2020年11月30日
石榴
「石榴(ざくろ)」は、
柘榴、
若榴、
とも当てる(広辞苑)。別名、
色玉、
じゃくろ、
セキリュウ、
等々ともいう(仝上・https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B6%E3%82%AF%E3%83%AD)。一重咲の紅花をつけて実を結ぶものを、
実石榴(みざくろ)、
といい、重弁で実を結ばないものを、
花石榴(はなざくろ)、
という(たべもの語源辞典)。白い花をつけるものを、
白榴(ハクリュウ)、
黄色の花をつけるものを、
黄榴(コウリュウ)、
という(仝上)、とある。
「石榴」の「榴」(漢音リュウ、呉音ル)は、
形声。「木+音符留」。瑠(つるつるした玉)と同系で、つるつるした玉のような種をつける木、
で、
ざくろ、
の意である。
石榴(セキリュウ)、
とも言う(漢字源)。曹植の詩に、
石榴植前庭、緑葉揺縹靑、
とある。「若榴」は、廣雅に、
若榴、石榴也、
とある(字源)。いずれも中国語である。「柘榴」は、
石榴の誤用、
とある(仝上)ので、我国だけでの用例である。
以上のことから、
漢語セキリュウ(石榴)は直音化のセキルを経て、サクロ・ザクロ・ジャクロとなった(日本語の語源)、
とする説が生まれる。
「石榴」の字音から(日本釈名)、
「柘榴」の字音セキリウの転(滑稽雑誌所引和訓義解)、
も同じ趣旨である。
ザクは「若」の字音ジャクの直音化、ロは榴の古音(岩波古語辞典)、
は、「若榴」から解釈したことになる。別に、
原産地イラクの西方のザクロス(Zagross)山脈の音訳から(語源辞典・植物篇=吉田金彦・語源大辞典=堀井令以知)、
とする説がある。これは、
漢名は「安石榴・石榴」と言い、ペルシャからインド西北部の原産である。名の由来は、中国の古書に、西域に使者として出て、安石国(イラン)から種子を持ち帰ったとある。安石とは安息の意味である。安息国(ペルシア)から薬用目的で伝来した果実が、瘤(こぶ)のように見えた事から、「安石榴」と名付けられた。日本にも、初めは薬用として伝わった(http://cocologtakao.cocolog-nifty.com/blog/2011/06/post-8e26.html)、
とする説につながる。確かに、漢語に、
安石榴(アンセキリュウ)、
があり、宋書・張暢傳に、
求甘蔗安石榴、
とある(字源)。ただし、
安石国、
は、
サマルカンド(ウズベキスタンの古都)、
とされる(たべもの語源辞典)。いずれにしても、たしかに西方由来かもしれないが、
和名のザクロは、安石榴が略された石榴の音読みセキリュウから転訛して、ジャクリュウ→ジャクロ→ザクロに変わったものとされる、
とする(仝上)必要はなく、漢語に、
石榴、
がある以上、それが、日本に伝わったと考えていいのではないか。原産地は、
西南アジアや中東、
とされるが、
トルコあるいはイランから北インドのヒマラヤ山地にいたる西南アジア原産、
南ヨーロッパ原産、
カルタゴなど北アフリカ原産、
と諸説ある(https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B6%E3%82%AF%E3%83%AD)。東方への伝来は、
前漢の武帝の命を受けた張騫が西域から帰国した際に、パルティアからザクロ(安石榴あるいは塗林)を持ち帰ったとする記述が『証類本草』(1091年-1093年)以降の書物に見られる、
が、今日では3世紀頃の伝来であると考えられている(仝上)、とあり。日本には、
延長元年(923)に中国から渡来した、
とかなり遅い(仝上)。やはり、中国で、
安石榴→石榴、
となってからの伝来と思われる。
参考文献;
清水桂一『たべもの語源辞典』(東京堂出版)
大野晋・佐竹 昭広・ 前田金五郎編『古語辞典 補訂版』(岩波書店)
前田富祺編『日本語源大辞典』(小学館)
ホームページ;http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm
コトバの辞典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/kotoba.htm#%E7%9B%AE%E6%AC%A1
スキル事典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/skill.htm#%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%AB%E4%BA%8B%E5%85%B8
書評;http://ppnetwork.c.ooco.jp/critic3.htm#%E6%9B%B8%E8%A9%95