2020年11月19日

野球


「野球」というのは、正岡子規が命名したものと思っていたが、そうではないらしい。確かに、

打者、
走者、
死球、
飛球、
四球、
直球、

等々、子規が訳した野球用語は多い(明治29年に新聞「日本」に連載した
随筆「松蘿玉液(しょうらぎょくえき)」)、とされるhttp://www.yakyu.okinawa/article/do_you_know/article_52.html。しかし、「野球」は、確かに、

野球、

という言葉を、子規は表記しているが、これは、子規の幼名、

升(のぼる)、

にちなんで、

野球(のぼーる)、

という雅号を用いていたもので、「ベースボール」の訳として使用したわけではない。子規自身、その連載の中で、

「ベースボールいまだかつて訳語あらず」

と書いているhttps://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%87%8E%E7%90%83%E3%81%AE%E6%AD%B4%E5%8F%B2、とある。

正岡子規.jpg


子規が、「野球」という言葉を使ったのは確かであるが、それは、雅号としてであり、明治23年(1890)に使い始めている、ということは、「野球」が「ベースボール」の訳として登場するより前であったことは確かである。しかし、子規が野球に夢中であったことは知られており、

東大予備門(のちに一高)ベースボール部で捕手としてプレイした、

といわれる。ために、

久方のアメリカ人のはじめにしベースボールは見れど飽かぬかも
国人(くにびと)ととつ国人と打ちきそふベースボールを見ればゆゝしも
若人(わかひと)のすなる遊びはさはにあれどベースボールに如しくものはあらじ
九つの人九つの場をしめてベースボールの始まらんとす
九つの人九つのあらそひにベースボールの今日も暮れけり
打ち揚ぐるボールは高く雲に入りて又落ち来きたる人の手の中に
なかなかに打ち揚げたるはあやふかり草行く球のとゞまらなくに
打ちはづす球キャッチャーの手に在りてベースを人の行きがてにする
今やかの三つのベースに人満ちてそゞろに胸のうちさわぐかな

等々を明治31年(1898)に新聞『日本』に発表(歌集『竹の里歌』(明治37年)所収)しているが、このとき、「野球(のぼーる)」の雅号を使っている。ただ、まだ、この時点では、「野球」という言葉は一般化していなかったようであるhttps://plaza.rakuten.co.jp/meganebiz/diary/201303040003/

野球は、

1871年(明治4年)に来日した米国人ホーレス・ウィルソンが当時の東京開成学校予科(その後、旧制第一高等学校)で、

教えたのが始まりでhttps://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%87%8E%E7%90%83%E3%81%AE%E6%AD%B4%E5%8F%B2、その後、

打球鬼ごっこ、
玉遊び、
底球、

等々と訳されたが、定着せず、初めて「野球」と日本語に訳したのは、

中馬庚(ちゅうまん かなえ/ちゅうま かのえ)、

とされる。明治27年(1894)秋、第一高等中学校(1894年第一高等学校に改称)の野球部員であった中馬庚は、彼らが卒業するにあたって「校友会雑誌号外」に書いた文章中に、

野球、

という言葉が登場する(仝上)、という。

「Ball in the field」という言葉をもとに「野球」と命名しました。ベースボールは野原でするので「野球」と説明したhttp://www.yakyu.okinawa/article/do_you_know/article_52.html
「Ball in the field」という言葉を元に「野球」と命名し、テニスは庭でするので「庭球」、ベースボールは野原でするので「野球」と説明したhttps://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%B8%AD%E9%A6%AC%E5%BA%9A

という。

同僚で名投手の青井鉞男が「千本素振り」をやっている所に中馬がベースボールの翻訳を「Ball in the field-野球」とすることを言いに来た、

と言われているhttps://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%87%8E%E7%90%83%E3%81%AE%E6%AD%B4%E5%8F%B2。中馬は、第一高等中学校で名二塁手として活躍し、卒業時に描いた「ベースボール部史」は、

翌明治28年(1895年)2月に、学制改革で第一高等学校となったことから「一高野球部史」として発行されました。中馬は、明治30年(1897年)に一般向けの野球専門書「野球」を出版。これは日本で刊行された最初の野球専門書で、日本野球界の歴史的文献と言われています。明治30年代には一般にも「野球」という言葉が広く使われるようになった、

とあるhttp://www.yakyu.okinawa/article/do_you_know/article_52.html。ただ、「ベースボール」の訳語として「野球」が、雑誌や新聞で使われるようになるのはそれから5年ほど後のことになる、とあるhttps://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%B8%AD%E9%A6%AC%E5%BA%9A

中馬庚.jpg


ちなみに、中馬庚は昭和45年(1970年)には野球殿堂入り(特別表彰)を果たし、子規も、2002年に野球殿堂入りを果たしているhttp://www.yakyu.okinawa/article/do_you_know/article_52.html

参考文献;
前田富祺編『日本語源大辞典』(小学館)

ホームページ;http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm
コトバの辞典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/kotoba.htm#%E7%9B%AE%E6%AC%A1
スキル事典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/skill.htm#%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%AB%E4%BA%8B%E5%85%B8
書評;http://ppnetwork.c.ooco.jp/critic3.htm#%E6%9B%B8%E8%A9%95

ラベル:野球
posted by Toshi at 04:34| Comment(0) | 言葉 | 更新情報をチェックする