2020年10月31日

クワイ


「クワイ」は、

慈姑、

と当てる。オモダカ科の水生多年草であるオモダカの変種(栽培品種)とされ、中国原産である(広辞苑)。別名、

田草、
燕尾草、
クワエ、

ともいうhttps://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%AF%E3%83%AF%E3%82%A4。ただ、後述するように、田草、燕尾草の呼称は、クロクワイとの混同と思われる。

平安初期に日本に渡来した、

とある(たべもの語源辞典)が、

クワイは奈良時代には中国から渡来していた(慈仙と呼ばれていた)、

ともあるhttp://www2.odn.ne.jp/shokuzai/A2003/Kuwai.htm

青森県亀ヶ岡の泥炭層から三つの壺にいっぱい詰まったクロクワイが発見された。縄文式土器文化時代の人たちもすでに食用にしていた、

とされる(たべもの語源辞典)。このクワイは、後述する「クロクワイ」であり、渡来したのが、今日の「クワイ」、「シロクワイ」を指す。

実は、平安時代中期の辞書『和名鈔』には、

烏芋 久和井、生水中澤冩之類也、

とあるが、大言海は、

烏芋は、本草和名に、久呂久和井とありて、當らず、

とする。「烏芋」は、

クワイ、

とも訓むが、

オオクログワイ、
クログワイ、

と訓み、別種となる。しかし、室町時代の「庭訓往来」にも、

烏芋-久和井、

と併記されているように、室町時代まではクワイは烏芋(クログワイ)の事を指していたようである。やがて江戸時代の『料理物語』(1643)、『毛吹草』(1645)などで、

クワイにクロとシロの2種類がある、

と書かれる時代を経て、ようやく『和漢三才図会』(1712)で、

烏芋-クロクワイ、
慈姑-シロクワイ、

と整理されるに至ったhttp://www2.odn.ne.jp/shokuzai/A2003/Kuwai.htm。江戸時代になって、「クワイ」が食用として普及してからのようである。

クワイ.jpg

(「和漢三才図会(1712)」の、「烏芋-クロクワイ」「慈姑-シロクワイ」 http://www2.odn.ne.jp/shokuzai/A2003/Kuwai.htmより)

「クワイ」は、

クロクワイと区別してシロクワイと呼ばれる、

とある(たべもの語源辞典)。両者の区別は、「クロクワイ」は、

カヤツリグサ科ハリイ属。烏芋(からすいも)、田唐芋(たがらいも)とも呼ばれます。日本では関東、北陸から九州の池・沼の岸辺に自生しているストロー状の草。芋の方は中身は白いのですが表面は黒っぽい。生食もされたようです。中国料理でよく炒め物に使われるシャリシャリした歯ごたえのクワイは、近縁のイヌクログワイ(オオクログワイ、シログワイとも呼ばれるので混乱します)です、

とありhttp://www2.odn.ne.jp/shokuzai/A2003/Kuwai.htm、「シロクワイ」つまり「クワイ」は、

オモダカ科オモダカ属の多年生の水生植物。オモダカ(面高)は全国の水田で普通に見られた雑草です。世界中の温帯・熱帯に広く分布していますが、食用として改良を加えたのは中国です。 麦畑の雑草だった大根を食用に改良したのも中国。この知恵と努力には本当に頭が下がります。 白クワイ、青クワイ、吹田クワイの3種があります、

とある(仝上)。

青色の方が味が良い、

らしい(たべもの語源辞典)。

クワイの葉.jpg


さて、「クワイ」の語源であるが、

噛破集(クヒワレキ)の義にして、葉の形に云ふか(大言海)、
クリワカレヰ(栗分率)の義(名言通)、
根は黒くて丸く、葉は藺(いぐさ)に似ているところからクワヰ(黒丸藺)の義か(和字正濫鈔)、
クアヰ(顆藍)の義(言元梯)、
味が栗に似ているところから、クハヰグリの略、ハヰは若い意(滑稽雑誌所引和訓義解)、
水生であるところからカハイモ(河芋)の転略か(和語私臆鈔)、
食べられるイ(燈心草)の意(牧野新日本植物図鑑)、
クワ(固、コワ)+ヰ(ヱ えぐい)。えぐみのある固い芋(日本語源広辞典)、
農機具の鍬に似ていることから「鍬芋」(くわいも)、それが転訛してクワイとなったhttps://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%AF%E3%83%AF%E3%82%A4

等々諸説ある(日本語源大辞典・たべもの語源辞典)。

クワ(固、コワ)+ヰ(ヱ えぐい)、

も捨てがたいが、たべもの語源辞典は、

クワイは根が黒くて丸く、葉が藺(いぐさ)に似ているところから、クワイ(黒丸藺)という説を採りたい、

とする。

一つの根に毎年一二子を生じ慈母が諸子に乳を与えるようであるところから慈姑と書いてクワイとした。慈姑の姑は母のことである、

とする(たべもの語源辞典)。これが縁起物として重宝された由来でもあるが、

食える藺という意味でクワイになったという説が正しそうです。かなで"くわゐ"と書くのはこの名残なのでしょう、

を取る説もあるhttp://www2.odn.ne.jp/shokuzai/A2003/Kuwai.htm。しかし、「クワイ」は、

地栗、

の別名がある。となれば、

味が栗に似ているところから、クハヰグリの略、ハヰは若い意、

も捨てがたい。僕は、個人的には、

クワ(固、コワ)+ヰ(ヱ えぐい)、

とする説が、自分の実感とあう気がする。

クワイの塊茎.jpg


炊いて加工する時は、蓚酸石灰を含んでえぐいので、炊く前に茹でこぼす必要があります。本草食鑑(1697年)にも、「煮熟で食べると、麻渋が抜けて、喉を刺激しない。灰湯で煮るのも佳い」とあります、

とあるのだからhttps://ameblo.jp/tachibana2007/entry-10155482913.html

参考文献;
清水桂一『たべもの語源辞典』(東京堂出版)
大槻文彦『大言海』(冨山房)
前田富祺編『日本語源大辞典』(小学館)

ホームページ;http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm
コトバの辞典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/kotoba.htm#%E7%9B%AE%E6%AC%A1
スキル事典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/skill.htm#%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%AB%E4%BA%8B%E5%85%B8
書評;http://ppnetwork.c.ooco.jp/critic3.htm#%E6%9B%B8%E8%A9%95

ラベル:クワイ 慈姑
posted by Toshi at 04:16| Comment(0) | 言葉 | 更新情報をチェックする