2020年12月13日


「な」は、

肴、
魚、
菜、

と当てる。「肴」http://ppnetwork.seesaa.net/article/477167042.htmlで触れたように、「肴」(漢音コウ、呉音ギョウ)は、

会意兼形声。「肉+音符爻(コウ 交差する)」で、料理した肉を交差させて俎豆(ソトウ)の上に並べたもの、

とあり(漢字源)、

食べるために煮た魚肉、

の意である。俎豆とは、

昔の中国の祭器の名。俎と豆。俎はいけにえの肉をのせるまないた、豆は菜を盛るたかつき、

の意(デジタル大辞泉)。「肴」を、

飲食の時に食べる副産物、

の意で用いるのはわが国だけである(漢字源)とあるが、

酒肴、
珍肴、

という用語があり、

穀物以外の副産物、
肉と魚との熟して食うもの、

という意味がある(字源)ので、魚類に限定していても、的を外しているわけではなさそうである。

「魚」(漢音ギョ、呉音ゴ)は、

象形。骨組みの張った魚の全体を描いたもの、

で(漢字源)、いわゆる「さかな」の意であるが、

鱗と鰭のある水族、

を指し(字源)、

池魚、
海魚、

等々と使う。「さかな」の意味では、

鮭、

の字もあるが、「鮭」(漢音ケイ、カイ、呉音ケ、ゲ)は、

会意兼形声。「魚+音符圭(ケイ 三角形に尖った形がよい)」

とある(漢字源)。日本語では、「さけ」にあてるが、

鮭肝死人、

とあるように、

ふぐ、

を指し、さらに、

鮭菜、

というように、

調理せる魚菜の総称、

の意味がある(字源)。「菜」(サイ)は、

会意兼形声。「艸+音符采(サイ=採、つみとる)」。つみなのこと、

とあり(漢字源)、

野菜、
蔬菜、

というように、

葉・茎を食用とする草本類の総称、

の意だが(仝上)、

惣菜、
菜館、

というように、

酒または飯の副植物、
おかず、

の意でもある(仝上・字源)。

俗に肴饌をいふ、

とある(仝上)。「ご馳走」の意である。

和語「な」は、

肴、

と当てて、

野菜・魚・鳥獣の肉などの副食物、

つまり、

おかず、

の意味で、古く古事記に、

前妻(こなみ)が肴 (な) 乞はさば 立そばの 実の無けくを こきしひゑね、後妻(うはなり)がな(肴)乞はさば いちさかき 実のおほけくを こきだひゑね(神武天皇)、

とある。「な」で、

肴、

を当て、「おかず」を指していた。だから、「肴」http://ppnetwork.seesaa.net/article/477167042.htmlで触れたように、「さかな」(肴)は、

酒菜(さかな)の意、

とされ(広辞苑)、平安時代から使われ、

サカは酒、ナは食用の魚菜の総称(岩波古語辞典)、
酒+ナ(穀物以外の副食物)、ナは惣菜の意(日本語源広辞典)、
「菜」(な)は、副食物のことを指し、酒に添える料理(酒に添える副菜)を「酒のな」と呼び、これが、なまって 「酒な」となり、「肴」となったhttp://hac.cside.com/manner/6shou/14setu.html
「酒菜」から。もともと副食を「な」といい、「菜」「魚」「肴」の字をあてた。酒のための「な(おかず)」という意味である。「さかな」という音からは魚介類が想像されるが、酒席で食される食品であれば、肴となるhttps://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%82%B4
サカは酒なり、ナは食用とする魚菜の総称(大言海)、

