2020年11月06日

すっとこどっこい


「すっとこどっこい」は、

ばかやろう、

と同類の罵り言葉であるが、元は、

ばかばやしの囃しことば、

である(広辞苑)。「馬鹿囃子(ばかばやし)」は、

神社などの祭礼の山車(だし)などの上で奏する祭り囃子、

で、

大太鼓・締太鼓(付太鼓)・笛・摩鉦(すじがね チョンギリ)を用いるにぎやかな囃子で、多くおかめ・ひょっとこなどの面をつけて踊る、

とあり(大言海・http://www.worldfolksong.com/kotowaza/suttoko-dokkoi.html)、

屋台囃子、

ともいう(デジタル大辞泉)。特に、関東での、

祭囃子(まつりばやし)の一つ、

とされ、

おかめや「ひょっとこ踊り」も合わせて演じられる、

とあるhttp://www.worldfolksong.com/kotowaza/suttoko-dokkoi.html。囃子詞は、例えば、北海道民謡『ソーラン節』でいえば、

ヤーレン ソーラン、

ハー ドッコイショー ドッコイショ、

のように、歌詞の合間に合いの手のように入れる意味のない掛け声で、現在、「すっとこどっこい」をそのまま囃子詞として用いている地域はないが、それに類似した、

トコドッコイ、

という掛け声を屋台の曳き回しの際に用いている地域が遠州地方にある(仝上)、という。名古屋市に伝わる座敷歌『名古屋甚句』(なごやじんく)では、囃子詞(ことば)として、

トコドッコイ、

が、

アーエ 宮の熱田の 二十五丁橋で エー
アー 西行法師が腰をかけ 東西南北見渡して
これほど涼しいこの宮を
誰が熱田と ヨーホホ アー 名を付けた エー
トコドッコイ ドッコイショ

と用いられている、とある(仝上)。「馬鹿囃子」は、

若囃子(わかばやし)の転訛、

とある(大言海)。「若囃子」は、

享保(1716~36)の頃、武蔵葛西金町、香取明神の神主能勢環、村内の若者を集めて若囃子と云ふ一風の囃子を教へ、祭礼に出す。後宝暦三年(1753)、千住に賣女屋の許可あり、代官伊奈半左衛門、若者共の遊興を憂へて、大いに彼の囃子を奨励してより盛んになり、宝暦十二年(1762)より江戸の山王、及、神田明神の祭礼の山車に用ゐられたり。然るに千住の賣女屋、営業の邪魔なるより、罵りて此若囃子を馬鹿囃子と云ひしより、一般に馬鹿囃子の名、弘まれり。若殿様をばかとのさまなどと云ふが如し、

とある(大言海)。この囃子は、

大太鼓一人、締(しめ)太鼓(付太鼓)二人、ちゃんぎり(摩鉦(すりがね))一人、笛一人、別に、手替三人にて、囃子八枚と云ひ、後に祭礼終日につき、大太鼓、ちゃんぎり、手替各一人、笛手替二人にて、一組合十二人になると云ふ、

ものであり(仝上)、

鎌倉拍子、
品川拍子、

などをとって撃った、という(仝上)。「鎌倉拍子」はわからなかったが、「品川拍子」は、

神輿が渡御するときの囃子となる音楽で、大拍子と呼ばれる桶胴の締め太鼓を竹で作った撥でたたき、俗称トンビと呼ばれる篠笛によって演奏されます、

とありhttp://yukiwakai.or2.ne.jp/daibyoushi/index.htm、多くの曲目があるが、普通は、

「打込み」「屋台」「昇殿」「鎌倉」「四(し)(仕)丁目(ちょうめ)」「屋台」(切(きり))の順で演奏する、

とある(日本大百科全書)。

馬鹿囃子.jpg


こうした「若囃子」は、

里神楽から脱化したもの(広辞苑)、
里神楽から変じたもの(大言海)、

という。「里神楽」は、

禁中の御神楽(みかぐら)に対して、諸社や民間で行う神楽、

を指す。

さて、「すっとこどっこい」の語源だが、

「すっとこ」は「裸体」、「どっこい」は「どこへ」の意で、裸同然の格好でうろつく者を罵ったところからきた(日本語俗語辞典)、

という説がある。「すっとこ」自体に、

はだかのこと、
醜い男をののしっていう、

の意味があることはある(精選版 日本国語大辞典)。別に、「すっとこ」には、

すっとこ被(かぶり)、

という言葉があり、

馬鹿囃子のひょっとこなどが被る手ぬぐいのかぶり方。手ぬぐいを広げて頭をすっぽり包み、顔を出して、顎の部分でその手ぬぐいを結ぶ。ひょっとこかぶり、

の意とする(仝上)。「すっとこ」は、

多くおかめ・ひょっとこなどの面をつけて踊る、

という馬鹿囃子につながってくるhttp://www.worldfolksong.com/kotowaza/suttoko-dokkoi.html。別に、「すっとこかぶり」は、

