2020年10月25日

インチキ


「インチキ」は、

陰痴気、

と当てたりする(隠語大辞典)が、

トランプでインチキする、
インチキな手を使う、

等々というように、

ばくちで、相手の目をぬすんで不正を行うこと、

の意と、それを広く、

いんちきな品物、
いんちき医者、

等々というように、

ごまかし、
手抜き、
不正、
無責任、
本物でないこと、
にせもの、

の意とがある(広辞苑・デジタル大辞泉)。

テキヤ仲間の語としては、大正以前からあったらしいが、一般化したのは昭和初期とみられる、

とか(日本語源大辞典)、

昭和初年ごろから「いかさま」にかわり一般語化したという、

とか(デジタル大辞泉)あるので、限定された前者の意が、一般的な不正の意に広がった、とみられる。

確かに、

初め博徒仲間の言葉であつた、

とあり(隠語大辞典)、

数人共謀して行う詐欺賭博のことを、

いんちきし、

ともいい、

数人共謀して行ふ詐欺賭博を云ふ。又は単に「虚偽」と云ふ様な軽い意にも用ひられる。「さぎとばく」に同意。
昔から博徒、スリ等の間に用ゐられて来たが、トリツクを使つたり、イカサマをしたりする事をいふ。インチキ賭博などいひ、今日では凡てのカラクリある出鱈目なものに使はれてゐる。例へばインチキ会社。インチキな品。学生間ではカンニングのこと、

とあるが、必ずしも、

不正手段で勝負を争ふこと、
いかさま、

のみを指さず、既に、広く、

ごまかしの事にいふ、

とあり(仝上)、広く、

ごまかし、

の意味でも使われていたようである。

「インチキ」の語源は、いくつかあり、

安斎随筆、印地鎗の図説に見える、遠江国小笠郡の方言で、餌を用いない釣針のことをインチキ(餌(え)無き鉤(ち)の意か)から(広辞苑)、
イカサマのイ(イカ)や穴一、一六勝負のイチなどに、排斥・軽侮の意をもつ接尾語チキが付いた(コンチキ、トンチキ、ヘンチキのチキ、またはポンツク、ケンツクのツク、トンテキのテキと同類)もの(国語学叢論=新村出・広辞苑・日本語源広辞典・語源由来辞典)、
原語遊戯の一つに、第一音節にンチキを付ける方法があり、それからイカサマをインチキといった(猫も杓子も=楳垣実)、
人を瞞着することをインチクという福井の方言が、テキヤによって全国に伝搬し、東京風に訛ってインチキとなった(すらんぐ=暉峻康隆)、
昭和初年マニラ辺にいた商社員がタガログ語で中国人の意のIntsikという語を輸入して、新聞社などから使い始めたとの説がある。しかし大正四年刊『隠語輯覧』にすでに掲載している語であるから、年代的に矛盾する(外来語辞典=楳垣実後)、

等々から考えて、普通には、

トンチキ、
コンチキ、
ヘンチキ、

のように「チキ」を付けたと見るのが妥当だが、「イン」が、「イカサマ」の「イ」というのは、どうなのだろう。代案はないのだが。

トンチキは「頓的(とんてき:バカみたいだ)」、ヘンチキは「変的(へんてき:ヘンだ)」が変化したものと見られる、

とある(笑える国語辞典)ので、憶説だが、

イカサマ的→イカ的→イン的→インチキ、

といった転訛がありえるかもしれない。それと、

「インテキ」という言葉はなさそうなので、「インチキ」の場合、トンチキやヘンチキにならって「インチキ」と変化したのではないか、

と推測すること(仝上)も可能である。

参考文献;
前田富祺編『日本語源大辞典』 (小学館)

ホームページ;http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm
コトバの辞典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/kotoba.htm#%E7%9B%AE%E6%AC%A1
スキル事典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/skill.htm#%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%AB%E4%BA%8B%E5%85%B8
書評;http://ppnetwork.c.ooco.jp/critic3.htm#%E6%9B%B8%E8%A9%95

posted by Toshi at 04:31| Comment(0) | 言葉 | 更新情報をチェックする