等々とされ、中国春秋時代を扱った歴史書『國語』晉語に、

「飲而無殽」注「殽俎實(モリモノ)也」、広韻「凡非穀而食者曰肴、通作殽」

とあり、かつて、

酒を飲むとき、副食(アハセ)とするもの、魚、菜の、調理したるもの、其外、すべてを云う、

とし、

今、専ら、魚を云ふ、

とした(大言海)。しかし、今日、「酒の肴」というとき、「肴」は、必ずしも「魚」を指さない。それは、「な」に、

菜、

を当て、

籠(こ)もよ み籠(こ)もち ふくしもよ みぶくし持ち この丘(をか)に 菜摘(なつ)ます児(こ) 家聞かな 名告(の)らさね そらみつ やまとの国は おしなべて 吾(われ)こそをれ しきなべて 吾(われ)こそませ 我こそは 告(の)らめ 家をも名をも(雄略天皇)

と、

葉・茎などを食用とする草木類の総称、

とし、「な」に、

魚、

を当て、

足日女(たらしひめ)神の命(みこと)の魚(な)釣らすとみ立たしせりし石を誰(たれ)見き(山上憶良)

と、

食用とする魚類、

として、意味に応じて、「な」に、魚、肴、菜の漢字を当て分けた結果である。

しかし、「おかず」の意の「な」は、

肴、

なのか、

菜、

なのかは、語源と関わる。

なむ(嘗)の義(大言海・槻の落葉信濃漫録)、

とするのは、

肴・菜・魚が同源、

とする考え方からきている。とすると、

肴(な)→菜(な)・魚(な)、

と分化したことになる。しかし、「菜」(な)も「おかず」の意味でも使われていたので、「菜」(な)は、

ナメクサ(嘗草)の下略(柴門和語類集)、
ナエハ(萎葉)の下略(日本語原学=林甕臣)、
ナゴム(和)の義。葉はやわらかいところから(和句解・名言通)、
根があって生えるところからネハフの約(和訓集説)、

や、「魚」(な)は、

酒ナの略。ナは菜の義(梅の塵)、

とする説があり、これからすると、「菜」(な)が先にあり、

菜(な)→肴(な)・魚(な)、

と分化したことになる。確かに、抽象度の高い、

おかず、

が先にあって、個別の菜と魚に分化するより、個別の菜と魚から、「おかず」に抽象化する方があり得る気がする。

はじめ、ひっくるめて、

な、

と、

おかず、

の意として、意味の重なる、

肴、

を使ったのか、という方に、一応与しておくが、やはり「おかず」の意のある、

菜、

を使い、

酒の肴、

魚、

へと、分離したという考え方もあり得ると思う。

ところで、副産物を指した「菜」は、

サイ、

と、漢語を音読した形が、後世一般的になる。特に中世には、

食用となる野菜のいの「菜」(さい)より、

一汁二菜、

のように、

副食物、

を指すようになる。中世末の日葡辞書では、「サイ」を、

飯と汁とを除いた食物で、魚、肉、野菜などでつくった料理、

とし、「な」は、

野菜、

の意味としている(日本語源大辞典)。その意味で、副食物の意の、

菜(な)、

は、野菜の、

菜(な)、

と、副食の、

菜(さい)、

に分化したことになる。江戸時代、日常の「菜(さい)」を、上方では、

番菜(ばんざい)、

江戸では、

惣菜(そうざい)、

といういい方が一般化する(たべもの語源辞典・日本語源大辞典)。こう見ると、あるいは、副食物としての「菜(な)」が、先ということなのかもしれない。

ただ、「菜(さい)」は漢字の音読ではなく、

調菜(ちょうざい)の略(大言海)、
添物のソヘ・ソヒ(添・副)から(東牖子・松屋筆記・米櫃と糧と菜=柳田國男)

と、別の由来とする説もある(日本語源大辞典)。

参考文献;
大槻文彦『大言海』(冨山房)
大野晋・佐竹 昭広・ 前田金五郎編『古語辞典 補訂版』(岩波書店)
清水桂一『たべもの語源辞典』(東京堂出版)
前田富祺編『日本語源大辞典』(小学館)

ホームページ;http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm
コトバの辞典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/kotoba.htm#%E7%9B%AE%E6%AC%A1
スキル事典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/skill.htm#%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%AB%E4%BA%8B%E5%85%B8
書評;http://ppnetwork.c.ooco.jp/critic3.htm#%E6%9B%B8%E8%A9%95

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