素男被り(すっとこかぶり)、

とも当て、

頬被りの形で、手拭をぴったりと額に付け、顔の横は耳を隠さずに出すようにする。安来節どじょうすくい踊りの時や滑稽芸で人を笑わせるためや、歌舞伎などの演劇で三枚目を暗示させるために用いる被り方。異説として、この「すっとこ被り」を逆さにして、顎から回し頭頂部で結んだ滑稽を演出した被り方を南瓜被り・唐茄子被りと言う説もある、

とありhttps://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%89%8B%E6%8B%AD、「素」と当てるところには、

はだか、

の意の「すっとこ」の含意もある。

ひょっとこの面.jpg


ついでながら、「ひょっとこ」は、

潮吹き面(しおふきめん)、

ともいい、

竈(かまど)の火を竹筒で吹く火男(ひおとこ)の転(広辞苑・江戸語大辞典)、
大小不釣り合いの目と、徳利の如き口の意(大言海)、

と、両説あるが、後者は、

火吹竹で火を吹くため口を尖らした、

お面の様子を言っているので、

火男は東北地方の竈神といい、火男の神像はヒョウトクとも呼ばれる、

とあり(日本語源大辞典)、「火男」説が優勢のようである。その由来は、

舞楽に登場する「二の舞」http://ppnetwork.seesaa.net/article/449197717.htmlに登場する滑稽な役の面が神楽へ移行したのが、滑稽な道化役としてのひょっとこのはじまり、

とされhttps://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%81%B2%E3%82%87%E3%81%A3%E3%81%A8%E3%81%93、里神楽(さとかぐら)では、

一連の番数の神楽のほかに番外として舞われる「もどき」と称される踊りにひょっとこの面をつけた踊りが舞われた、

とある(仝上)。

「すっとこ」は、「すっとこ被り」「ひょっとこ」とつながる、ちょっと道化役の語感があるが、「どっこい」は、

民謡などの囃子詞、

として、

やっとこどっこい、ほいさっさ、
お山繁昌と啼く烏、はあ、どっこい、どっこい、

等々とよく使われ、

どっこいしょ、

という言い方も、

草津よいとこ、一度はおいで、どっこいしょ、

というようにもする。「どっこいしょ」は、

力を入れたり、弾みをつけたりする時に発する掛け声、

の意もある。これは、「どっこい」の由来が、

相手の狙いをそらし、または防ぎとめようとする際に自然に発する相撲の掛け声ドコ(何処)へから(毎日のことば=柳田国男)、
「何処へ行くか、遣らぬ」というさえぎりとどめるときの掛け声、「どこえ」の掛け声化した語(江戸語大辞典)、

とする説があるように、両者が掛け合う間合いの含意があり、だから、

どっこい・どっこい、

に、

一方がドッコイと掛け声をかけて力を出すと、他方もドッコイと同じくらいの力を出す意から(上方語源辞典=前田勇)、

両者が綱引きあって釣り合っているようなニュアンスがある。それが、

不意に姿勢が崩れかけて「おっと」と言い、姿勢を崩してなるものかと踏ん張る「どっこい」と言う(実用日本語表現辞典)、

おっとどっこい、

のように、力んだり、弾みをつけるところにも、掛け声の間合いの感じが残っており、囃す合いの手、

どっこい、
どっこいしょ、



力む、あるいは弾む、

どっこいしょ、

とはつながっていて、まるで、

「道化役」をからかい気味に、

ひょっとこ、(もっと)やれやれ、(もっと)やれやれ、

と囃しているように感じられる。

参考文献;
大槻文彦『大言海』(冨山房)

ホームページ;http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm
コトバの辞典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/kotoba.htm#%E7%9B%AE%E6%AC%A1
スキル事典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/skill.htm#%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%AB%E4%BA%8B%E5%85%B8
書評;http://ppnetwork.c.ooco.jp/critic3.htm#%E6%9B%B8%E8%A9%95

posted by Toshi at 04:52| Comment(0) | 言葉 | 更新情報をチェックする