

エチゼンガニ、マツバガニ、ヨシガニ、タイザガニ、

等々、メスは、

メスガニ、オヤガニ、コッペガニ、コウバコガニ、セコガニ、セイコガニ、クロコガニ、

等々と呼ばれるhttps://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%BA%E3%83%AF%E3%82%A4%E3%82%AC%E3%83%8B

「ズワイガニ」は、

「ズワイ」は、細い木の枝のことを指す古語「楚(すわえ、すはえ)」が訛ったものとされ、漢字で「津和井蟹」とも書かれる、

とある(日本語源広辞典・仝上)。「すわえ」は、

すはえの轉、

とあり(大言海)、「すはえ」は、

楚、
楉、
氣條、

等々と当て(岩波古語辞典・大言海)、

すくすくと生えたるものの意、

であり、

木の枝や幹などから真っ直ぐに細く伸びた若枝、

の意である(仝上)。訛って、

ずはえ、
ずはい、
すわい、

等々ともいう(大言海)。甲羅から伸びた脚の形を指して言ったものと思われる。

因みに、「越前ガニ」の名は、永正一五年(1511)3月20日の三条西実隆の日記に「伯少将送越前蟹一折」翌21日の日記には「越前蟹一折遣竜崎許了」と書かれているのが嚆矢とされ、既に安土桃山時代、越前ガニというブランド名が付き、京都まで運ばれていたことがわかるhttps://www.kani-echizen.com/blog/?p=126。「ズワスガニ」の初出は、江戸時代の享保年間の『越前国福井領産物』である、とか(仝上)。

また、山陰地方・鳥取県では、日本海で水揚げされる成長したズワイガニのオスのこと「松葉ガニ」と呼ぶが、これは、

細長い脚の形や脚の肉が松葉のように見える、
食べ終わったあとに残る筋が松の葉に似ている、
浜辺に落ちている松の葉を使って焼いたり茹でたりして食べた、
活きた松葉ガニの身を氷水につけると松の葉のように広がるため、

等々あるhttps://www.keichomaru.jp/?p=1123が、「ズワイガニ」が木の枝が真っ直ぐ伸びた意の楚蟹(すわえがに)」が転じたものであるように、松の葉のまっすぐ伸びたのに準えたとみていいのではないか。

ついでながら、「タラバガニ」は、「ズワイガニ」が、

十脚目ケセンガニ科(旧分類ではクモガニ科)ズワイガニ屬、

に対し、

十脚目(エビ目)異尾下目(ヤドカリ下目)タラバガニ科タラバガニ属、

で、生物学上はヤドカリの一種https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%BF%E3%83%A9%E3%83%90%E3%82%AC%E3%83%8Bで、カニではない。

「タラバガニ」は、

鱈場蟹、

と当てられ、

生息域がタラの漁場(鱈場[たらば])と重なる、

ことに由来している(日本語源広辞典・語源由来辞典)。

参考文献;
前田富祺編『日本語源大辞典』 (小学館)
清水桂一『たべもの語源辞典』(東京堂出版)
大槻文彦『大言海』(冨山房)
大野晋・佐竹 昭広・ 前田金五郎編『古語辞典 補訂版』(岩波書店)

ホームページ;http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm
コトバの辞典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/kotoba.htm#%E7%9B%AE%E6%AC%A1
スキル事典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/skill.htm#%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%AB%E4%BA%8B%E5%85%B8
書評;http://ppnetwork.c.ooco.jp/critic3.htm#%E6%9B%B8%E8%A9%95

ラベル:カニ
posted by Toshi at 04:32| Comment(0) | 言葉 | 更新情報をチェックする